『英語でケンカができますか?』長尾和夫,トーマスマーティン/角川書店
クレームを入れたり意見を言ったり、相手と議論しなくちゃいけないシーンを40、英文と日本語訳で収録した本。電話などの会話形式なので「言い訳する側」「謝罪する側」の表現も習得できるぞ。

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「英語の勉強本」はたくさんあるし、日々新しい物が出ている。その中でも最近ちょっと珍しかったのが『英語でケンカができますか?』という新書。

「ある会社の上司と部下」
「ある部品を生産依頼した会社と受注した工場」

などの設定でやり取りされる「ケンカ」が1ページ文章で載っていて、その日本語訳がとなりのページに載っている、という構成。単語熟語リストや、類似表現なども書かれている。

・ケンカなんてしないんだけど?

「ケンカ」といっても、もちろん口論や罵り合いじゃない。お互いの「誤解」「認識のズレ」を確かめたり、責任の所在を明らかにしたり、失敗の再発を防ぐために行うやり取りって感じの文章が多い。

「このような失敗が続く場合、契約を切ることも検討します」
「御社の発送がこちらの指定した期日に間に合わないようなので、キャンセル扱いにするか料金を2割引してください」

なんていう交渉を、「失礼でなく、かつちゃんと伝わるように」行うための本。色々なシーンが40収録されている。読んでみるとなかなか実用的だった。

・失敗したくないやり取りこそ、お手本が必要

「手紙の書き方」とか「旅先の会話集」みたいなものは結構見かけるけど、旅行も手紙も平和的な状況が多い。そこではほとんどのやり取りが失敗しても取り戻せるし、うまくいけば楽しくなれる、素晴らしい世界。

ところが「クレーム」、「謝罪」、「罰金」、「やり直し」、「最終確認」、そういった「ちょっとやばい」状況下ではミスがそのまま自分のダメージとなる。そういう場面でこそ失敗したくない。だから、「こういう状況や、やり取りがありうる」という例として眺めるだけでも役に立つのだ。

「フランクな表現」や「おもしろスラング」も、使えれば楽しいかもしれない。でもまず、くそ真面目でも文法通りでもいいから、「危機の回避・打開」ができる表現が欲しい。そういう気持ちに少なからず答えてくれるのが本書のいいところだと言える。例文もシリアスなシーンばかりで、「いつか自分がもしこういう状況に陥ったら…」と、他人事ではないだけに真剣に読める。

・齟齬はすぐ起こる

高度なビジネスでなくても、ちょっとアクティブになろうとすると結構こういう場面に遭遇する。

僕がインターネットでちょっと厄介な(といってもきちんとしたショッピングサイトで)買い物をしようとしただけでも、「イエス」とか「ノー」では乗り切れない状況が出てくる。自分が船便や関税の金額を勘違いしていたり、いつまでたっても商品が届かないとか。

英語で色んな国の会社などとのやり取り、インターネットで海外の買い物や友達作り、「できたらいいな」と思うことも多いけど、「トラブルが怖い」という人も多いだろう。実際どこかに飛び込んだり、「やらなきゃいけない状態」になればなんとかなるんだけど、なかなかそうはならないし、最初は不安だ。

だけどだけど、英語で円滑にやり取りが出来る状態には、やっぱりあこがれる。「いやでも、やっぱりスタートが…」と思う人は多い。だから英会話教室に通ったり、TOEICを受けたり、「まずはレベル上げ」という感じで頑張ってる人が多いんじゃないかなとも思う。

お金と時間とやる気さえあれば、そういう「レベル上げ」で実用レベルまで到達出来るけど、世の中そこまで甘くない。それに、いくら英語が堪能になっても、トラブルがゼロになるわけではない。

トラブルは付き物。だけど、英語で起きたトラブルを英語で解決できれば問題ない。実生活でアクティブに海外サービスなどを使って慣れていこうとしている人にもオススメの本だ。(香山哲)