子どもの頃から活字中毒、中江有里が語る「読書力」とは

16歳の時、アイドル雑誌の美少女コンテストで優勝したことがきっかけで女優としてデビューした中江有里さん。2002年には脚本家としても活動を開始し、2006年には初めての小説『結婚写真』を発表しました。普段から複数の本を併読するという中江さんに幼少期の読書体験を伺いました。

 幼少期から活字中毒だったんです。漢字が読めないような小さい頃から字を眺めていることが好きで、読むものがないと国語辞典とか薬の説明書を眺めて楽しんでいましたね。両親が共働きで鍵っ子だったので、その後は自然と学校の図書館に通うようになりました。

 初めて出会った思い出の本はありますか?

 マリー・ホール・エッツの『わたしとあそんで』という絵本です。小さい頃、歯医者さんに行くのがすごく嫌だったのですが、近所の歯医者さんの待合室には必ずその本があって、表紙の女の子がじっとこっちを見ているんです。彼女の目と「わたしとあそんで」という文字を見ると、彼女と遊びたくなって何度も読み返した記憶があります。その本は大人になってから買ったんですが、大人になってから読み返すと、子どもに分かりやすく描かれているのに、大人の心にも訴えかけるものがあって、絵本ってすごいなぁって関心しました。

 16歳で、大阪から一人で上京した中江さんは、デビュー当時に自分を救ってくれた一冊があるそうです。

 高校一年生の頃に大阪から東京に一人で来たんですが、関西弁がぬけなくて苦労しました。学校で話しかけられて標準語で喋ろうとするのですが、頭の中で変換することに時間がかかり、せっかく話しかけられても話すことができなかったんです。そんなふうにして人間関係が上手くいかなくて結構ひどいホームシックにかかりました。そのとき本屋で手に取ったのが遠藤周作さんの『砂の城』っていう本だったんです。主人公の母親が娘に宛てた手紙で「負けちゃだめだよ、美しいものは必ず消えないんだから」という部分を読んだとき、自分に言われているような気がしてしまって。ズタズタになってしまっていた自分の心ですが、自分の中にあるものってそんな簡単に消えたりしないんだなぁって思えたんです。当時、このセリフに非常に助けられて「頑張ろう」と思えた思い出の一冊ですね。

 そんな本好きの中江さんは、普段から本を何冊も併読し、年間300冊以上ものさまざまな本を読むそうです。読書が苦手でよく挫折してしまう人に何かアドバイスはありますか?

 まず前提に、「本を読むことは、楽なことではない」と思えば挫折するのもしょうがないと思えるのではないでしょうか。本を読むには持久力とか集中力などの力「読書力」が必要になります。筋トレだって続けないと筋肉がおちてしまうのと一緒で、同じように読書も日々続けることで読書力がつくんです。すると興味がない内容や多少難解な本でも読み進めることができるようになりますよ。

 次回は、新刊小説『ティンホイッスル』についてお話を伺います。お楽しみに!

《プロフィール》
中江有里(なかえゆり)
女優・脚本家。1973年生まれ。大阪府出身。1989年にデビュー。2002年『納豆ウドン』で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。2006年11月に初めての小説『結婚写真』(NHK出版 現在は小学館文庫)を発表。2013年1月30日に新刊小説『ティンホイッスル』(角川書店)発売。



『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』
 著者:阿部 珠恵,茂原 奈央美
 出版社:辰巳出版
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