セールスプロモーション営業を武器に売り上げを大幅拡大

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ビジネスパーソン研究FILE Vol.200

株式会社ベルシステム24 野瀬裕さん

情熱と顧客第一主義を貫く営業担当の野瀬さん。ターニングポイントとなった出来事とは?


■トラブルから学んだ“社内と社外に対するバランスを保つ。情熱を持って営業する”姿勢

コンタクトセンター業界のリーディングカンパニーであるベルシステム24。その主要事業は、電話、メール、直接訪問などさまざまなコミュニケーション手法を用いてクライアントとユーザーの接点を構築すること。商品やサービスを案内するセールスプロモーションから、商品販売後のアフターフォローなどの対応まで、企業の課題に合わせ、さまざまなソリューションを提供し、アウトソーシングサービスの企画・設計から構築・運用までを行っている。

2002年4月に入社以来、営業担当として活躍する野瀬さんが、初受注を決めたのは9月。電話でアポイントをとって訪問した保険代理店から、保険セミナーへの来場を促進する電話案内業務を新規で獲得した。
「仕事の進め方は先輩に教わりましたが、初めてで要領がつかめず、すべてに時間がかかっていました。残業をしていると、先輩に『そんなに時間がかかる仕事じゃない。悩むな』と言われ、四苦八苦している自分が情けなくて…。でも、それ以来『仕事は、大変だと思うから大変になる。難しいと思わなければ、悩まずにできる』と思えるようになりました」

営業のあるべき姿。それはクライアントのパートナーとして、お客さま目線を第一に考えること。その一方で、社内とのバランスにも配慮すること。野瀬さんの胸にそのことが深く刻まれたのは3年目。ある保険会社とのトラブルがきっかけだった。そのお客さまには契約当初から度々値下げを強いられていた。初めは工夫や効率化を行い、値下げやお客さまの要望に対応していたものの、次第に野瀬さんの心の中には「このビジネスモデル自体に無理があるのでは…」というあきらめ感が広がっていた。そして、ついに先方からの値引き要請に気持ちが切れてしまい、「もう無理です」と、ぞんざいな態度をとってしまったのだ。上司宛てに「一緒に仕事をするパートナーとして不満だ。担当者を替えてほしい」とすぐに連絡が入った。
「そのとき上司に言われたのは『どうする? 本当にこれで担当をやめるなら、俺がお詫びに行ってくる』という言葉でした。それを聞いて、悔しいと思ったんです。無理だと思ったのは、値引きすることは利益を圧迫するだけでなく、社内の人たちに負担を強いることになるから。でも、このときお客さまより社内に対して気持ちが傾いている自分に気づいたんです。お客さまからの信頼を失ってしまえば仕事もなくなり、元も子もない。社内に対して厳しく求めていくことが最終的には会社のためになるんだと気づきました。そのときの自分は、お客さまに対する思いと社内に対する思いのバランスが取れていなかったし、仕事に対する情熱も失っていました。情熱を持って社内にもお客さまにも接すれば人は動かせる。何よりも自分自身がビジネスを成功させることをあきらめてしまっていたことを猛省しました。先方へすぐにお詫びに行き、その後信頼を回復し、1年間お取り引きを継続することができました」

この一件をきっかけに、野瀬さんはひと回り成長し、“社内と社外に対するバランスを保つ。情熱を持って営業する”ことを心がけるようになった。

同じころ、もう1つ野瀬さんが意識するようになったことがある。それは“セールスプロモーション分野に強い営業になる”ことだ。
「商品のアフターフォローなどのユーザーからかかってくる“待ち”の電話対応は、効率化とコストダウンが優先されます。でも、企業の商品やサービスを案内する“攻め”のセールスプロモーションに優先されるのは成果です。効果が上がれば評価され、当社の取引額も利益も増える。社内には、この分野を得意とする営業担当が少なかったので、これを自分の強みにしていこうと決意したんです」

