処方箋

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契約寸前だった商談がご破算になり、重要顧客を失った。もう次の商談に臨むのが怖い……。

このように過去の失敗や傷を引きずりがちな人は、「原因帰属」についての考え方を変えてみるといいでしょう。

成功や失敗の原因を自分の能力や努力不足に求めることを「内的帰属」、環境や運などの外的要因に求めることを「外的帰属」といいます。失敗がトラウマになりやすいのは内的帰属型の人。外的帰属型のように「今回は相手が悪かった」などと割り切ることができないので、失敗を必要以上に重く受け止めて、「また自分のせいでうまくいかなくなったらどうしよう」と不安になってしまうわけです。

この状態から抜け出すためには、トラウマに対する「認知のものさし」を変えることが大切です。メートル法で測れば30センチの物体も、尺貫法なら一尺です。それと同じように、物事を見るときのものさしを変え、失敗の受け止め方を異なるものにするのです。

具体的にはロールプレーが効果的です。商談がうまくいかなかったのなら、お客の立場になりきって商談をリプレー。相手の視点から振り返ることで、「値引き要求は、向こうにとっても破談覚悟の無茶な要求だった」「先方の担当者も上司の前で引っ込みがつかなかった」など、外的帰属の原因が浮かび上がってきます。これらの原因が真実である必要はありません。重要なのは「悪いのは自分だけではない」という視点を獲得すること。それによって自分を責めたり失敗を怖がる気持ちがやわらいでいくはずです。

通常、ロールプレーは誰かに協力してもらって行いますが、1人で頭の中でシミュレーションしてもいいと思います。ただ、頭の中だけだと思考が同じところをぐるぐる回る恐れがあります。そこで有効なのがパブリック・コミットメント法です。思いついた原因を片っ端から付箋などに書き出して(パブリック・コミットメント)、似ているものをまとめて整理することで、目に見える形で外的帰属の原因を浮かび上がらせます。

これらの手法は「なんとなく気が重くて会社に行きたくない」といったときにも活用できます。思い当たる理由を紙に書くことで、漠然とした不安の正体が見えてきたり、実は不安材料より楽しみなことのほうが多いと気づくかもしれない。

どう考えても自分に否がある場合は、開き直りも必要です。たとえば「そもそも価値のある商談ではない」「会社は失敗を評価すべき」と開き直ることで、気にならなくなることも。

このように自分を正当化することを心理学では「合理化」といい、自分を守るためには必要なメカニズムの1つとされています。トラウマに苦しめられたときは言い訳も大事。大きな失敗をしたときは、ぜひ言い訳上手になって自分を許してあげてください。

(目白大学教授 渋谷昌三 構成=村上 敬)