7年目にして初優勝を飾ったジョン・メリック(Photo by Harry HowGetty Images

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 ノーザントラスト・オープンはジョン・メリックとチャーリー・ベルジャンのプレーオフにもつれ込み、ツアー7年目の30歳、メリックの初優勝が決まった。
「らしさ」で勝利したブラント・スネデカー
 プレーオフ2ホール目。先にパーパットを沈めたメリックが、ベルジャンのパーパットを見詰める視線が揺れていた。勝利が決まり、表彰式で優勝スピーチをしているうちに溢れ出したうれし涙。生まれて初めての優勝会見で、問われた質問に一生懸命に答えながら途中で質問の内容が頭の中から消えてしまい、「あれっ?質問は何でしたっけ?」と照れ笑いする仕草。そのすべてが、まるでデジャヴみたいだなと思った。
 そう、初優勝を遂げた選手たちが見せる仕草や語る言葉は、往々にしてデジャヴのように再現される。メリックを眺めながら思い起こされたのは、プレーオフを戦ったベルジャンが、昨秋のフォールシリーズ最終戦、ミラクルネットワーク・クラシックで飾った「奇跡の勝利」だった。
 あの大会の3日目、ベルジャンは首位に浮上しながらも原因不明の奇病を発症し、ラウンド中に嘔吐したりフェアウェイに座り込んだりしながら、なんとか18ホールを終え、そのまま救急車で病院へ搬送された。残念だけど棄権は免れないだろうと思われた中、彼は翌朝、病院からコースへやってきて、病と戦いながらも初優勝をモノにした。「信じられない」を何度も繰り返しながらの会見中、うれしさのあまり、「あれっ?質問は何でしたっけ?」も何度も繰り返した。
 あのとき、ベルジャンは病気で弱っていたために嫌でも力が抜けてしまい、それでも勝ったからこそ「奇跡の勝利」と呼ばれたのだが、今日、リビエラを制したメリックは、努めて力を抜いたからこそ、ついに優勝できたと振り返った。彼のそんな回想が非常に印象的だった。
 「(07年に米ツアーにデビューして)08、09、10年ごろは、優勝することに気持ちを向けすぎて自分で自分にプレッシャーをかけていた。もちろん、この米ツアーでは誰もが優勝したいと思っている。だが、優勝というものは“起こせる”ものじゃない。コツコツとプレーを続けているうちに“起こる”ものだと気が付いた。そう思ってからは努めて力を抜いて、プレッシャーを自分自身で軽くした」
 今季4戦目にして初めて予選を通過し、61位に終わった石川遼は「僕は(ランク)100位で10年、米ツアーにいたいわけじゃない。勝たないと何の意味もない」と言っていた。勝利を渇望する姿勢、「目標は大きく高く設定したい。モチベーションを高いところに保ちたい」という姿勢はアスリートには必須の戦意の源だ。
 けれど、アマチュア時代に数々の勝利を挙げ、名門UCLAゴルフ部を経てプロになり、米ツアー7年目にしてやっと初勝利を掴んだメリックも、7年もの歳月を鳴かず飛ばすのランクに甘んじながら未勝利のまま過ごしたかったわけではないだろう。
 誰もが優勝を夢見ている。誰もがすぐにでも勝ってやるぞと挑んでくる。そんなつわものたちが毎週毎試合、150名前後も集結し、競い合うのが米ツアー。その中で、本当に勝利を掴めるのは、ほんの一握りだけだ。
 だからこそ初優勝を遂げた選手は、誰もが天にも昇る気持ちになり、まるでデジャヴのようなリアクションを見せるのだと私は思う。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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