オフィスS&Y代表 中村澄子氏

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■TOEICの点数アップを目標にせよ

ビジネスパーソンがこれから英語を勉強するなら、TOEICの点数を上げることを目標にすることをお勧めします。

理由は、ずばり個人のリスクヘッジです。楽天やユニクロが社内の公用語を英語にすると発表して話題になりましたが、これからさらにグローバル化が進めば、あらゆる企業が英語を重視するようになるのは間違いないでしょう。その際に英語ができないとみなされるのは致命的です。

もちろんTOEICの点数でその人の英語力がすべてわかるかといったら、そんなことはありません。しかしながら、すでに昇進や転職、リストラなどの局面でTOEICの点数が“足切り”に使われているのをみてもわかるように、企業が英語力を判断する指標となると、現実にはTOEICに勝るものはないのです。

それに、TOEICはここ数年で内容がどんどん実際のビジネスに寄ったものになってきています。つまり、TOEICの点数が上がれば、それに比例して仕事で使える英語力も高まります。

TOEICの勉強を始めるには、まず自分が何点を取りたいのかを決めます。会社で具体的な点数を要求されている人はそれを目標にするのもいいですが、できれば全員800点を目指してほしいというのが私の本音です。

なぜなら、800点というのは、高い英語力を要求される外資企業であっても、不利な扱いを受けることのない最低ラインだからです。

TOEICは満点が990点なので、800点というのはかなりの高得点です。でも、恐れることはありません。受験勉強を通過してひととおりの文法の知識と単語力がある人なら、3カ月あれば800点を取ることは可能です。ただし、それにはいくつか条件があります。

1つ目は、勉強に必要十分な時間を確保すること。具体的にいうと、平日は1時間の自宅学習と、往復の通勤2時間はリスニング、それに昼休みは『ファイナンシャル・タイムズ』や『ウォールストリート・ジャーナル』の記事を10分間で2つ読む。土日は自宅でそれぞれ3時間ずつ学習する。推薦入試などで学生時代あまり英語の勉強をせず、文法に自信がない人は、これ以外に“評判のいい”文法書を1冊勉強する時間が必要です。

でも、平日は仕事が忙しくて週末しか時間がとれないので、3カ月ではなく1年かけて勉強するという考えには賛成できません。勉強する期間が長くなればモチベーションを維持するのが難しくなって、どうしても途中でダレてしまいがち。英語の勉強はピアノやスポーツの練習と同じで、間が空くと元に戻ってしまうので、週末だけというのは非効率なのです。

忙しいビジネスパーソンが毎日勉強するためには、友人とのつきあいや家族サービス、時には睡眠時間までも犠牲にしなければならないかもしれません。でも、それが一生続くならともかく、3カ月間だけの辛抱だと思ったら、耐えられないことはないはずです。

2つ目は、TOEICの情報を集め、対策を立てること。TOEICは英語力を測るテストといっても、問題のパターンはこれまで経験してきた大学入試や英検などとは明らかに異なり、特有のひっかけ問題もたくさん出ます。

そういうことを知らずにただ英語の勉強をしてもTOEICの点数は上がりません。正しい情報を集めるには信用できるセミナーやスクールに通う。また、実績のある著者が書いたTOEICの勉強の仕方に関する本を読んだりするといいでしょう。

3つ目は、いい教材を選ぶことです。書店の英語コーナーに行けば、TOEIC関連の参考書や問題集はいくらでも手に入りますが、その中身は玉石混交です。もちろん、それらのほとんどは英語の専門家によって書かれたもののはずですから、内容に間違いはないと思いますが、著者がTOEICの特徴をわかっていないと、絶対にTOEICに出ないようなところに多くのページを割いているようなケースも少なからず見受けられます。そういう本で勉強すると、労多くして功少なしという結果は目に見えています。3カ月で800点を取るには、無駄なことをやっている時間はないのです。

■単語はすべて覚え、CDは何度も聴くこと

TOEICの傾向と対策を的確に学びたい人には、私の書いた『新TOEICテスト1週間でやりとげるリーディング』(中経出版)、『TOEIC TESTリスニングの鉄則』(講談社インターナショナル)をお勧めします。これでリーディングとリスニングの攻略法を頭に叩き込んだあとは『TOEICテスト新公式問題集VOL.1〜4』(国際ビジネスコミュニケーション協会)を徹底的にやること。このときもただ問題をひたすら解き続けるだけでなく、解きながら問題のパターンを覚えてしまうのです。

また、問題の中に出てきた単語はすべて覚え、CDも何度も聴いて耳を慣らすなど、徹底的に使い切ることを心掛けてください。

なかには、最初から公式問題集ばかりやる人がいますが、これはよくありません。公式問題集には“解き方”が書いていないので、ある程度以上点数が伸びないということになりがちだからです。やはり最初はTOEICの攻略法から入ったほうがいいでしょう。

4つ目は、余計な教材には手を広げないこと。いわゆる英語オタクの人ほど、TOEICの勉強をしつつ、「ラジオ英会話」も聴くようなことをしがちですが、「ラジオ英会話」はTOEIC向けにつくられた番組ではないので、これを聴いても点数アップにはつながりません。英会話を学びたかったり、もっと総合的な英語力をつけたいのなら、800点の目標をクリアしてからやってください。

逆に、800点の次は900点、930点というようにひたすらTOEICの点数だけを追い求めていくのも考えものです。

800点(企業によっては860点)あればもうリスクヘッジはできています。そうしたら、次に自分は何をしなければならないかを考え、今度はそれに時間を使えばいいのです。

※すべて雑誌掲載当時

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オフィスS&Y代表 中村澄子
同志社大学卒業後、地方放送局などを経て、通訳養成機関で通訳術を学ぶ。エール大学でMBAを取得。現在は「TOEICクラブ」すみれ塾を主宰し、大手企業などでのTOEIC講師を務める。著書多数。

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(オフィスS&Y代表 中村澄子 構成=山口雅之 撮影=芳地博之、的野弘路)