高良健吾&吉高由里子への演出力も見逃せない。
(C) 2013『横道世之介』製作委員会

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今週初めはアカデミー賞の発表があり、数多くの洋画・俳優たちが注目が集まった。読者の方も誰がオスカーを手にするのか、ドキドキしていた方も多かったのでは?その一方で、独特の世界観&ストーリー、キャストらが話題となり業界内外から高い評価を受け話題になっている邦画がある。タイトルは『横道世之介』。既にご覧になった多くの方は、主人公“横道世之介”が大好きになり、この物語が愛おしくてたまらなくなってしまうという本作、一体どんなストーリーなのか。

ストーリー


時代は80年代、長崎県の港町で生まれ育った横道世之介(高良健吾)は、大学に進むのを理由に上京してきた。お人好しで、特にこれといった特技のない世之介だが、どこか周囲の人間を引き付ける魅力を持ち、多くの友人らの心を自然と開いていく。ある日、超・お嬢様の祥子(吉高由里子)から一方的に好かれてしまうが、彼は、年上で魅力的な千春(伊藤歩)が気になってしょうがない。しかし、彼が長崎に帰省した際には、祥子が既に訪ねていて……!?

“世之介”というフツーで稀有なキャラクター


本作は『悪人』の吉田修一の同名小説が原作で、読者からは「幸せになりました」「おもしろくて、切ない」「自分の青春時代を思い出した」など、人気の高かった作品。

劇中、主に主人公、横道世之介の大学生活が描かれているのだが、この“世之介”という人物がとにかく見ていて飽きない。といっても、見た目はまぁ、普通。何か秀でた才能があるわけでもなく、誘われるがままにサンバのサークルに入ったり、友人の家に転がりこんだり、時に(だいぶ)空気が読めないことがあるものの、とにかく自由。自分のことより、周囲の幸せが一番で、でもそこには無理が全くない。

そんな彼の一挙手一投足が面白く(微妙に動きがヘンなのです。笑)、そんな彼に巻き込まれていく周囲の友人・知人たち(池松壮亮、伊藤歩、綾野剛etc……)とのやり取りも微笑ましい。また、超・お嬢様の祥子との恋愛シーンでは、(私が)とっくの遥か昔に忘れ去っていた“好きになること”にまつわるドキドキ感や気恥ずかしさ、ちょっと手を触れただけで満たされる幸福感など、ありとあらゆるピュアな気持ちを思い出させてくれる。

手がけたのは『南極料理人』の沖田修一監督


しかし、本作はそれらの“ささやかだけどとっても幸せなシーン”の積み重ねを打ち砕く、あるシーンが待ち受けている。それを予感させる、“彼らの大学生活から20年後”のシーンも随所に挿入され、それゆえ世之介のノホホンとしたエピソードに思わず笑ってしまいながらも、彼の行く末が気になってしょうがない。手がけたのは、『南極料理人』『キツツキと雨』の沖田修一監督。]

独特の間や笑い、ストーリー構成に定評のある沖田監督は、本作でもその手腕を発揮。「上映時間160分が全く長いと思わなかった」と多くの人が口を揃えてコメントするほど、沖田流世之介ワールドを創りあげている。業界内からも絶賛の声が寄せられており、公式サイトの“コメント”欄を見ると、役所広司さん、犬童一心監督など名だたる著名人の名前がずらり。沖田監督の持つ、笑いのセンスやストーリーを引っ張る力、高良健吾&吉高由里子への演出力(もちろん本人らの演技力も)に感激した人々の熱いコメントを見ることができる。

さいごに


本作は80年代が舞台ということで、当時学生生活を送っていた方にとっては非常に懐かしく、「自身の青春時代を思い出した」とかつての自分を振り返る感想も多かった。私はこの時代にはまだ大学生ではなかったけれど、それでも世之介という存在が、何故かどこか懐かしく、温かい。そして、見終わった後も彼の残した存在感のおかげで,じわじわと幸せな気持ちに(不思議だ……)。

高良健吾演じる世之介に、自身が何を感じ何を見るのか、、によって上映時間160分を長いと感じるか短かったと思うのか、感じ方が分かれるような気がする。

TwitterやFacebookが登場し、自分の時間に簡単に他人が入ることのできる今の時代において、誰にもとらわれることなく、するりと人の心に入り込み、自身は自分の時間をしっかり生きている世之介の存在は、観客の心に何を残していくのだろう。公開後もまだまだ注目されていきそうだ。
(mic)

■ 『横道世之介』現在公開中