ミスタードーナツは、商品構成を少しずつ変化させ、消費者に飽きられないメニューを打ち出してきた。(PIXTA=写真)

写真拡大

数字に苦手意識を持つビジネスマンは少なくない。ビジネスに役立つ数字や、覚えておくと得する法則を、硬軟織り交ぜて、数字の専門家やビジネスの専門家たちが指南する。

■会社と世の中を動かす5%の人材

「全体の結果の80%は、その要因となる要素の20%によってもたらされる」。これは有名なパレートの法則(80:20の法則)です。パレートの法則はさまざまな事象に適用されていますが、自己啓発の世界では「全体の8割を決定づける上位2割の人材になれ」という文脈で使われることが多いようです。

実は一時的に上位20%に入ることはそれほど難しくない。1年や2年でいいなら、売り上げや収入を増やす方法はいくらでもありますから。しかし、うまくいき続けるとなると途端にハードルが上がる。毎年上位20%に入る顔ぶれは、せいぜい全体の5%。20人に1人です。

長く活躍したいなら、上位5%に入る人材を目指すべきです。具体的な目安はサラリーマンで年収1000万円。給与所得者で1000万円以上をもらっている人は3.9%(『民間給与実態統計調査』2009年)ですから、人材市場でそれに近い評価をもらえる人は上位5%人材といって差し支えないはずです。

では、どうすれば5%に入れるのか。まぐまぐで有料メルマガの責任者をやっていたころ、面白いことに気がつきました。無料配信していたメルマガを有料版に移行すると、だいたいどのメルマガも読者は5%。また私の経験上、出会った人に礼状を出して、返事をいただけるのも約5%。これは偶然でなく、損得で物事を考えない人、あるいは人に何かを与えることに躊躇しない人が5%いるということだと思います。私見ですが上位5%に入るのはこうした層と重なるのではないでしょうか。

ちなみに川で生まれたサケのうち、ふたたび自分の生まれた川に戻ってくる個体は5%弱だとか。つまりサケは選ばれた5%が交配・産卵して、種としての強さを保っているわけです。人間も同じで、つねに上位5%の人が時代を支えて、次世代へとバトンタッチしている。私にはそう思えてなりません。

■改革するなら「3:7の法則」を脳の壁に貼れ

ミスタードーナツのフレンチクルーラーやオールドファッションという人気ドーナツをご存じでしょうか。定番として根付いているので創業当初(1971年)からある商品だと思っていたのですが、フレンチクルーラーは73年、オールドファッションは75年で、途中から登場した商品でした。

ミスタードーナツの強さは、昔ながらの味を守りつつ、実は少しずつメニュー構成を変えている点にあります。消費者の心理は厄介なもので、既存商品にすぐ飽きを感じる一方、極端に変化させると離れていきます。同社はちょうどよいバランスで継続的に変化してきたからこそ、消費者に長く支持されているのです。

時代に対応して変化することは大切です。100年以上続いている企業の56.3%は主力商品、70%は、商品・サービスを途中で変えています。例えばいまや携帯電話で世界1位のノキアも、146年前の創業時は製紙会社でした。ただし、ノキアもいきなり製紙業から携帯電話事業に転換したのではありません。長い歴史の間には、ゴム製品やパソコンを作っていたこともあった。つまり絶えず小さな変化を重ねつつ、大きな変革を成し遂げたわけです。

「保守7割、革新3割」という言葉があります。一度に変えていいのは3割まで。それを超えるとどこかに亀裂が生じ、変革がストップしてしまいます。

東日本大震災を体験し「いまこそ何か変えなくては」との思いを抱いている人は多いでしょう。その気持ちを大切にしつつも、慌てずに少しずつ変化させていく冷静さは必要。くれぐれも注意してください。

