オシムさんは今月発行のオーストリアの地元誌「グラーツァー」のインタビューにこたえ、来日から10年になることについて「まったく新しい土地で新しいチームを指導してみようという自発的な挑戦だった」と語りました。また、ボスニア代表のワールドカップ出場が現在の大きな希望で、「サッカーこそ、わが人生。サッカーほど美しいものは、この世界にない」などと話しています。(原文はドイツ語。こまかな翻訳ミスはご容赦を)

イビツァ・オシム「ボスニア代表とともにブラジル・ワールドカップへ!」

大きな目標 イビツァ・オシムにとっての関心事は一つ。それはサッカーだ!
8年間にわたりシュトゥルム(グラーツ)を見事に指揮した名将は、日本での数年間を経て、現在はボスニア・ヘルツェゴビナ代表をワールドカップに出場させようとしている。

かれが伝説の域に達してから久しいが、イビツァ・オシムは依然として、世界中がかれのアドバイスを聞きたがり、知識を吸収しようとする存在である。
ここ数日、グラーツに滞在中で、この機会にわれわれはインタビューのチャンスを得た。



――サッカーの話に入る前にお聞きしますが、健康状態はいかがですか?

オシム「ゆっくりだが、よくなっているよ。わたしにとっては、それがゆっくりすぎるような気もするがね。まだ、たくさんの項目を検査しなければならないが、全体としては回復しつつある。グラーツに戻ってきた理由の一つも、そのため(健康チェック)だ」

――サッカーがウインターブレークに入っているというのも、理由の一つ?

オシム「もちろんだ。いつまでもスキーの中継ばかりを見ているわけにもいかないからな。まもなく、またシーズンが開幕する。シュトゥルム・グラーツは気になるかって? もちろん、わたしのお気に入りの愛するチームだから当然だ。現在の新しい監督には会ったことはないが、シュトゥルムとしてはいつも、サッカーのための素晴らしいポリシーを持っている。さらに、若い選手、おもに(グラーツ市が中心である)シュタイアーマルク州出身の若い選手が加わることで、さらに強くなることができる」

――あなたが日本に行ってから、ちょうど10年になります。もしも、再び10年前に戻って、同じオファーを受けたとしたら、今ならどうなさいますか?

オシム「2003年に日本に行こうと決めたのは、まったく自発的な動機からだった。私の頭にあった考えというのは、まったく新しい土地で、まったく新しいチームを指導し、ドラマチックに作りかえてみようということだった。
しかし、日本のサッカーの問題点は、かれら日本人がサッカーに投資する資金を持っていないわけではないのに、ビッグクラブというものがない。またリーグそのものも、チャンピオンズリーグの常連になるようなクオリティではなかったということだ。個々の有名な選手を買ってくることはするが、そういうやり方では(強い)チームを作ることはできない」

――サッカーとお金という話題が出たので、お尋ねしますが、サッカーの賭けとマッチフィクシング(八百長)のスキャンダルについては?

オシム「マネーというものは、ひょっとしたらサッカーの最大の敵なのかもしれない。お金が集まればそれだけ、腐敗の温床も広がる。サッカーの賭けでは、いまや何百万ユーロが動く。サッカー界がマネーに支配されている。
一昔前には、ハングリーな若者がサッカー選手をめざし、選手たちはプレーに集中していればよかった。しかし、最近では、だれもが大金を稼ぐようになり、しかも、誰がいくらもらっているか、みんなに知れ渡っているので、ちゃんとサッカーしている選手までが恥ずかしくなるほどだ」