後進国との比較ならともかく、同じ先進国でありながら、2つも3つもビッグマックが買えてしまうほど差があるのはやはりおかしい、と言わざるをえません。

指数が発表された当時、我々為替ディーラーの仲間内でも、「900円はいくらなんでも高すぎるだろう(=アイスランド・クローナの価値が高すぎるだろう)」という話をしたものです。

そうなると、早晩為替レートの修正がはいるのではなかろうか、という予想が立てられます。

この場合、アイスランドの通貨価値が米ドルに対して高すぎるので、アイスランド・クローナが大幅に売られるはず、ということになります。

そのわずか半年後にサブプライムローンの影響を最も受けやすい国として、格付け会社などでアイスランドの名前が取りざたされるようになりました。

その1年後には実際に金融危機に見舞われ、国内有数の銀行が破綻直前となり国有化されるという非常事態を迎えます。

その結果、為替レートはわずか1年で1ドル=58クローナから138クローナまで通貨安が進みました。

ドル円の為替レートの感覚で言えば1ドル=58円だったものが138円近くまで円安になったようなものです。

ちなみに、ドル円の為替レートは円の史上最高値が1ドル=75円となりましたが、アイスランドのビッグマック価格がそのままで、為替レートが1ドル=138クローナ、1ドル=75円となれば約280円となり、ちょうど日本国内のビッグマック価格と同じくなります。

したがって、この水準がクローナと円の関係では適正ということができます。

(実のところ、金融危機の煽りでマクドナルドがアイスランドから撤退してしまったために、もはや比較のしようがない、という状態です)。

メディアを始め一般的には表面の数字だけを取り上げて円高だと大騒ぎをしますが、為替のこうした実質価値が長期的な推移を見極める際には指針となるのです。

例えばブラジルなどはオリンピックやワールドカップがありますので、海外からの投資資金も相当流入しているため、通貨高が進んでいることがビッグマック指数からもわかります。

ただし、経済力以上の行き過ぎた通貨高はやがては調整が入るというのが過去からの教訓です。

オリンピックを迎える2016年までに特需以上の経済成長が見受けられないのであれば、開催前に投資資金は撤収、そんなシナリオを金融取引の現場にいる人間は描くものです。

http://www.economist.com/content/big-mac-index