東アジア 新興国が成長途中でハマる、「中所得国のわな」とは?
欧州債務危機が世界中を直撃した2012年だったが、終わってみれば大半の新興国株は前年末を上回る株価を記録した。今や世界経済の先導役となった新興国の力強さが再認識された格好だ。


?わな〞にハマった中南米。中国、マレーシア、タイは果たして…

新興国への投資はその成長力から得られるリターンが最大の魅力です。とはいえ、いつまでも高成長は続かず、どこかで成長が伸び悩んだり、さらなる成長に向けた取り組みが必要になってくる時期が訪れます。そのため、新興国投資といっても、ひとまとまりで見るのではなく、各国の成長段階を見ていくことが重要です。

その成長段階を見ていくうえで、参考になるモノサシのひとつに「中所得国のわな」というものがあります。これは2007年に世界銀行が発表した「東アジアのルネッサンス」という報告書で示された比較的新しい概念です。

「開発途上国」や「低所得国」という初期段階を抜け出し、「中所得国」まで成長したものの、そこから足踏みをしてしまい、次のステージである「高所得国」になかなか仲間入りできない状況を指します。過去の例を振り返ると、1960年代の時点で、低所得国から中所得国にステップアップした国や地域は100以上ありました。

しかし、その中で高所得国入りできたのは、現在のところ、日本や香港、シンガポール、台湾、韓国など13の国・地域のみです。

同時期に中所得国入りした中南米諸国などはまさにこの?わな〞にハマった典型例です。最近では、中国やマレーシア、タイなどがこの?わな〞に陥ったかどうかが議論されています。

ちなみに、所得水準に明確な基準はありませんが、世界銀行では1人当たりのGNI(国民総所得)をベースに分類しています。

左の図は、最新版である2011年の基準で並べた主な新興国を中心とした所得状況の分布です。

あくまでも、所得水準での比較なので一概には言えませんが、中所得国は、労働コストの低い低所得国との競合や、高所得国(先進国)の産業構造の高度化との板ばさみになります。また、急成長の段階で蓄積された問題(貧富の格差拡大や労働力の減少など)が噴出して足を引っ張られる傾向にあります。

目先の利益にとらわれず、経済構造や社会制度の改革など、中長期的な発展戦略に転向できるかが、?わな〞からの脱出へのカギになります。



※世界銀行発表のデータをもとに作成。台湾は世界銀行加盟国でないため上記になし。ミャンマーのGNIの数値は公表されていないため推定値によるもので分類は低所得国に位置づけられている。

土信田雅之(Doshida Masayuki)
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト

新光証券などを経て、2011年10 月より現職。ネット証券随一の中国マニアでテクニカルアナリスト。歴史も大好きで、お城巡りと古地図収集が趣味。




この記事は「WEBネットマネー2013年3月号」に掲載されたものです。