その後、野瀬さんは先輩から引き継いだ保険関連企業の取引額を、セールスプロモーションの実績を上げて3年間で年間3000万円から7億円にまで拡大。クライアントの成長に貢献できている実感と、仕事をしている充実感を味わった。
「ここまで拡大できたのは、全国のコミュニケータ(※)が成果を出してくれたおかげです。この仕事を通して、全国に出張する機会が増え、現場の人たちとのコネクションができたことは、私の財産となりました。営業は、ときには現場のコミュニケータに無理を強いることもある。だからこそ『アイツの言うことなら頑張ろう』と思ってもらえる信頼関係を現場とつくれるかどうかは大きいと思います」

(※)コンタクトセンターにおいて、電話やメールなどでユーザー対応するスタッフ。


■先輩たちが10年通い続けた企業から、コンペを経て1億円規模の契約を初受注

6年目、野瀬さんは外資系インターネット通販会社からの大型受注に成功し、社内でも話題となった。その企業は、自社で電話オペレーターを抱えているため、先輩たちが10年以上通い続けても契約に至らなかった営業先。ところが、事業の成長に伴い一部を外部委託することになり、そのコンペに呼ばれ、提案機会を得ることができたのだ。

過去のコンペ経験から、野瀬さんは、外資系企業は現場スタッフを見て決定する傾向にあると分析。そこで、コミュニケータの教育担当をコンペに同席させ、自社のクオリティの高さをアピールした。見積額についても、1年という短期ではなく3年という長期での利益を見据え、料金を抑えて提示した。この戦略が功を奏し、初年度から1億円規模の契約にこぎつけた。
「これほど大規模な案件を主体となって担当するのは初めての経験で、コミュニケータの運営部門やIT部門を巻き込んで管理していくのは大変でした。でも、コンペに呼んでもらえたのは、前任者が通い続けてくれたおかげですし、今後伸びていく将来性のある契約をとれたということは、自社の先々の利益に貢献できるということ。とても達成感がありました」

そのプロジェクトが順調に進んでいた入社8年目、野瀬さんは金融事業部に異動となった。後ろ髪を引かれる思いはあったが、金融事業部は、1人あたりの担当取引額がこれまでとは比較にならないほど大きく、自社の根幹を担う事業の1つ。何事もじっくり慎重に進めていくなど、これまでとは勝手が違う金融業界特有のしきたりに戸惑ったが、上層部からはそうした部門の活性化も期待されていることを知った野瀬さんは、自分なりのやり方で実績を出していこうと考えた。

そこで実践したのは、クライアントだけでなくコミュニケータがいる現場に深く入り込んで、手も口も出していくこと。野瀬さんは積極的に現場ともかかわり、信頼関係を築いていった。
「同じ時期に異動してきた若手メンバーも、次第に私のやり方に同調してくれるようになり、部内の雰囲気や仕事への取り組み方は徐々に変わってきていると思います」

また、セールスプロモーションを自分の強みに営業を続けてきた野瀬さんのもとには、自然とそうした案件が持ち込まれるようになり、今では仕事の9割をセールスプロモーションが占めている。
「この業務は、現場のモチベーションをいかに上げるかにかかっています。ですから、東京から出張する際は必ず現場のスタッフに日ごろの感謝の気持ちを込めておみやげを持参しますし、気軽に話しかけるようにしています。また、年に数回はインセンティブ付きのキャンペーンを実施するなどして、現場のやる気を盛り上げています。コミュニケータは人数が多いので、少しのモチベーションアップでも、集約されれば大きな力になります。目下の目標は、このセールスプロモーション分野を、自分がリーダーシップをとって推進していくこと。さらに言えば、いつかはユーザーとコミュニケータとの間にITを組み込み、ユーザーの購入意欲をソフトが感知してコミュニケータに知らせるようなシステムをつくって、この分野を強化していきたいですね」