現在、ベトナムで発行されている日本語メディア。発行間隔は週刊から季刊まであり、内容もサイズも様々だ。いずれも無料で配布されている【撮影/中安昭人】

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日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安記者が、ベトナムの出版物の「検閲」についてレポートします。

表紙から裏表紙まですべてベトナム語に翻訳して検閲を受ける

 私がベトナムにやってきて、いちばん驚いたのは「検閲」だ。私が日本で出版の仕事をしていたときには、鬼よりも怖い上司の「検閲」はあったものの、政府が「検閲」をするなんてことはなかった。

 ところが「ベトナムスケッチ」編集部で働き始めて、最初に制作スケジュールを確認したところ、「検閲用原稿の提出締め切り」という項目があるので驚いた。検閲には10日間かかるのだそうで、印刷開始の10日前には、出版ライセンス業者に、原稿を提出しなければならない、という。

「検閲するって、どの部分ですか?」と以前から働いている社員に尋ねると、
「全部です」
「全部って……、つまり表紙から裏表紙まで、記事も広告も全部ってこと?」
「はい、その通りです」

 もちろん検閲官は日本語が分からないから、日本語をベトナム語に翻訳する必要もある。原稿を提出した後、何か修正した場合は、追加で検閲申請を出す。それを「ベトナムスケッチ」では毎月毎月、新しい号を出すたびにしているというのだ。それを聞いて、私は一瞬、めまいがした。

 しかも検閲でダメが出る基準というのは、あることはあるのだが、明文化されていないという。ただ、その後経験を積むに従って、次のような点に注意をすれば大丈夫だということは分かった。

・ホーチミン首席の画像は基本的に掲載しない。
・国旗をデザインパーツとして使うことはしない。
・地図には、領土問題で係争中のチュオンサ、ホアンサ両諸島を入れる。
・ベトナムに関してネガティブな印象を与える画像や表現は控える。

 言われてみればもっともな条件ばかり。ホーチミン首席や国旗のことは「国に対して敬意を払って欲しい」という意味だろうし、領土問題の件も当然だ。最後の項目に関しても、元々、我々の媒体はベトナムの魅力を伝えることを目的にしているので、それで困るということはない。

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