1月29日 日本大使館近くの北京市内中心部の自宅にて

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1974年、鹿児島県生まれ。邱永漢氏に師事し、2005年より、チャイニーズドリームを夢見て北京で製パン業を営む荒木氏が北京の現状をレポートします。

 日本では今、北京の大気汚染が大問題になっているという。北京に住んでいる私がそのことを知っているのは、母から電話がかかってきたからだ。

母 『日本のニュースで北京の大気汚染がひどいってやっているけど、大丈夫なの?』
私 『ああ、ひどいけど、いつもと変わらないよ。』
母 『あなたのパン工場は北京の郊外だから、少しは空気がいいんじゃないの?』
私 『…そうだね。心配しないでね、じゃ!』

 ごくふつうの会話だが、このなかに北京(中国北部全般)の大気汚染に対する日本と現地の認識のズレがある。

 北京に暮らす人々からすれば、空気が悪いのは今に始まったことではない。「90年代の冬もこんなものだった」というあきらめにも似た声を、北京に長く住むスタッフたちから聞く。

 そうはいっても、今年1月の大気汚染は特別にひどかった。理由はいろいろいわれているが、もっとも印象的なのは、「今月は強い風が吹かなかったから」という政府機関の発表。たしかにそうだと思うが、そもそも風が吹かないとひどい大気汚染になること自体が深刻な問題だし、そんなことを言っているうちは永遠にこの問題は解決しないだろう。

日本人は、北京の大気汚染は中心部だけと思っているが…

 私の母をはじめとして、多くの日本人は、もっとも空気が悪いのは北京の中心部で、郊外はまだマシだと思っている。これが日本の常識だろうが、事実はまったく違う。都市中心部の大気汚染はたしかにひどいが、郊外もひどい。要は、地域全体がどこまで行っても大気汚染なのだ。

 人気のない山間部や海辺でもないかぎり、中国の華北・東北・西部地区ではこのような状況に大差はないだろう。

「それは郊外に大型工場や発電所があるからでしょう」と思うひとも多いのではないだろうか。もちろん、それも大きな原因だろう。しかしどのニュースを見ても取り扱いが非常に小さいが、(私が考える)重大な原因がある。
 それがこれだ。

 何だかおわかりになるだろうか?
 答えは、石炭を主原料とした燃料だ。中国語で『蜂窝煤(フォンウォメイ)』と呼ぶ。ハチの巣に似ているので、こんな名前が付いている。日本語に訳するとしたら、「ハチの巣炭」とでもなるだろうか。価格は1元前後。これが冬になると、想像もできない量、郊外で燃やされることになるのだ。
 私はこ蜂窝煤や、もっと大型ボイラー用の块煤(クワィメイ)が大気汚染の主犯格ではないかと睨んでいる。北京が位置する華北地域の冬は寒い。今年はとくに寒く、零下20度を超す日もあった。

 日本で暖をとるとしたら、エアコンかガス・石油ストーブなどが使われるだろう。しかし最高気温ですら氷点下という地域では、エアコンはそれほど役に立たない。都市部では、政府の管理のもと、巨大なボイラーで炊いたが温水パイプが、古い団地から新築のマンションにまで貼りめぐらせてある。このおかげで、実は北京の冬は、東京や上海よりも快適なのだ。部屋の中は下着で過ごせるくらい暖かい。

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