リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント 森本千賀子氏

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毎朝3〜4時に起きる習慣を10年ほど前から続けています。子どもが生まれる前は、誰よりも早く出社して始業前にウオーミングアップを済ませ、始業時間の9時にスタートダッシュが切れるように心掛けていました。夜明けに出社する会社員はほとんどいないので、マンションの管理人さんは私が築地市場で働いていると思っていたようです(笑)。

子育て中の今は早く出社することができません。そこで朝のうちに家事を片づけ、仕事の段取りを整えウオーミングアップまで済ませて、会社に着いたらすぐにスタートダッシュできるような工夫をしています。

共働き夫婦の場合、子育ても夫婦で分担することが多いようですが、わが家にはそれが難しい事情があります。夫も「忙しく働く」が社風のリクルートグループに勤めていて、しかも出張族で家にいない時間が多いのです。特に男性社員は家庭のことは妻に任せて仕事に打ち込みたいという思いが強い。同じグループにいる私にはその気持ちが理解できますし、40代の脂の乗り切った時期を迎えている夫を「妻の立場で支えたい」という気持ちもあります。そこでしばらくの間は私が中心となって7歳と2歳の男の子を育てると決めました。

そうはいっても私だって中途半端な仕事はしたくない。そうなるとおのずと朝、昼、夜の起きている時間の使い方を工夫しなければなりません。

いろいろ試行錯誤した中で得た結論は、朝の時間帯がいちばん脳が活性化していて能率よく仕事ができるということです。でも7時以降は子どもに食事をさせて送り出すという母親としての役割があるので、仕事に使えるのは起床から7時まで。家事に使う時間も加味して「3〜4時に起床」と決めました。

■朝の方が処理能力が1.5倍高かった

 朝の貴重な数時間で家事と仕事を両立させるためには、家事を省力化する工夫やインフラづくりが欠かせません。2人目が生まれたときにインフラにはお金を惜しまないと決めて、全自動洗濯乾燥機や食洗機、電動自転車などの製品を買い揃えました。

前日の就寝時間の22時までに洗濯機などの予約を済ませ、子どもに絵本を読み聞かせながら一緒に寝ます。短時間のうちに深い快適な睡眠をとるために寝具類もいろいろ探しました。

翌朝3時。最初のうちは目覚ましを複数個かけて最後の時計が鳴ってようやく起きる感じでしたが、今は鳴る前の気配でパッと起きるようになりした。まず家事を済ませてしまいます。夜中のうちに洗濯乾燥が済んだ洗濯物をたたんで、その日の夕食を準備する。食事の手抜きはしたくないし、「お袋の味」を子どもたちに味わわせたいので手作りにこだわり、短時間で調理できる圧力鍋を買いました。

家事が一段落した後の4時、5時ごろから台所で仕事に取りかかります。起床後はずっとBGMにモーツァルトをかけています。ソニー創業者の井深大さんが研究されていた幼児教育にはまっていたとき、モーツァルトやシューベルトを子どもに聞かせると絶対音感が身につくとか、穏やかな性格に育つという話を聞いて、私にも効くかなと思ったのです。

大人にも効果大です。モーツァルトの曲をかけると部屋中に穏やかな空気が流れて頭が冴えるんです。メール作成時には文面が降って湧いてくるような感じ。それに朝は夜よりも効率よくメールが処理できます。実験してみたところ、朝の方が1.5倍くらい処理能力が高かった。

早朝に出すメールにはいろいろな利点があることもわかりました。例えばその日に答えが欲しいものほど早い時間にメールしておく。人間の習性なのか、相手は早く届いたメールから処理してくれるので午前中に返事が来て、その日のうちに案件を片付けることができます。

私の経験では優秀な経営者ほど早起きです。スマートフォンが普及したおかげで、自宅でメールをチェックしていることも多い。最初のうちは早朝にメールをすると顰蹙を買うかなと恐る恐る出していたのですが、そんなことはなくて、すぐに返事をくれます。それにまた私が返信して、返事が来て……とチャット状態になって、一仕事終わることもあります。

しかも私も相手も在宅中は半分仕事、半分プライベートな気分で過ごしているせいなのか素直な気持ちでメール交換ができて、お互いの距離が近づく感じがします。だから昼間のメールでは書けないような“友達ことば”でも許されてしまうところがあります。そのときの私の格好は部屋着のまま。それがかえって完全に仕事モードにならず、素の気持ちを文面に表すことができるのだと思っています。

企画を練る、資料を準備する、TODOリストを作るといったことも、誰にも邪魔されない朝の時間を使うとはかどる。早朝から頭を使うことでお腹がすいて、朝食をしっかり食べられて健康にもいいんです。

■前向きな気持ちに一瞬で切り替えるには

以前私は夜型人間だったので、当初は早起きがつらかった。そこでめげずに意識して続けているうちに早起きが習慣になりました。「意識する」ことは、とても大切なこと。それを知ったのは20代のころでした。ある仕事でミスをしてお客様からクレームがきました。すぐにタクシーを拾ってお客様のところへ向かっているとき、カーラジオから聞こえてきたのが大リーガー松井秀喜選手が星稜高校野球部時代の恩師・山下智茂監督から教えられた言葉でした。それは、

意識が変わると行動が変わる
行動が変わると習慣が変わる
習慣が変わると人格が変わる
人格が変わると人生が変わる

という内容でした。

とても大切な言葉を教えてもらった気がして、あわてて車内でメモをしました。それ以来、意識して行動することを心掛けるようになりました。それがより豊かな人生を送ることにつながると信じたからです。

いい仕事をするためには効率を求めるだけでなく、メンタル面のケアも大切だと思っています。いくつか心掛けていることがあるのですが、ひとつには自分が「こうありたい」という事柄を書き留めた「アファメーションカード」があります。カードの言葉はすべて「私は」という主語で始まり「いつもすべてのことに感謝している」「どんなときもありがとうという気持ちを持っている」「ステキな家族・友人に恵まれている」というようなことが書いてあります。これを折に触れて繰り返し読んで脳幹に刷り込んでいます。私だって凹むこともあるし、ミスして自分を必要以上に責めたり、ストレスを家族にぶつけることもある。そんなときにカードのメッセージを読んで「凹んでいても何も変わらない。こんなことでくじけているわけにはいかない」と前向きな気持ちに切り替えるのです。

また自宅の各部屋や会社のPCの側には鏡を置いています。自分の顔を見る機会ってあまりないでしょう。どんな顔で相手に接しているのかを意識することもない。でも近くに鏡があると、子どもを怒っている顔はすごく醜いとか、苦手な相手の電話だとすごくつまらなそうな顔をしていると自覚できるのです。

私はボーッとするのが苦痛で、常に何かにチャレンジしていたい。時間を消費だけではなく生産に使いたい。そのため「回遊魚」なんて呼ばれているのですが、泳ぎ続けることが苦にならないのは、今の仕事がライフワークだと思っているからです。ご縁があってお会いするからには、お客様のお役に立ちたいと強く願います。

私は人脈を表す指標は「何人を知っているか」ではなく「何人に知られているか」だと思っています。その関係づくりにも朝の時間が役立っています。

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リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント 
森本千賀子 
同社にて大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援を手がける。入社1年目から営業成績1位、全社MVPを受賞以来、常にトップを走り続けるスーパー営業ウーマン。

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(リクルートエグゼクティブエージェント エグゼクティブコンサルタント 森本千賀子 構成=山本信幸 撮影=市来朋久)