ペブルビーチ・プロアマで米ツアー通算5勝目を飾ったブラント・スネデカーのプレーぶりには、彼のプロゴルファーとしての歴史と人間性が如実に反映されていた。
B・スネデカーが今季初V!今田竜二は40位でフィニッシュ
 テネシー州の出身。米ツアーにデビューした07年ごろは、いかにも素朴な田舎のお兄ちゃんだった。昨季のフェデックスカップチャンピオンに輝き、すっかり大物となった今でも、その素朴さと温厚さは十分に感じられるけれど、ひとたびティオフすると、彼はきわめて攻撃的なプレーを見せる。
 今週の最終日もそうだった。首位タイでスタートしたスネデカーは序盤からアグレッシブに攻め、2番でイーグル、4番でバーディ、6番、7番でさらなるバーディ。2位以下を引き離しながらも彼はひたすら攻めた。
 攻撃的なプレーと言っても、ドライバーを振り回したり、無理やりピンを狙うリスキーなゴルフをしたわけじゃない。「飛距離はあんまり出るほうじゃない。僕が心掛けたのは、ボールをインプレーに保つこと。そして、得意なパットでスコアを作ること」。
 スネデカーの「らしさ」は攻め方以外にも見て取れた。スコアを伸ばした前半も「苦しんだ」と振り返った後半も、彼は終始、心に波を立てなかった。終盤、追い上げてきたクリス・カークが16番でバーディパットを沈めたら、2打差まで詰め寄られるところだった。それでもスネデカーは顔色を変えず、淡々とプレーを続けた。そして7番アイアンを握ったパー3の17番でピン3メートルに付け、バーディを奪って3打差へ。最終日の彼のすべてが「これがオレの勝ち方だ」と主張しているかのようだった。
 素朴で温厚だが、プレーは攻撃的。攻撃をかけながらも心は平穏静寂。勝利への邁進に興奮しているかのようで冷静沈着。相反する2つの面の双方をどちらも保ちながら戦えるようになったのは、スネデカーが3度の転機を経験し、乗り越え、吸収してきたからだ。
 最初は08年マスターズ。優勝を強く意識しながら臨んだサンデーアフタヌーンに大きく崩れ、人目もはばからず号泣したあのとき、目前まで迫った優勝が瞬く間に遠のくことを彼は知った。
 2度目は11年ヘリテージで4年ぶりの勝利を挙げたとき。不調や故障に苦しんでも、努力と忍耐でカンバックできることを実感した。
 そして3度目はカイル・スタンリーとのプレーオフを制し、通算3勝目を挙げた昨年のファーマーズインシュアランス・オープン。目前の優勝が誰かから遠のくと、逆に遠のいて見えたはずの優勝が自分のものになることをスネデカーは米ツアーで初めて直に体験した。
 ほんの一瞬のわずか一打がきっかけで流れが変わり、勝つことも負けることもあるのがゴルフ。いつ何が起こるかわからない変化のゲームだからこそ、自分自身はルーティーンもプレーのペースも顔色さえも変えず、一貫した姿勢で挑む。勝負に出るのは、とどめの一打だけ。それが、あの17番の7番アイアンのショット、そして沈めたバーディパットだった。
 開幕戦を3位でキックオフした今季、ファーマーズインシュアランス・オープンではタイガー・ウッズに次ぐ2位、先週のフェニックスオープンではフィル・ミケルソンに次ぐ2位。3週連続で優勝争いに絡み、ついに手に入れた今週の優勝で、スネデカーはフェデックスカップランク1位の座を守り、世界ランクは6位から4位へ上昇した。
 押しも押されもせぬビッグスター。優勝会見で「道を歩くのも大変になっているか?」と尋ねられると、「とんでもない。まったく問題なく歩けるよ」と柔和な笑顔。スネデカーは相変わらず、素朴で温厚だった。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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