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タイトルはわりとひでぇと思いますが。

そもそも、「主人公が、生まれた直後に、隣の家の子と取り違えられたと思い込んでいる」
という設定が秀逸だ。
ただ、そう思い込んでいるだけで、自分の人生が全く違ったものに見えてしまっている。
つまりは、隣の家の子どもだったら、こうじゃないはずなのに・・・・と、常に自分の人生を
悲観的に見ているという設定。
そんな妄想、さっさと捨てればいいのにと思うのだけども、当人にとったら妄想でも
なんでもなくて真実なのだから致し方がないわけ。

その結果の、悲劇。
だから、なんというか、悲惨なのだけども、同時に間抜け。
それがとても心地よかった。

ただまあ、この間抜けな思い込みを寓話的に楽しく咀嚼できるかどうかで、
この映画の評価は変わってきそう。
ただ、それを受け入れられたなら、生涯ランキングに入る級の傑作になると思う
個人的には、陳腐な言い方で申し訳ないけども、魔法のような映画体験だった。

解釈はたくさんできる映画だと思うが、僕にとってこれは、自分ではどうにもならない
人生ってやつと、折り合いをつけたりつけられなかったりしながら生きていく男の、
悲劇的な、でもユーモラスな一生を描いた物語だった。

この「自分ではどうにもならない人生」ってのがミソで。
この作品における、その「どうにもならない人生」への諦観の塩梅は非常に繊細だった。
なんというか、無限に広がる「あったかもしれない展開」の中から、一つだけを選んで
(もしくは選ばされたて)突き進んでいってしまうことの理不尽、あるいは奇跡が鮮やかに
切り取られている。
自分の思い通りにはならない人生。
でも、どうやっても思い通りにはならなかった!とも言い切れないのが人生。

ま、つまるところ人生なんて、本当はどうにかなったのかもしれないし、やっぱりどうにも
ならなかったのかもしれないわけだ。
過去の選択肢によったら、今よりよかったのかもしれないし、悪かったのかもしれない。
ただ、誰だって過去は変えられないわけだし、また過去の積み重ねで今があるわけで。
その意味では、自分のこれまでの人生(思い出)を今から、改変することはできない。
悩んでも悔やんでも羨んでも、どうにもならない。

あの時こうしていれば・・・・なんて後悔は、毒にも薬にもならない。

一度きりの人生だから、楽しかったり、悲しかったり、おかしかったり、つらかったりと
まあ色々なんだろう。
ただ、そういうのが全部過去となった後で、改めて振り返ってみれば、悲劇であれ、
喜劇であれ、とりあえず美しい・・・ような気はする。
で、そのどうにもならないが故の美しさを、運命と呼ぶのだろう。
そういう美しさが、スクリーンの端々に焼き付いていた。

全編にわたって驚異的な想像力が炸裂しており、映画ならではの物語体験。
CGなんか一切ないのに、これぞ映画!!といった、映像マジックで綴られており、
見たあと一ヶ月以上経った今でも、シーンが脳裏に浮かんでくる。
特に、ラスト近くの、トラックの荷台のシーンは、なんというか「映画を見る喜びここにあり!!」って感じの魔法のカットで、あれだけでご飯三杯はいける感じ。

見終わって即効で、テーマ曲をi-tunesでダウンロードしてしまった。
それくらいにはオススメです。

提供:マンガソムリエ煉獄編