『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』などで、個人の資産運用に革命的な示唆を与えプライベートバンクの実情にも詳しい、作家・橘玲氏と『外資系金融の終わり』がベストセラーになっている、藤沢数希氏との初めて対談が実現。金融業界の裏側をセキララに語り合った内容を4回にわたって掲載する。その第1回は、外資系金融の実情について。

『外資系金融の終わり』が暴いた「金融幻想」の終わり

橘玲(以下 橘) 『外資系金融の終わり』を読ませていただいて面白かったのは、「金融」というビジネスが、どんどんショボくなってきていることがわかりやすく書いてあったことです。外国のプライベートバンクに何人か知り合いがいるんですけど、彼らは日本に来るといつも最高級のホテルに泊まり、最高級のレストランで食事をして、優雅なビジネスをしていたんです。それが2008年を機にどんどんリストラされていなくなり、辛うじて残ったバンカーたちもサラリーマンになってしまった。ハリボテかもしれないけどキラキラした感じがなくなったなって思っていたんです。それと同じことが、投資銀行の世界でも起きているんだなというのがわかりました。

藤沢数希(以下 藤沢) バブルの頃は、実際に儲けていたから「スゴイ」と言われていたけど、金融危機で投資銀行業界は大変な損失を出して、2009年には一旦は回復しましたが、それから儲けもしょぼくなってきたし、金融業界やそこで働くプロに対する幻想ははじけ飛んでしまいました。まさにハリボテでしたね。いい意味でも、悪い意味でも、金融とか経営コンサルティングの業界って「なんだかよくわからないけどスゴそうだ」っていうオーラみたいなものがないとダメなんですよね。でも、プライベートバンクは、業界がそういうオーラを放っていた頃でも、日本では流行りませんでしたね。

橘 ええ。なので彼らはいちいちスイスや香港からやって来ては「外国には本物のプライベートバンクがありますよ」という営業トークしていたわけです。そのプレミアム感が、彼らの超過利潤の源泉だった、というのが僕の理解です。

藤沢 なるほど。しかし、海外のプライベートバンクは日本ではことごとく失敗に終わっています。メリルリンチもUBSもずっと苦戦していたし、HSBCのプライベートバンクは日本から撤退してしまいました。日本の銀行は、いろいろやろうとしていますけどね。といっても、海外のそれとはずいぶん違っていて、貯金をたくさん持ってそうな人に投資信託を売りに行くだけですけど(笑)

橘 わけのわからない金融商品を売りつけるっていうビジネスモデルですね。

藤沢 日本の銀行はなかなか上手くやっているらしいですよ。団塊の世代がどんどん退職して、2000万円とか3000万円の退職金がどーんと振り込まれるじゃないですか。それで入金を見つけたら電話を掛けて「プライベートバンキングサービスどうですか」って。

橘 でも、特別な商品があるわけでも、有利な運用ができるわけでもないんですけどね。

藤沢 スイスのプライベートバンクだったら、子どもをスイスの学校に入れたいという時に、いろいろ口を利いてくれたり手続きを代行してくれたりとか、そういうのはあるかもしれません。

橘 そんなサービスが必要なのかといわれたら微妙ですけど(笑)。スイスのプライベートバンクと言えば、2008年に大きなスキャンダルがありました。UBSがアメリカで脱税の幇助をしているというので…

藤沢 告発したUBSの従業員がアメリカ政府から1億400万ドル(当時のレートで約80億円)という報奨金を貰ったっていうやつですね。

橘 そうです。あれはすごく象徴的な事件だったと思うんです。つまり、アメリカにもメリルリンチやシティバンクに富裕層向けのプライベートバンクがあるでしょ。そういう中で、スイスのプライベートバンクのアドバンテージと言えば「スイスなら脱税できます」ってことしかなかったんだと。手品の“タネ”がバレたみたいに、決定的にわかってしまった。

藤沢 そりゃそうですよね。富裕層向けということで、何か特別な運用ができるなら、商品にせず自分達で運用してればいいわけですからね。アメリカのプライベートバンクになくて、スイスのプライベートバンクにあったのは、税務当局から見えにくい「匿名性」だけだったという。でも、そうは言ってもUBSもクレディ・スイスも、プライベートバンクはそこそこ儲けてるんですよ。

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