昨年11月以来の株高・円安は安倍晋三首相の経済政策、アベノミクスのよるものとの見方が多い。だが、株高・円安の急進は、アベノミクスとは別の要因が大きいと見るプロもいる。

 国際金融アナリストで、FXアカデミア学長の吉田恒氏はこう解説する。

「きっかけにはなっているとしても、これほどまでの大幅な円安進行はアベノミクスの効果だとは考えていません。もともと国際的には、過度な円高が進行していたので修正すべきだという気運が高まっていました。たとえば昨年夏、IMFは、実質実効相場で見ると10〜15%は円が過大評価されているという見方を示していた。そこで、昨年11月以降、安倍首相の円安誘導発言が飛び出したので、それを契機にして修正局面を迎えたというわけです。

 つまり世界経済の大きな力学が働いて、円安、そして株高に誘導されたと見るのが妥当だと思います」

 では、吉田氏はどこまで円安が進行すると見ているのか。

「今回のような大幅な円高・ドル安から円安トレンドに転換すると、過去のケースを参考にすると平均2年半は円安基調が続き、その間のドル上昇率は平均4割に達します。そこからいうと、円安は2014〜15年まで断続的に続き、1ドル=100〜110円の水準に向かうと見ています。したがって、個人投資家は難しく考えず、80円台後半でドルを仕込み、100〜110円まで円安になるのを待って利益を確定するという方法を取ればいいでしょう」

 円安だけではなく、株高もアベノミクスだけが要因ではないと指摘するのは、株式アナリストで、武者リサーチ代表の武者陵司氏だ。

「今の日本の株価上昇は、アジアでのプレゼンス、アジア市場への足がかりを失いたくないアメリカの地政学的要請という側面が大きくある。

 名目GDPがアメリカに肉迫するまでになった中国の政治・経済体制は世界の不安材料になりかねず、覇権国アメリカが容認できるものではありません。その中国に経済的な圧力をかけるには、隣国の日本のプレゼンスの高まりが地政学的なバランス上、求められる。

 日本の国力を削ぐ日本株の独り負け、円独歩高は、そうしたアメリカの思惑に沿わないことから、アメリカの容認の下に株高・円安が進んでいると捉えられます。 そのため、株価はこの先1〜2年で1万5000〜1万8000円まで上昇すると見ています。為替もアメリカが容認できる範囲である1ドル=100〜110円まで円安が進むと予測します」

※週刊ポスト2013年2月1日号