お手伝いをする子は、正義感と問題解決力に優れている

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■使い物にならない新人の共通点とは?

私の知人がある会社の人事部で採用を担当したときのこと。面接、テストと段階を重ねて採用した十数人を社内に配属したところ、しばらくして配属先の上司が人事にねじ込んできた。

「使い物にならん。気が利かず感謝を知らない、自ら学ぼうとしない奴らばかりだ」というのだ。

困惑した人事部では改めて社内調査を実施、「使える人材」と「使えない人材」を分けるポイントを探った。そしてわかったのは、「使える」と言われた新人はみな子どもの頃に親の手伝いをした経験があり、「使えない」新人はしたことがない、という事実だった。つまり「小さい頃お手伝いをしていたかどうか」が両者を分けたのだ。

以後この会社では、「子どものときに親の手伝いをしたことのない人間は、採用してはならない」と決めたという。

国の調査によれば、お手伝いをよくする子どもは非常に正義感・道徳心が強く、お手伝いをしない子はその逆だった。また東京都の調査では、お手伝いをしている子は、していない子より問題解決能力が高かった。

他人とのコミュニケーション能力、判断力、洞察力など、企業に採用され評価されるにしても他の仕事につくにしても、共通して必要とされる能力がある。仕事に困らない人間になるためには、そうした能力を早いうちから身につけねばならない。そのために「お手伝い」に勝る経験はないのである。

現代の日本で親が子どもに第一に求めることは「勉強」だ。「勉強しなさい」と言われ続けた子どもたちは、「一番大事なのは勉強だ」と思い込む。たまに「お手伝いしなさい」と言われても「家事はお母さんの仕事でしょ」と反論する。受験生の親などは「子どもに勉強以外何もさせないことが自分の仕事」と心得ている。親子とも悪しき「勉強至上主義」に毒されているのだ。

しかし子どもの勉強も、家あってのもの。生活のために親のしている仕事こそ、何より大事なもののはずである。私に言わせれば子どもが一番にすべきことは勉強ではなく、親の手伝いである。つまり「お手伝い至上主義」だ。

私は福井県の八百屋の子として育った。子どもが商売を手伝ったり家事を分担したりするのは当たり前のことだった。その経験からしても、最も子どものためになるお手伝いは、家業を手伝うことだと実感している。

とはいえサラリーマン家庭ではそうもいかない。私は次善の策として家事を手伝わせることにした。3人の娘全員に、物心つくかどうかという時期から家事の手伝いを始めさせたのだ。掃除、洗濯、お使い等々……。

ただ、お手伝いといっても、小さな子にやらせれば親の手間はかえって増える。自分でやってしまうほうがよっぽど楽だが、夫婦で我慢し、子どもにお手伝いをやらせ続けた。

お手伝いをすることによって作業の段取りが良くなる、気が回るようになるといったメリットは、実は副次的なもの。大切なのは「親の仕事が一番大切」という価値観を伝えることだ。

そのための必殺の「お手伝い」が、「お父さんを駅にお迎え」だった。仕事から帰ってきた私を、娘たちに迎えにこさせることにしたのだ。7時前に駅に着いたときには家に電話し、お迎えを頼んだ。もちろん宿題より大事(笑)。子どもたちが全員でお風呂に入っていて出られないというときには、代理で妻に迎えにきてもらい、誰かしらが必ず迎えにくる形にした。

「何が一番大切なのか」がわかる形をしっかりつくり、例外を認めず実行していくことが、価値観の伝達には大切なのである。

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K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 
三谷宏治 
1964年生まれ。東大理学部卒。経営コンサルタントを経て、現在は大学教授、著述家、講義・講演者として全国を飛び回る。

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(K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 三谷宏治 構成=久保田正志 撮影=芳地博之)