加藤ひさし



ザ・コレクターズでは、ほぼすべての楽曲で作詞作曲を担当し、また矢沢永吉さんをはじめとする多くのミュージシャンに歌詞や楽曲を提供している加藤ひさしさん。歌詞を書く上で影響をうけた本も、やはりSFが多いと言います。




「やっぱり『アルジャーノンに花束を』だとか、自分が子供の頃に読んだSF作品の世界観が歌詞のモチーフになることは多いです。僕がかなり初期に書いた『2065』という曲、これも核戦争への恐怖とか近未来がテーマだし。あと、自分が好きなジョン・レノンの歌詞とかXTCの歌詞とか、そういうものの翻訳からの影響も大きい気がしますね」

――歌詞を活字として読んで影響を受けた?

「それはかなりありますね。イギリスのアーティストってすごいユーモアがあるんです。暗い歌でも、ちょっと笑っちゃうところがあって。それが面白くて、日本のロックとかではあまりやっていないように思ったから、積極的に自分の歌詞にもそういった要素を取り入れてきた気がします」

――このたび『99匹目のサル』というアルバムをリリースした加藤さん率いるザ・コレクターズ。同アルバムの同名タイトル曲のモチーフとなったのはライアル・ワトソンの著書『生命潮流』でも語られている"100匹目のサル現象"という学説ですが、この現象、非常に興味深いです。

「あるときイモを洗って食べるサルが出てきて、それが1匹2匹と増えていって......少しずつ増えていたんだけど、100匹を越えた瞬間に山中のサルが誰から教わったわけでもなくいっせいにイモを洗って食べるようになるっていう」

――まるで見えない意識でつながっているかのようですね!?

「そうなんですよ。似た感じで面白かったのが、『なぜそれは起こるのか―過去に共鳴する現在 シェルドレイクの仮説をめぐって』って本。WEBがない時代に、放送時間を少しだけずらしてイギリスとアメリカでクイズ番組をやるんです。たとえばイギリスで先にやって、回答率が悪い。でも正解をそのあとに必ず全員に教える。しかも視聴率がすごく良いから、イギリス中の人たちが答えを知るんです。そのあとにアメリカで同じクイズを出すと正解率がグンっと上がる。逆もしかりで、ひとつの知識や答えをある程度の人が知ると電波のように繋がって、知らない間に共有するっていう第六感的なものを感じちゃう。これは本の中のひとつの話なんですけど。遺伝子のことを語っていたり、いろいろあって面白かったです」

――最後に、人生で最も影響を受けた本を教えてください!

「1980年か81年にザ・フーの伝記を買ったんですよ。僕は高校生のときからずっとバンドをやっているんですけど、表向きバンドって仲良しな感じがするじゃないですか。で、今ほど赤裸々にバンドの人間関係が書かれた本は当時なかった。ところがザ・フーの伝記にはメンバーの仲の悪さがすごい書いてあって(笑)。ギターがボーカルに殴り掛かったら、あとで用心棒2人つれて仕返ししに来たとか。作詞作曲して自分が歌もやってたりすると、メンバーに"なんでギターここでミスるんだ!"とか、思うわけです(苦笑)」

――たしかに、ビートルズの人間関係も、後期は殺伐としています。

「でも当時のビートルズの伝記とか見ると、ジョンとポールが喧嘩してましたなんて記述はどこにもないんですよ。だから、僕はそれまで学級委員長のような寛大な気持ちでバンドを続けてた」

――まさに衝撃だったわけですね。

「この本が僕を救ってくれたんです。"ああ、バンドって仲悪くて当たり前なんだ"と。それでメンバーに思ってることを素直に言えるようになって、今のザ・コレクターズがある。本当、なにが自分の為になるかわからないですよね。たかがバンドの伝記だけど、それが自分の人生を変えてくれた。どんな哲学書よりも! ザ・フーありがとう!」

多くのイギリスの音楽や海外のSF作品に影響を受け、それが創作における世界観を構築していったという加藤さん。これから読む本が、今後の作品にどのような影響を与えていくのか本当に楽しみです!

取材・文/花井優太

《プロフィール》
加藤ひさし(かとうひさし)
1960年生まれ、埼玉県出身。バンド『THE COLLECTORS』のリーダー、ボーカルとして1987年にデビュー。同バンドのほぼすべての楽曲で作詞作曲を担当。また、矢沢永吉の詞を手がけるなど、作詞家・作曲家としての提供作も多数。2013年1月、サウンドはUKロック色濃く、歌詞は震災の影響も強いニューアルバム『99匹目のサル』をリリースした。




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 出版社:アスコム
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