外食産業の「勝ち組」として君臨した日本マクドナルドが、今や苦境に立たされている。先に発表した昨年12月の売上高は、既存店ベースで前年比8.6%減と、9カ月連続で前年を下回った。通期の数字は未公表だが、1〜9月期が前年同期比2.2%減、10、11月も前年割れだったため、年間での減収はほぼ確定。2004年の就任以来、8年連続で年間の既存店売上高を伸ばしてきた原田泳幸社長(CEO会長兼務)の“原田マジック”が、ついに崩れた格好である。

 都内繁華街にある店舗のマネジャーに聞いた。
 「原田社長は売り上げ増に向けて檄を飛ばすが、現場は疲弊しきっている。目先を変えようと宅配サービスの強化に着手したばかりか、去年10月には客が注文する時間の短縮を狙ってレジカウンターのメニューを廃止する奇策に打って出た。行列の縮小、回転率のアップなど理由はいくらでも並べられるが、客の目には上から目線というか、高い商品を買わせようとの魂胆としか映っていない」

 しかし、そんな現場の冷めた声に耳を貸すほど謙虚な原田社長ではなかったようだ。同社は1月4日から31日までの間、11時〜14時の限定で客が注文して会計を済ませてから60秒以内に商品を届けられない場合、ハンバーガーの無料券を配布している。この発想はレジカウンターからメニューを撤去したのと同じで、顧客への気配りよりも時間短縮=回転率の上昇を狙った商魂しか見えてこない。
 「マクドナルドからヘッドハンティングされたとき、原田氏は米アップル社の副社長を務めていました。人間味のある考えとは対極的なコンピューター一筋の人間ですから、顧客の食生活や嗜好の変化を読み違えたとすれば、軌道修正するのに相当苦労するのでは…」(経済記者)

 ハードなマニュアル術しか透けてこない戦略は、とんだ“マック”違いといえるかもしれない。