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気恥かしいタイトルだが、編集からの要請です。
 
少なくてもエキサイテングな一日ではない。
あきれるほど平凡です。
アメリカに買付に行ったり、店を次々に訪問して店長に檄を飛ばしたり、接待をしたり、
されたりがしょっちゅうだったりすることはあまりありません。
 
しかし、編集から要請があったように、この質問はとても多い。
店に出向いて店長と話をする機会はけっこうあるが「休みの日はなにをしているのですか」とか「社長業ってどんなことするんですか」という質問は実に多い。一定のニーズがあるのだろうと思う。彼らにはこう答えることにしている。
 
「俺の一日は携帯にセットしてある5スポット・アフターダークで目覚める。
カーティス・フラーね。ジャスト7時。風呂に飛び込んで浴槽に浸かりながら
髭を剃り歯を磨いて女房殿が用意してある下着とその日の勝負服に着替えて
リビングテーブルへ。
そこには大手5社の新聞がきれいに並べてある。
サイホンで淹れたコーヒーがフクイクとしていてBGMはスイングジャズ。
朝はスイングに限る。心が沸き立つ。
コーヒーをやりながら一時間半かけて5紙を一面から見る。
社説はすべて熟読。
各紙のスタンスがそれぞれ違うからとても参考になる。
物事はあらゆる角度から立体的に考察しないとね。
日経の文化欄は充実しているから、あれはいいね。しっかり読む。
社長たるものあらゆることのアンテナを立てておく必要があるんだ。
関係ないと思われる芸術の分野もね。
そうそう、国際政治も大事だよ。
俺たちのような商売でも廻り回って影響を受ける。
先日サダム・フセインがアメリカに捕らわれて口の中にペンライトを当てられていたけど、
あれは大量破壊兵器を探していたんだ。
このようにひとつの事象を捉えて背後にあるものを想像するのはとても大切で君たちもそういう訓練を日頃するといいよ。新聞を見終わったところで朝食。
新聞紙の分厚い束がテーブルから消えると同時にうやうやしくケロッグ・コーン・フロストがでてくる。おい、笑うな。シュガー入り、レーズン入りが好物。たっぷりミルクを入れてスプーンでかき込む。時々、猫まんまみたいだなと思うことがあるけど20年来の朝食習慣だからな。それに、猫はコーヒーなんぞ呑まないしね。
9時になると出社する準備をして玄関に下りると女房殿と猫と犬が三つ指突いて送りだしてくれるんだ。どうだ参ったか。その後のことも聞きたい?」
 
「いえ結構です」
 
虚実を織り交ぜて、と書くともっともらしいけど、朝食はこの何十年と食べていないし、
新聞は日経と中日新聞の2紙だけ。
社説というものは生れてこのかたほとんど読んだためしがない。
好きなジャズだって家ではほとんど聴かない。
店長のときに聴き飽きた。
だいいちステレオがない。
朝7時起床なんて文章を女房や役員に読まれたときの想像はしたくない。
 
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■プロフィール■ 

菊地敬一
ヴィレッジヴァンガード創業者。

1948年北海道生まれ。
賞罰共になし。
原付免許、普通自動車免許、珠算検定6級 保持。
犯歴前科共になし。

大学卒業後、書店勤めを経て、39歳で独立。
名古屋で、遊べる本屋『ヴィレッジヴァンガード』を創業。
独自のセレクトとPOP、ディスプレイで
「変な本屋or雑貨屋」としての地位を確立し,
396店舗を展開するに至る。