大山くまお『中日ドラゴンズあるある』(TOブックス)
ドラゴンズファンなら誰しも膝を叩くであろう“あるある”満載の一冊。なかには、《郭源治の台湾料理店には台湾ラーメンはない》といった“あるある”というかトリビアも。なお、帯には、本文の“あるある”にも登場する、ドラゴンズ芸能人の代表格、峰竜太と加藤晴彦が推薦コメントを寄せている。

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ここ数年、出版界では“あるある本”ともいうべき種類の本がひとつのジャンルとして定着しつつある。その先駆けはおそらく、『野球部あるある』(菊地選手・著)だろう。同書のヒットを受けて、パート2、さらには『吹奏楽部あるある』(吹奏楽部あるある研究会・著)という姉妹編的企画も生まれた(この2冊についてエキレビにはオグマナオトさんによる著者インタビューも掲載されているので、参照されたい)。

『野球部あるある』は文字どおり野球部をテーマにしたものだったが、野球関連ではさらに、プロ野球にまつわる“あるある本”もちらほら登場している。Twitterの「野球大喜利」から生まれた『みんなのあるあるプロ野球』(カネシゲタカシ/野球大喜利・著、昨年3月刊)を手始めに、昨年秋には『カープあるある』(クリエイティブ研究所・編著)、さらに今年に入って『中日ドラゴンズあるある』(大山くまお・著)という本も刊行された。

以前、「東京野球ブックフェア」のレポートでも触れたように、なぜかカープに関してはここのところ、ほかの球団以上に高い出版熱が感じられる。『カープあるある』もその例に洩れず、ファンの熱い思いがこめられている。というか、現在の選手ばかりか、過去の名選手についても細かなエピソードやデータなどが網羅されたその内容は、もはや“あるある本”の域を越えているといってもよい。

これに対して当記事でとりあげる『中日ドラゴンズあるある』は、そこまでエピソードは網羅されていないものの、“あるある本”という枠にきっちり収めながら、ファンのツボをしっかりと刺激してくれる。このあたり、大量得点こそあまりしないものの、獲った点はきっちり守り抜く(本書《009 攻撃より守備を見ていたほうが楽しい》、《012 一度に3点以上入るとびっくりする》などの“あるある”を参照)、堅実なドラゴンズのチームカラーを踏襲している、といえるかもしれない。

たとえば、《013 ナゴヤドームでは負ける気がしないが、神宮球場では勝てる気がしない》には、膝を打つドラファンも多いだろう。ぼく自身(ちなみにドラファン歴25年)、東京に住んでいた90年代後半から2000年代にかけて、神宮球場には対スワローズ戦を観にたびたび足を運んだが、ドラゴンズが勝った試合というのは、1999年の優勝を決めた試合以外、とんと記憶がない。

優勝を決めた試合といえば、《034 「痛烈! 一閃!」から「落合監督の涙です!」までの一連の実況を空で言える》という、2006年の優勝を決めた対ジャイアンツ戦をめぐる“あるある”には、あまりピンと来なかったのだけれども、なぜだろう……と思ったら、ワタクシ、その試合はテレビ中継ではなく東京ドームで観戦していたからでした(ハイ、はっきり言って自慢です)。それにしてもあのとき勝負を決めたウッズの満塁打は、いまでもありありとまぶたに浮かぶ。それだけに《033 10月8日は大嫌いだが10月10日は大好き》というのは、おおいに共感するところ(10月10日は例の優勝決定試合。10月8日は……おのおの検索してください)。

試合を離れた“あるある”には、《019 どうやら中日顔というものがあるらしい》のように、「あー、言われてみればそうかも」的なものも。ちなみに「中日顔」とは、《なんとなく無骨で垢抜けない感じ》で《切れ長の目に面長あるいは四角い顔》をそう呼ぶらしい。ただし最近では《069 浅尾、伊藤、中田、岩崎恭……本気でイケメンが増えてきた》のも事実。

“浅尾キュン”こと浅尾拓也については、現ドラゴンズを代表する存在として本書でも折に触れて登場する。《006 全国区のテレビで特集されるのはだいたい浅尾》はたしかにそうだけれども、その傾向は地元のテレビでもあまり変わらないような気がする。そもそも浅尾キュンは地元愛知出身とあって、ドラファンにとっては格別の存在だ。考えてみれば、最近のプロ野球、ことセリーグにかぎっていえば、地元出身の選手が地元の球団で何人も活躍しているケースというのは、ドラゴンズ以外にあまりないかもしれない。中継ぎエースの浅尾、守護神の岩瀬仁紀をはじめ、他球団からの移籍組の和田一浩や山崎武司(山崎は出戻りだが)、若手でも大島洋平、堂上剛裕・直倫兄弟、昨年ドラフト1位の福谷浩司にいたるまで、地元である愛知や岐阜の出身者が目立つ。

このように、ファンならばそれぞれの“あるある”に引っかけて、思わずあれこれと語りたくなる『ドラゴンズあるある』。カープに遅れをとったとはいえ、ひとまず『ジャイアンツあるある』より先に出たのだから、《041 アンチ巨人は球団の総意》とするドラゴンズおよびドラファンの面目は十分保たれたといえるだろう。

なお、本書では“あるある”だけでなく、各章のあいまに挟まれたコラム(それぞれ「イチローとドラゴンズ」、「ドラゴンズ契約更改名言集」、「ドラゴンズレジェンド歌合戦」、「清志郎とドラゴンズ」)がまた読ませる。このうち第2章の「ドラゴンズ契約更改名言集」では、とある選手(誰なのかは本書でチェック!)の《おしっこをしたい子どもが、漏れそうでも言い出せないような状態だった》など契約更改時における選手たちの名言が紹介されていて、発言主のみならず選んだ著者のセンスが光る。それも当然、著者の大山くまおさん(愛知県出身)は『名言力』や『平成の名言200』といった著書を持つ“名言ハンター”なのだから。欲を言うなら、これをきっかけに大山さんによる、さらにガッツリとしたドラゴンズ本を読みたいところである。(近藤正高)