「景気が悪いときは給料も上がらないので、大学院に通って学んだほうが将来のことを考えると得策」とアドバイスする笠木恵司氏

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人生をやり直したいなら、資格のひとつやふたつ持っていたほうがよさそうだ。かといって、どんなモノを取れば食いっぱぐれないのかもわからない。本格的にリスタートを考えている人が今、取っておくべき資格とはなんだろう?

そこで国内外の資格や、社会人の大学・大学院入学事情に詳しく、『資格試験合格後の本』(自由国民社)などの著書があるジャーナリストの笠木恵司氏に話を聞いた。

■新人弁護士だって就職難。資格はホントに役に立つのか

―ズバリ、再就職するのに取っておくべき資格ってなんですか?

笠木 う〜ん、食いっぱぐれない、もっと言えばホームレスにならないためってことで言えば当然、「手に職」系は手堅いですよね。

―ほうほう、具体的には?

笠木 ひとつは建設機械の運転免許やガス溶接など「現場系の資格」。安倍政権による政策の揺り戻しで、土木建設関係は再び活況になるんじゃないかな。外食産業で働ける調理師や、ホームヘルパー(13年4月から介護職員初任者研修に変更)や介護福祉士などの「人間系の資格」も賃金はともかく仕事だけはあるので、何かあったときの“保険”または“お守り”になるでしょう。また、医療系の専門学校に入学する覚悟があれば、病院で働ける資格が取得できます。

―働きながら夜間に通える医療系専門学校もありますよね。

笠木 ええ。就職ではなく、独立開業を前提に考えるのであれば、司法書士や行政書士などの国家資格は民間の資格よりも信用度が高いので、徒手空拳(としゅくうけん)の独立よりはるかに有利なことは確か。ビジネスモデルを新たにゼロから発想する必要もありません。

―そういう資格が取れるに越したことはないですけど、ちょっとハードルがお高いですねぇ(苦笑)。

笠木 確かに合格率は厳しいですよ。また、税理士のような取得者の多い国家資格は独立後の仕事探しも大きな課題です。でもね、税理士開業者のすべてが顧客の期待どおりの仕事をしているわけではありません。この不景気で経営者は節税も含めた経営的に有効なアドバイスが欲しいのです。それに十分に応えられる税理士であれば、まだまだ独立しても成功する余地はあると思いますよ。

―つまり、国家資格を取得したらそれで終わりではなく、むしろスタートとして、それなりに工夫が必要ということですね。

笠木 どんなに大物の国家資格を取ったとしても、資格にぶらさがっているような人に仕事はきません。以前は、マネー、法律、IT、英語の4つが、社会が必要とする資格・検定分野といわれていました。しかし、今はそうした資格を取っただけでは意味がなく、その資格でどんな仕事ができるか、具体的に何ができるかということが以前にも増して重要になってきているんです。

―もはや看板(資格)だけじゃ仕事はできないというわけですね。だから就職に有利な資格を選んでも、その後の応用力がないとその仕事は続かないと。

笠木 そもそも、雑誌などのランキングを重視して資格を選ぶようではダメでしょう。以前、ある若い女性からネイリストとファイナンシャルプランナー(FP)、どちらの資格を取るか迷っていると相談されたことがあります。まったく違う分野の資格なのに、世間的な一般論を気にしてFPもイイかもなんて揺れてしまう。でも、そんな発想では資格は絶対に役に立ちません。資格や検定は個人が応用するものですから、あくまで個人的に選ぶべきものなのです。

■迷っているならとりあえず大学院へ行け!

笠木 昨今のグローバリゼーションを考えると、これから必要になるのは大学院の学位かもしれません。欧米は日本よりも極端な学歴社会で、修士や博士の学位を持つビジネスマンが珍しくないですから。また、大学院では、学部と違ってセオリー(理論)やメソッド(実践)を本格的に学ぶことができます。資格取得後でも大学院に行くことは大変に有効だと思います。しかも最近はユニークな研究科がけっこう増えているんですよ。

―例えばどんなところが?

笠木 ビジネスマンであれば、もちろんMBA(経営管理学修士)がスタンダードですが、前述したようにグローバリゼーションの時代ですから、アジア、例えばミャンマーなど特定地域の専門家になることも有効でしょう。そうしたエリアスタディを専門とする研究科はいくつかあります。

―確かに。

笠木 プロジェクト・マネジメントを学ぶ大学院もオススメです。要は生産性を高めるために制度・作業プロセスを立案または改善して、これを運営、管理していくスキルを学ぶのですが、これは慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科が有名です。また、プロデューサーを養成する大学院にも注目してほしい

―プロデューサーを養成?

笠木 何事も事業化、ビジネス化して初めて商売ができます。それを仕掛ける人材を育てる大学院です。例えば日本政府がクールジャパン政策を進めているけど、結局は「実働部隊」をつくらないと意味がない。それこそ「株式会社国際営業部」みたいな会社をつくって、日本の文化や伝統工芸品などを世界に売りにいくことが求められている。青山学院大学には、社会人が働きながら文化のプロデュースを学べる大学院があります。

―世界を股にかけた国際派ビジネスマンに転身できるなんて夢が広がります!

笠木 個人的に自分で行きたいなと思ったのは、東洋大学大学院経済学研究科の公民連携専攻ですかね。「公民連携」とは国や役所がやってきたことを民間でやろうということ。行政の無駄を省くため、公共事業も民間委託していく動きは日本でも活発化していて、その傾向は今後も強くなるでしょう。

―これからの日本の方向性を考えた上で、それに沿った専門知識、メソッドやスキルを学んだ人は、再就職に強い人材になれると。

笠木 はい。人生リスタートするにあたって、何をすべきか決められない人は、とりあえず大学院に行けと言いたいですね。

―ちなみに今、大学院に行く社会人は減少傾向らしいですね。

笠木 景気が悪いときは給料も上がらないので、大学院に通って学んだほうが将来のことを考えると得策なんですけどねぇ。働きながら夜間や土日だけ通学して修了できる大学院も多いですよ。もちろん学費負担はありますが、大学院では志が同じ社会人に出会えることも大きなメリット。社会に出てから友人をつくる機会なんて、ほかにはちょっとないと思いますよ。

―ただ入学が難しいのでは?

笠木 そんなことはないです(きっぱり)。ハードルはけっこう低いと考えてください。研究計画書を作り、面接で今までの自分の経験を入学動機とつなげられるようにプレゼンをできれば大丈夫。ただ、目標をしっかり定めて、それに向けて学ばないと意味がない。学校や教授が何かをしてくれたり、保障してくれるわけじゃないので。

―そこは資格と同じですね。

笠木 そうですね。結局、社会は思うようには動かないし、期待どおりの人生は歩めません。だったら好きなこと、やりたいことを一生懸命やったほうがいい。賢いふりして、妥協したり、我慢なんかしないで、社会に対してどんどん抵抗していってほしいですね。

(取材・文/コバタカヒト)

●笠木恵司(かさき・けいじ)

1954年生まれ。1987年に編集プロダクション、有限会社チーム・スパイラルを設立。国内外の資格だけでなく、社会人の大学・大学院入学、インターネット遠隔学習、MBAなどの取材・執筆を行なう。留学など海外情報にも詳しい