打ち切りマンガの最高傑作!葦原大介の『賢い犬リリエンタール』

年も明けて早一ヶ月。皆様いかがお過ごしでしょうか。

今年も例年のごとく福袋を余らせてしまった僕ですけども!
この安定の数の見誤りで、今年も頑張っていこうと思っております!はい。

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あ、福袋自体は手を変え品を変え……品は変えてないか。
と、とにかくいろんなアプローチで売り場を賑々しく席巻してますので、どうか生温かい目で見守ってください!

さて、そんな話はともかく、今年第一発目のコミックはこちら!

――葦原大介『賢い犬リリエンタール』(集英社)

葦原大介 「賢い犬リリエンタール」葦原大介 「賢い犬リリエンタール」

です!今回は新作ではなく、3年ほど前に発表された旧作をご紹介いたします。

週刊少年ジャンプで連載されていたこの作品。全4巻でございます。

ジャンプ作品で全4巻と言えば察しのつく方がいるとは思うのですが、そう、この作品は残念ながら打ち切りられた作品なのです。

戦場ともいえるアンケート方式での連載サバイバルが誌上で毎週繰り広げられている少年ジャンプ。当然そこには志半ばで打ち切られた作品が数多くあります。

その中には、打ち切られても今なお読者の絶大な支持を得て「名作」の呼び声の高い作品も同時に存在しているのです。

この『賢い犬リリエンタール』もその一つ。内容は人語を理解し、話すことができる賢い犬・リリエンタールを主人公に、彼と一緒に暮らすことになった少年少女と彼らを見守る大人たち、そしてリリエンタールを付け狙う謎の組織とのアクションあり、涙あり笑いあり、そして人生訓ありのハートフルコメディです。とにかく登場人物全員がいい人!黒ずくめの謎の組織もいい人たちばかりで、主人公たちをなんだかんだ言って支えてくれます。

作中はリリエンタールの見た目のかわいさに癒されるだけじゃなく、純粋でまっすぐなせりふの数々がストレートに心に響きます。

この作品の注目すべきところはまず第一に、物語を通して、登場人物たちは様々な葛藤や逆境を乗り越え成長していくところです。主人公だけじゃなく、少年少女たちだけでもなく、大人たちも。

そうそう、大人は大人で大変なんだよ、でもこんな自分にもまだ成長する余地があるんだなと、彼らの姿に読んでいて本当に勇気をもらいます。

まさに大人が読む童話といってもいいでしょう。

また、この作品が名作と呼ばれる所以がもう一つ。打ち切りとされているのにもかかわらず、物語が破綻せず非常によくまとまっていることです!

作中に出てきた複線の数々を見事に収集し、それどころか、全然気にも留めなかった事柄が「これも伏線だったの?」と、思わずうなってしまうようなレベルの高い演出が盛りだくさんなのです。物語が佳境になるにつれて謎が次々と明らかになる展開に息を呑み、そして一見関連性の見えなかったエピソードの数々が後に実はつながっていたことが判明したときの驚きと興奮と感動。

これが少年漫画と言わずしてなんというのか!

最終巻の第4巻には書き下ろしのエピソード−このタイトルだけでもう泣きそうになってしまうんですが―「てつこと卒業式」が収録してあり、このエピソードによって物語全体を十二分に補完し完成されたものとして見事に昇華しています。

一人の少女が、不安でいっぱいな未来に向かって勇気を持って一歩を踏み出す。そしてそんな彼女にある紳士が言葉をかけます。

「今日という日はお嬢さんにとってきっと忘れられない一日になるでしょう。そしてそれはあなたが自分の足でここまで来たから得られたものなのです。」

「お嬢さん 卒業おめでとう。」

ああもう、紳士!マジ紳士!!

今回のコラムのために久々に読み返したのですが、読後はやっぱり涙でぐちょぐちょになってしまいました。

このお店がオープンしてずうっと注文をしていたのですが、なかなか全巻そろわずもどかしい思いで過ごしていました。最近ようやく全巻がそろったので晴れて売り場に出すことができたのです!

もうほとんど市場には在庫がでまわってないため、全巻がそろうのは今後ないかもしれません。
未読の方は見かけたらすぐにご購入するのをお勧めします。

あと福袋の残りも、見かけたらご購入するのをお勧めします……。
そんな感じで、今年もよろしくお願いいたします!

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■文:ヴィレッジヴァンガード・渋谷パルコ店・大岩店長(通称:マンガ番長)
■記事提供協力:ヴィレッジヴァンガードマガジン / http://vv-magazine.com/