今年も東京マラソンの時期がやってきました。スポーツでもあり祭典でもある東京マラソンは、参加者にも、観覧者にも走る楽しさを伝えてくれます。マラソン人口は増え続け、平日の夕方に皇居を走る人は4000人を超えると言われています。「走る」ことはなぜこんなにも多くの人を魅了し続けるのでしょうか。

 「人生は短い、競技人生はもっと短い。それは少し僕も悲しいのだけれど、でもだからこそ競技スポーツは想像的でドラマティックで魅力的なものになっているんだと思う。矛盾するようだけど、私達の人生に限界があるからこそ、人の発想には限界がないんだと、僕は思う。」

 こう語るのは、シドニー、アテネ、北京五輪に出場し、世界選手権でもメダリストとして活躍した陸上競技選手、為末大です。書籍『走る哲学』は彼のTwitterでのつぶやきをまとめたもので、スポーツの話からコミュニケーション論、新卒採用やムラ社会など多くの分野についての考えが綴られています。彼はTwitterに自身の気持ちを投稿していく中で、競技をやっていく上でぶつかった悩みや答えの出ない問いのようなものが、陸上以外の分野でも通じていることに気づきます。

 「やるべきだからやると思っている人は休めない。基準が自分でないから休むことは罪だと思っている。だから休めない。やりたいからやっている人は休める。自分がやりたいという気持ちを何より大事にしている。だから休める。前者はすり切れる、後者は生き生きしていく。」

 仕事で義務感に追われている人がはっと立ち止まる言葉です。練習について彼が語る言葉は、そのまま私達の日常と重なります。努力は夢中に勝てず、自分をさらけ出せない人は夢中になれないと彼は、実感を込めて言います。

 「いい方法を探すのではなく、マシな方法を探すと思ったほうがいい。どんな方法にも問題はあり、問題がない方法を見つけようとし過ぎれば、実行が遅れ、学習のサイクルが鈍る。」

 重要なのはチャレンジ精神と高すぎない目標ということです。他にも、説得が上手いタイプについて、もしも納得する理由が出れば自分が相手側に心変わりする余地をいつも残しているようだと分析をしたり、アドバイスという名前で鬱憤をはらさないようにすることの大切さを冷静に説いたり。
 
 どこまでも素直で誠実に競技と向かい合った彼だからこそ語れる、深い言葉の数々が詰まった一冊です。



『走る哲学 (扶桑社新書)』
 著者:為末 大
 出版社:扶桑社
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