一日に44万8000人が乗り降りする現在の東横線渋谷駅からは、東京メトロ銀座線やJR山手線の改札まで歩いてすぐなのだが……

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この春の鉄道系ニュースで最大の話題となっているのが、3月16日から開始される東急東横線と東京メトロ副都心線の相互乗り入れ。直通運転を歓迎する声が多いなか、実は渋谷駅に大きな問題が生まれることはあまり知られていない。

元町・中華街駅や横浜駅から、埼玉県の飯能駅、森林公園駅まで乗り換えなしで行くことができるようにするため、渋谷駅では東横線のホームが地上2階から地下5階へと大移動をするが、そこに混乱のもとがある。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が指摘する。

「運輸政策研究機構監修『都市交通年報 平成22年版』の数値によると、2010年度の東横線渋谷駅の一日の乗降客数は、およそ44万8000人。新駅に移転後、渋谷駅で降りる人の数は朝のラッシュ時の1時間だけで4万人と見込まれます。これだけの人が地上に上がってくるわけですから、地上出口では雨が降っただけで傘を差す人によって流れが止まり、大混雑するでしょう」

実際に渋谷駅に行ってみたところ、東横線の新・渋谷駅(現・副都心線渋谷駅)から雨に濡れずに山手線の渋谷駅へ抜けることができる出口が1ヵ所あった。だが、ここは開業前の3月9日に廃止。別の場所に新たな出口を建設中だが、そこから山手線に乗り換えるためには、屋根のないところを15mほど歩かなければならない。

「問題は、今まで東横線から銀座線に乗り換えていた人が、半蔵門線への乗り換えに切り替える可能性が大きいこと。これも大混雑を招く可能性が高い」(梅原氏)

現在、東横線のホームは地上2階にある。ここから地上3階の銀座線ホームへは、正面改札を出て、階段を上ればすぐに着く。そのため、これまで新橋、銀座、日本橋方面への利用者の多くは銀座線を利用していた。

ところが、東横線ホームが地下5階に移動してしまうと、地上3階の銀座線ホームまでは7フロア分をエスカレーターなり階段なりで上らなければならない。

一方、地下3階にある半蔵門線は、ひと駅先の表参道駅で銀座線と同一のホームを使っている。となると、7フロア分を上って銀座線に乗るより、2フロア分を上って半蔵門線に乗り、表参道で向かいの銀座線に乗り換えるほうが、乗り換え回数は増えるものの、移動は格段に便利。というわけで、副都心線から半蔵門線のホームに乗り換える人が増えると思われるのだ。

「2010年度の東横線から銀座線への乗り換え客は、一日平均で約4万4000人。これらのほとんどが半蔵門線のホームに移動するでしょう。となると、渋谷駅はパンクしかねません」(梅原氏)

直通運転開始当日、渋谷駅の地下3階が人であふれ返ることになるのだろうか。

(取材・文/渡辺雅史)

■週刊プレイボーイ9号「東横線〜副都心線直通で、渋谷駅がパンクする!」より