■友達の数が年収を決める「NQ」

社会から求められる能力は時代とともに変わります。人々が狩猟や農耕によって生活を支えていた時代は、フィジカルの強さを持った人が高く評価されました。大きな転機となったのは18世紀の産業革命。工業が盛んになるにつれて知識、知性のある人、つまりIQ(知能指数)が高い人が高い収入を得るようになりました。

長らく続いたIQの時代もバブル崩壊で曲がり角を迎え、入れ替わるようにして注目を集めたのがEQ(感情指数)です。例えばカメラのCMは機能のアピールから、「思い出を残そう」と消費者の感性に訴えるようになり、流通分野では、1人ひとりの趣味嗜好、ライフスタイルを満足させる東急ハンズのような店が流行。メディアでも心の時代、感性の時代というキーワードがもてはやされました。

ところがここ1〜2年で、風向きが変わりました。いま注目されているのは、人とのつながりの強さ=NQ(ネットワーク指数)。2010年はツイッターやフェイスブックのユーザー数が爆発的に増えて、SNSを介して情報がやり取りされるようになりました。

またマーケティングでも、口コミが大きな影響力を持つように。こうした時代を知性や感性だけで生き抜くことは難しい。いかに多くの人と深くつながっているのか。それが明暗を分けるのです。

この流れは東日本大震災以降、さらに加速しています。震災による直接的な被害や自粛ムードによって、企業活動を制限された会社は多かったはずです。

ただ、その中でも顧客や取引先とのつながりが強い会社は、「こういうときだから応援しよう」と支えてもらえました。このとき顧客が見ていたのは、企業規模や売り上げではありません。普段からの関係性、つまりNQの高さで会社を評価する時代になったのです。

これは個人も同じで、これからはNQの高い人が活躍する社会になるでしょう。ただ、かつての中間管理職に多かった調整型ビジネスマンとは少し違うので要注意です。たしかにNQの高い人は調整能力に長けていますが、どちらかといえば長屋の世話人のイメージ。会社の利益のために調整するのでなく、一銭にもならないことでも、みんなのために喜んで汗をかく公共心が根っこにあります。

どちらにしても和を重んじる日本人は、NQが高い人が比較的多いはずです。日本経済の苦戦が伝えられていますが、むしろこれからは、時代の変化を大局的にとらえる日本人が活躍するチャンスは増えてくるはず。そうした流れに乗り遅れないようにNQを高めていきたいですね。

■NQ(ネットワーク指数)チェックリスト

【ネットワークの強さ】現状分析

□頼りになる人が周囲に100人いる
□困ったことを電話だけで頼んだときに、解決してくれる人が5人以上いる
□自分と同じ職場、趣味以外に専門性の高い能力を持つ知人が10人以上いる
□過去3カ月以内に「知人に勧められたので、あなたと知り合いになりたかった」と言われたことがある
□自分の人的ネットワークの中に、社会から注目されている人がいる

【ネットワークの拡大性】将来につながるか?

□年に1回は、対面で会っている
□出会いが期待できる場所に最低月1回は出かけている
□他人から受け取るばかりでなく、お返しをしている
□人に会ったとき、「何をしてあげられるか?」「何をしてもらえるか?」を会話している
□他人の時間に配慮している

●YES の数
0〜5 個/早急に改善を 
6〜8 個/「NO(ノー)」の個所を意識しよう 
9〜10 個/「NQ」の達人になるチャンス!!
●強さ>拡大性
将来、行き詰まりを感じるかも? 知り合いにコンタクトしNQを育むことを意識しよう
●強さ<拡大性
将来安心できるかも? 今のまましっかりと自分のペースでやりましょう

※すべて雑誌掲載当時

----------

経営コンサルタント 野田宜成
1966年生まれ。神奈川大学機械工学科卒業後、日産車体に入社。原価低減、新車開発などに携わる。船井総合研究所などを経て2006年、ビジネスミートを設立。著書に『数値力の磨き方』。http://www.noda7.jp/

----------

(村上 敬=構成 石橋素幸=撮影 PIXTA=写真)