公文俊平(くもん・しゅんぺい)  多摩大学情報社会学研究所所長/多摩大学教授。1935年高知県生まれ。1957年東京大学経済学部卒、59年同大学院修士課程修了。1968年米国インディアナ大学経済学部大学院にてPh.D.取得。東京大学教養学部教授を経て、1993-2004年国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長。2004年4月より多摩大学教授・多摩大学情報社会学研究所所長就任。現在に至る。主な著書として、『情報文明論』(1994年、NTT出版)、『情報社会学序説』(2004年、NTT出版)、『情報社会のいま』(2011年、NTT出版)など。他に共著として、『文明としてのイエ社会』(1979年、中央公論社)、『情報社会学概論』(2011年、NTT出版)がある。

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ソーシャルメディアが私たちの日常生活に浸透していくにつれ、「人とつながる」という行為そのものについて改めて考えさせられる今日このごろ。「フェイスブック疲れ」「ソーシャルデトックス」などという言葉が造られるところを見ても、ソーシャルメディアを使った現状のコミュニケーションのあり方にフラストレーションを感じている人は少なくないようだ。
「情報のリンクを勝手につないでしまうのは、非常に危険な行為」と指摘する情報社会学者 公文俊平先生。前2回に続く今回の対談では、「ネットワーク化された個人にとって生きやすい社会をつくる」というテーマを考えてみたい。

トランスペアレンシーなんて必要ない

武田 先日、アメリカ、インド、オランダの30〜40代の男女を対象に、フェイスブックの利用実態について国際調査をかけました。

公文 どのようなことがわかりましたか?

武田 各国とも共通して、知人のネットワークが絡まることで起こるさまざまな問題に際し、「フェイスブック疲れ」とでもいうべきフェイスブックへのネガティブな感情を持っている人々が少なくないことがわかりました。

公文 プライバシーをさらけ出すのですから、疲れるのは当然です。

武田 日本の一部でも見られはじめているこの疲れは、世界共通の出来事であることは間違いなさそうです。

 しかし、私は、日本人は世界のなかでも抜群にうまくフェイスブックを使いこなす可能性があると思っています。

公文 どうしてですか?

武田 そもそも日本には「本音と建前」という言葉があります。あるときは本音、あるときは建前を使い分けて、コミュニケーションを円滑に回す。お世辞の「いいね!」だって、ちゃんと気持ちが入っていれば、コミュニケーションは回ります。部長の発言に「いいね!」が数十個もつけば、部長の家庭での立場も変わるかもしれない(笑)。日本人は、プライバシーの公開非公開のバランスを各自でとり合い、人的ネットワークのメンテナンスにフェイスブックを使いこなすのではないか、と期待しています。

公文 そうかもしれません。でも、フェイスブックは実名どうしをつなぐソーシャルメディアですから、どうしても窮屈さを与えてしまいます。これを解決しなければならないでしょうね。

武田 公文先生はフェイスブックの創始者マーク・ザッカーバーグが主張している、ネットワークのトランスペアレンシー(透明性)についてはどう思われますか?彼は、「人どうしが嘘偽りなくつながり合うために、お互い透明になろう」と言っています。

公文 そんなもの、誰も求めていないと思っています(笑)。フェイスブックは、もともとハーバード大学の学生限定のSNSだった。

武田 つまり、クローズドなコミュニティから生まれたわけですね。

公文 そう。お互いが深いコンテクストでわかり合っているネットワーク。そのような前提のものを世界中に広げてみることを想像すれば、問題が起こるのは必然です。

武田 人は多かれ少なかれ秘密を持っているものですものね。

公文 なので、情報のリンクを勝手につないでしまうのも、非常に危険な行為だと思います。

武田 エイベック研究所の運営する企業コミュニティは、ちゃんと匿名性が(あえて、実名性を求める特別な場合を除いて)守られるしくみになっています。価値観やテーマで集まるコミュニティを活性させるには、参加者にはより素直な気持ちで参加していただく必要があったのです。たとえば、成人病をテーマにしたコミュニティなどでは、実名参加を前提にすると極端に発言率が下がったりします。

公文 わかります。プライバシーをどのように守るか。それはとても大切なことです。あとは、各ネットワークでIDの使い分けができることも大切です。Googleバズが失敗したのは、その使い分けができなかったからです。個人がさまざまな属性を持ち、それを積極的に使い分けるしくみが、これからの情報社会において必要なことでしょうね。

武田 ネットワーク化された個人にとって、生きやすい社会をつくるということですね。

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