IMG_0903[1]
「普通」って言葉が苦手で、会話の中で出てくると、とても絶望的な気分になるのです。ここまで一般的に使用されながら、実はその意味がしっかりと考えられてない言葉も珍しいのではないでしょうか。「普通ってどういう意味?」と聞かれると、パっと出てこない。説明できない言葉だと思うのです。

A:普通ってどういう意味?
B:普通は普通ですよ。なんていうか、ほら、ねえ、わかるでしょ。
A:いや、説明してみてよ。
B:あらためて言われると困るな。みんな普通に使うじゃないですか。やだなあ。怒ってるの?

もちろん、辞書をひくと出てきます。
「ありふれたもの」「あたりまえであること」。
なるほど、とも思うけど、やっぱりピンとこない。
”最大公約数に一般化された常識“みたいなものは、社会学的には90年代の到来、バブル期マーケティング全盛時代の終焉とともに失われたとされ、「価値観多様化の時代」という言葉すら使い古されたこの2010年代の「普通」ってなによ、と。そもそも、この長細い国にそんなものあったのか、と。ヴィレッジに入って7度の転勤、出身地も入れると7都県で暮らしてきて、ひとり「ケンミンSHOW」やってると、「いや、それを普通って言われても」なことばかりなわけです。
 
「普通、冬場は水道の水抜きするでしょ」
「普通の袋にいれて」
「名古屋駅はメイエキでしょ、普通」
いや、それ無理っす。あたりまえじゃないっす。

とはいえ、「普通これくらいは知ってるよね」という知識が共有されている状態が存在することは、エンターテイメントな場面ではとても重要であるはずです。
例えば、漫才やコントはよく見知った舞台建てがあって、そこにあるはずの「あたりまえ」の応答が、少しずつズレていくことが笑いになるわけだし、ものまねは言わずもがな。小説やコミックでも、その世界の「あたりまえ」を共有するための部分に、しっかりページをさかれています。つまりは、人の心を揺さぶるような「特異」があり、その「特異」は「普通」によって生み出されるがゆえに、実は重要なのは「普通」である、といえるのでしょう。

という普通のことを言っておいて。

今週「トゥルー・グリッド」という映画を見ました。
img_899825_23622500_0
2011年公開の映画ですが、舞台は西部劇。父を殺された少女が仇敵を追い、凄腕の老保安官を雇って危険な居留地を旅するという物語。1968年原作刊行1969年の映画化のリメイクです。決して大作ではないですが、少女と老保安官の言葉を使わない心のつながりが描かれた素敵な作品です。

見ながら思ったのが、「西部劇の普通がわかったらもっと楽しめるはず」ということ。もちろん映画自体はカッコよくて西部劇らしく汚くてよかったんですが、より楽しむための何かが僕のほうに欠落しているのだ、ということです。
西部劇が流行したのが1960年代くらいまで。世代でいえば、僕の親世代くらいが直撃世代ということになるでしょうか。知識だけでなく時代の空気など、その世代には確実に在るナニカがないわけです。それは、明らかな断絶だし、絶望でした。この映画自体は、テーマに「心のつながり」を置くことで観客と西部劇とのつながりを多く求めてはいませんが、最後の数センチ映画に入り込めない感覚がありました。ちょっとさびしい気持ちになったわけです。
土地土地で普通が変化するように、時代でも変化する普通を求めることは、不毛なようでもありますが、その違いや変遷を楽しためには意味があるような気もします。

そういえば、ヴィレッジヴァンガードも普通と戦ってきた歴史を持っていました。詳しくは会長の本をご確認いただきたいですが、「普通それでは失敗します」というたくさんの言葉の上に創業され、普通とは少し違うスタッフたちによってレベルアップしてきたと聞いています。その黎明期は世間に「普通」が確立していたからこそ、異端としてのヴィレッジヴァンガードが屹立することができた頃。世間の「普通」の変化とともにいくらかの変遷を経て、今のヴィレジヴァンガードはどこかのあのころとは断絶しているように思います。それがいいことか悪いことかは別にして。

ヴィレッジヴァンガードは弱小です。誰がなんと言おうと。
その方がいい。その方が自由だ。だからこそ普通と戦うのです。

普通と戦うためには、ずっと普通を見てないと。それで苦手にもなったんですが。普通は日に日に変化し、気が付くといつのまにか飲み込まれていることもしばしばあったかもしれない。
だからこそ、戦うという強い意志をもたないと。困難な戦いを続ける意志を。まさに、偏屈な老保安官も動かした、復讐にかける少女がもっていたような。

◆執筆  ヴィレッジヴァンガードイオンタウン千種店 西村店長
 【ヴィレッジヴァンガード・イオンタウン千種店】
〒464-0858
愛知県名古屋市千種区千種2-16-13イオンタウン千種SC2F
電話番号:  052-744-5606
営業時間: 10:00〜22:00
定休日: 年中無休
URL:http://www.aeon.jp/sc/chikusa/