小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶氏

写真拡大

頭をよくする=論理的思考力を高めるための一番手軽な方法は本を読むことです。それも自分より論理レベルの高い人が書いた本を丹念に読んで、その論理をなぞり、ロジックを理解しようとすることは、論理的思考力のアップに非常に有効です。

私は目的に応じて5つの読書法を使い分けています。速読、通読(レベル1、レベル2)、熟読、重読の5つです。このうち、自分より論理レベルの高い人の本を読むのは、通読レベル2や熟読に当たります。それぞれ簡単に紹介しましょう。

■速読

一般的に速読というとどんな本でも早く読む方法だと思われていますが、私にとっての速読は必要十分な知識や情報を素早く得たいときに取る方法です。

たとえば会社の役員会など企業の重要な意思決定を行う会議に出席すると、数十ページ、場合によっては数百ページもの資料が配られて、その場で意思決定しなければならないことがよくあります。それらの資料から取りたい情報と捨てる情報を素早く判断して、必要なポイントだけを拾って読んでゆく。速読はあくまでも情報を得るための読み方であって、論理的思考力を身につけるためのものではありません。

■通読レベル1

通読は最初から最後まで普通に本を読んでいく読書法です。通読レベル1は小説や簡単なビジネス書などを楽しんで読んだり、一定の知識を得るのを目的とした読書。肩に力を入れないで本の流れを楽しんだり、ちょっとした知的刺激が得られればいい。

■通読レベル2

通読レベル2は楽しむより、勉強に重点を置いた読書法です。通読レベル1で本を読み始めて、これは深く読んだほうがいいぞと思ったらレベル2に上げることもあります。

レベル1とレベル2の違いは本の重さ、内容の重さです。論理レベルの深さと言ってもいい。決して通読レベル1の本の中身が浅いという意味ではありません。レベル1の本も実は奥が深いのだけれど、そこまで読み取れなくても、読み手のレベルに応じてそれなりにわかるように書かれている場合が多い。

しかし通読レベル2の本はそうはいきません。最初から深く読み込んだり、気合を入れて読まないとわからないようにできている。だから本に線を引いたり、感じたことをメモしながら論点を整理し、考えながら読んでゆく。私にとっては論理的思考力やひらめきを生む重要な読書法です。

このレベルでどのくらいの本を読むかで、通読レベル1や速読で読む本から読み取れるインプット量やそこから生まれるインスピレーション量も増えていきます。知識の基本、論理思考の基本ができ上がってくるからです。

一流の学者が一般向けに書いた本や、超一流の経営者の本がこの読み方にふさわしく、論理思考に優れた人の論理を追っていくことで、読む側の論理的思考力のレベルを上げていくことができます。

たとえば、慶応大学の竹森俊平先生の『経済論戦は甦る』という本があります。小泉改革のさなかにデフレが進み、デフレや景気後退がいいのか悪いのかという論争が起きたときに出版されました。この本は、20世紀初頭の経済学者、フィッシャーとシュンペーターの論戦になぞらえて、現実社会と理論を絡ませながら書き進められています。シュンペーターは、不況は長期的視点に立てば世の中がよくなっていくためには必要だという論理。一方、フィッシャーは、不況がさらに世の中を悪くしていくという論理で、金融政策を講じずに放っておくとデフレスパイラルに陥り、やがてメルトダウンすると主張しています。この論戦は、昔から現在にいたるまで同じ議論が繰り返されていると分析され、本質的なところを理解できて感動します。

■熟読

一般的には通読レベル2のような読み方が「熟読」と言われるのかもしれませんが、私の定義は少し違う。私にとっての熟読はゆっくり読むのではなく、丁寧に読む。

丁寧というのは、いろいろなことを参照したり、体系づけたり、じっくり考えながら読むということです。参考文献に当たったり、ネットで関連情報を引き出しながら読むこともあります。

熟読の目的は論理を追ってきっちり読むこと。ただし通読レベル2のように最初から最後まで全部を読まなくてもいい。知りたいことだけを、論理立てて読んでゆく。

大切なのは書かれていることを正確に理解することです。表面的な「わかった」ではなく、自分自身のものになるまで理解する。その基準は書かれていることと現実に起きていることを関連付けて考えられるか否かです。本のベースになっている考え方や論理がわかると、まったく違う分野でも同じロジックが当てはまることに気づいたり、「あ、ここから派生したんだ」ということが見えてきます。

最初は著者の論理を丁寧に追いながら、そうした“ひらめき”を得るように、意識的にほかのことと関連付けながら読んでゆく。もっといえば関連付けがわかるまで読み込む。この関連付けの作業によって論理的思考力がぐんぐんと鍛えられるのです。

世の中で起きていることは、深く、広く、複雑に関連しています。論理的思考力レベルの高い人が書いた本を熟読しているうちに、最初は難しく感じても、わかるようになってきます。今、論理的思考力のレベルが1や2の人も、そのレベルが4や5の人が書いた本を丁寧に読むことによって、自分の思考力のレベルを3や4に上げていくことができます。つまり、「熟読」は頭をよくする最強の読書法です。

■重読

同じ本を繰り返し読む読書法です。読書は読んだ冊数ではなく、そこから何をどれだけ学んで自分のものにしたかが重要です。凡庸な本を読むのなら、いい本を繰り返し読むべきだと私は思っている。

人間は環境や年齢の変化によって、同じ本を読んでもその都度、読み取る内容が違うし、伝わってくるものが違います。だから重読する意味があるともいえる。私にとっては自己啓発的な本がこれに当たります。松下幸之助さんの『道をひらく』や中国の古典の『菜根譚』、安岡正篤さんの『論語の活学』、ピーター・ドラッカーの本など、今までに何度読み返したかしれません。でも読むたびに新しい発見がある。重読の目的は、自分の考え方を高めること。つまり、自分の哲学、是非善悪の判断基準を持つことです。

重読はいい本を見つけて読む時間を決めるのがいいと思います。私の場合、寝る前と決めています。それもたくさんは読まない。1日3ページ読んだとしても、365日あれば1000ページ読める。普通の本は200〜300ページですから、3冊分は読める。10年続ければ同じ本を何十回と読めます。

----------

小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶
経営コンサルタント。京都大学法学部卒。東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行、米国ダートマス大学経営大学院にてMBA取得。2005年から09年3月まで明治大学大学院会計専門職研究科特任教授。1996年より現職。『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』など数々のベストセラーをもつ。

----------

(小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶 構成=小川 剛 撮影=小倉和徳)