「上から目線」社員が陥る“孤立のスパイラル”

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「上から目線」の人たちの多くは高学歴で、MBA(経営学修士)や取得が難しい資格を保有していたり、海外留学経験等々、優秀である半面、自己主張が強く周囲への気配りが決定的に欠けています。

就職難の中、一瞬だけ売り手市場だった2005〜06年入社組に多く、気に入らぬ仕事を嫌がったり、上司に楯突くのは序の口で、お客様を論破して「バカな客に教えてやった」と言い放つ剛の者も。物事を客観視できず、上司の苦言を「言ってるのは課長だけ」と、都合のいいようにしか解釈しない。プライドが高く、叱られると「自分の能力が高いのでやっかみで言われた」などと匿名で人事宛にメールを打つ。上司もハラスメントを気にして、身動きが取れません。

要は、ビジネスの基本ができていないのです。なのにこうした言動を繰り返し、社内の和を乱していては、先輩や指導員にヘルプしてもらえるはずもありません。

こうして未熟なまま社内で孤立していけば当然、仕事も遅いまま、完成度も上がらない。そのまま30、40歳になっても口ばかりで、周囲に関わりを拒まれ、かといってクビにもできず、いないものとして扱われる社員になってしまう。

仕事柄、年間に数千人を超える課長以上の方とお会いしますが、こうした「上から目線」社員が話題に上った際に、私は「ゴールデンエイジ」の話をしています。

「ゴールデンエイジ」とは、最近スポーツ指導の世界で頻繁に使われている言葉です。理屈ではなく体験を通じ、驚異的な吸収力を発揮し、目覚ましく成長する時期のことで、9〜12歳頃を指します。残念ながら一生に一度しか訪れませんが、大人のコントロールが利きやすいこの時期に、基礎を徹底的に叩き込むことが大事です。

ビジネスにおける「ゴールデンエイジ」は、私は入社1〜2年目だと確信しています。2度目はありません。上司や先輩のコントロールが利きやすいこの時期に、徹底して基礎から教育しないと「上から目線」は直らない。上司は心を鬼にして、厳しく接する必要があります。嫌われたり、辞められることを恐れてはいけません。

■何回でも言い続け、かまい続けよ

ある製薬メーカーの実例です。自信満々、新薬開発部門を希望していた高学歴の新人女性。新入社員全員が最初は営業に回ると知って、完全にふて腐れていました。

新人研修の最終日、打ち上げのカラオケ大会。人事部長からトップバッターに指名されたのが彼女でした。「私、歌えません」と言った途端、「おまえ、お客様に言われてもそう断るのか!」と皆の目の前で怒鳴りつけたのが、普段は温厚そのものの人事部長でした。

「言われた瞬間、天狗の鼻が根元からポロッと取れるのを感じました。あれがあったから今の私がある」と、現在は管理職に就いている女性本人から聞きました。人事部長は、拒否されるのを見越してわざと指名し、叱ったのでしょう。

大切なのは、入社して早い時期、なるべく大勢が見ている前で叱ること。こういう人は負けず嫌いだから、ポキリと折れる心配は少ない。割のいい賭けです。普段、嫌な思いをしている周囲の人たちも納得するはずです。個室で叱るのは、証人がいないからハラスメントの問題になりかねません。

ただ、実際に職場で注意する際は、言い方には気をつけてください。見ている人が不快に感じたら、ハラスメントになってしまう。例えば、「あなたは○○だ」と“you” が主語だと反発を招くが、「僕から見ると○○に感じる」と“I”を主語にして伝えれば、ソフトな表現になります。

信頼関係があるお客様に事情を話して、代わりにガツンと言ってもらう手もあります。「上から目線」の人は客観性に欠けるだけに、第三者に注意してもらうのは非常に効果的。ハラスメントの問題も生じません。

多くの場合、1回、2回の注意では改善しません。「ウザイ」などと反発されることもあるでしょう。が、言葉=本心とは限らない。かまわれることを喜んでいるかもしれません。諦めたら容認されたと思われてしまうし、周囲にも示しがつきません。何回でも言い続け、かまい続けるべきです。私が見る限り、上が指導し続ければ、8〜9割は普通の社員になっていますよ。

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人材育成コンサルタント 内田和俊 
1968年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。経営者等を対象としたコーチングのほか、大手企業幹部社員の社員研修・コンサルティングを実施。著書に『「依存する人」を「変化を起こす人」にどう育てるか』ほか多数。

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(人材育成コンサルタント 内田和俊 構成=金井良寿)