「あいつを異動させよう」と思わせるには、武器が必要。「マネジメント系の専門知識」を社会人大学などで学ぼう

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主力商品が売れなくなり業績が悪化しているメーカーなど、かつては儲けを生み出していたビジネスモデルが古くなってしまっている「業績悪化型」企業。そんな企業に勤める人が給与を増やすには、「近い将来、利益を出す部署」への異動しかない。約120社の人事ルールをつくってきたコンサルタント、平康慶浩氏と考えてみる。

■「賢い異動」は「転職力」も強くする

―業績が悪化している会社は、社内もぴりぴりしますよね。

平康 経営者は社員に「がんばってくれ」と言いますよね。しかし、リストラも進み、賃金もカットされ、昇給もない。社員たちも「ここから抜け出す方法」を探らざるを得ない状況でしょう。その会社の「儲けの構造=ビジネスモデル」が、もう古くなってしまっている証ですから。

―そうなったら、すぐに転職したほうがいいですかね?

平康 全般で言うと、転職によって今より給与がよくなるかどうかは五分五分なんです。30代以上だと下がる割合のほうが高かったりする。そのリスクを取るより前に、まだ新しく、今後、業績が伸びそうな社内の部署を探し、そこへ異動すべきです。この方法では、すぐに給与は増えません。しかし3年から5年先の給与は、確実に増やすことができます。

―でも現実問題、望んだとおりの異動ってかなり難しくないですか? というのも、過去の自分の業務とは異なる部署を希望するのだから、転職のように「過去の実績」をアピールできないし、とはいえ、新卒の就活のように「今は白紙でもOK」なんて、会社も甘くは見てくれないでしょうし。

平康 行動ポイントは3つあります。まず、その決定権のある役職者にコネをつくること。直属の上司クラスでなく、異動したい部署や人事部の部長・役員クラス、つまり「その配置転換に影響力のある人」を味方につけるんです。方法はなんでもいい。共通の知人に紹介してもらうとか、同じジムに通うとか、喫煙所で待ち受けるとか、なんとかしてコネをつくる。

―そこまでしますか!

平康 当然です。よく知らない優秀な社員より、よく知っているデキる社員のほうが絶対に優先されますから。そこにプラスして「マネジメント系の専門知識」を学んでおけば、希望する異動の実現性はさらに高まる。ここで大切なのは、学んだ専門知識を使うアテを先に考えておくことです。例えば事業計画策定を学ぶのなら、社内の新規事業コンペに応募するため。財務なら、過去の売り上げや利益の数値を分析して、会議に提出するため。そうした行動として発揮すれば、周囲もあなたが専門知識を得たことに気づいてくれる。

―その勉強は独学で、ですか?

平康 セミナーや社会人大学を積極的に利用しましょう。時間と費用はかかるけど、社外の友人・知人をつくるきっかけにもなる。こうした異動のとき、社外の友人はとても心強いんです。というのも、「異動=配置転換」は「社内転職」のようなもの。会社の業績が悪化しているなか、自分だけが今いる部署を捨て、業績を伸ばしている部署へ移るわけですから、当然、社内で妬まれる。そのとき、利害関係のない社外の友人は、寂しさを癒やしてくれるものです。それに、そうした付き合いには社内の同僚とは違う緊張感がありますし、おのずと社会的に魅力的な人物であろうという努力が促される。社内では身につかない社会的スキルを磨いてくれるんですよ。

―でも、そのまま会社が潰れてしまったら、せっかくの異動も意味なくなっちゃいますよね?

平康 業績の伸びている部署で働いた経験は、いつか転職することになっても必ず有利に働きます。というのも、社内の限られた成長事業は、同業他社でもそうだったりしますから。例えば今、「業績悪化型」企業が多い建設業界ですが、そこで5、6年前に数少ない成長事業だったのが、海外部門や環境部門でした。しかし当時は、少しでも売り上げが落ちると社内中で叩かれたんですよ。でもちゃんと数字を見れば、1人当たりの売り上げ、利益、ともに優れていた。だから、まだ人気もなかった、あのタイミングで海外部門や環境部門に移っておけば、将来的に給与を増やす機会は増したはずだし、もしその後会社が倒産しても、転職先はすぐに見つかったことでしょう。

誰も教えてくれなかった! 「賢い異動」の3大ルール

(1)部長・役員クラス(あるいは人事部)に「味方」をつくる

基本的に異動先での仕事は、自分にとって未経験の仕事であり、「即戦力」をアピールするのは難しい。そうなると、異動を希望する部署の部長・役員クラスのプッシュが必要だ。あるいは人事部の上層部に味方をつくろう

(2)「マネジメント系の専門知識」を学べ

「あいつを異動させよう」と思わせるには、武器が必要だ。新たな経営の柱を欲する業績悪化型企業では、事業計画策定やマーケティング、財務など、マネジメント系の専門性が評価される。社会人大学などで学び、武器を身につけよう

(3)社内の孤独に耐えるために「社外の交友関係」を築こう

異動は、いわば「社内転職」のようなもの。うまくやった場合、業績の悪くなった社内での風当たりは一時的に強くなる。新しい部署で孤立する可能性も高い。そんな孤独感をしのぐためにも、社外に交友関係を築いておきたい

(取材・文/佐口賢作、写真/getty images)