台湾映画「KANO」撮影公開、“日本と切っても切れない歴史”

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(嘉義 30日 中央社)日本統治時代に甲子園で活躍した台湾野球チームのサクセスストーリーを描く映画、「KANO」の撮影風景が29日、中南部・嘉義市で公開され、主役の1人、永瀬正敏やプロデューサーの魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督などが取材に応じた。

「KANO」(嘉農)は1931年に台湾から夏の甲子園に出場した嘉義農林学校(現・嘉義大学)野球部の物語。台湾人・日本人・原住民の混成チームで部員同士がぶつかり合いつつも甲子園制覇をめざして練習を重ね、初出場ながら決勝戦まで勝ち進んだ実話を元にした感動の物語。

同映画は「海角七号〜君想う、国境の南」(2008年)や「セデック・バレ」(2011年)など話題の台湾映画を手がけた魏徳聖監督がプロデュース、「セデック・バレ」で原住民の頭目を演じた馬志翔(マー・ジーシャン)が監督。今回、魏監督は自分より野球に詳しい馬氏にメガホンをとってもらうことにしたという。

出演者のうち野球部員の多くはオーディションで選ばれた現役の野球少年たちで、日本からは野球部監督・近藤兵太郎役の永瀬正敏、ダム技師・八田与一役の大沢たかお、近藤の恩師・佐藤監督役の伊川東吾、近藤の妻役の坂井真紀の豪華キャスト4人。

スパルタ監督を演じる永瀬の起用について魏監督は、外見や性格から彼しか考えられなかったと語る。また20年前、楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の映画にも出演している永瀬は、今回の映画にも当時の勢いが受け継がれていると感じており、再現された1930年代初頭の嘉義市街でエキストラが小旗を振って野球部を迎えるといった大がかりなシーンの撮影には驚きを隠せず、今の日本映画にもなかなかないことだと感心している。

制作の構想にあたって魏監督は、「KANO」に作品として一層の深みを持たせたいと考え、嘉義農林が甲子園に出場した1931年と時間的・空間的にも近い1930年竣工の烏山頭ダム(台南)建設に携わり、台湾の灌漑事業に尽くして今でも台湾の人々に愛される台日友情の象徴、八田与一技師のエピソードも織り込んだ。

魏監督は、「皆に忘れられかけている台湾の歴史について伝えたい」とその思いを語り、「過去の台湾をふり返ると日本と深い関わりがあることに気づく。未来を考えるためにはまず過去を知らなければならない」と強調する。

昨年11月撮影が開始した「KANO」はこの3月クランクアップ、台湾での上映は来年2014年春節の予定で、そのあと夏の甲子園に合わせた日本上映もめざして鋭意制作中だ。

写真=(左から)魏徳聖、馬志翔、永瀬正敏