取材・文・写真: 編集部

(第1回/全3回) ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『WGSN』のインサイト・プレゼンター、浅沼小優氏インタビュー

(第2回/全3回) ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『WGSN』のインサイト・プレゼンター、浅沼小優氏インタビュー

アパレルからリテール、家電、自動車、インテリアまで、ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『Worth Global Style Network (WGSN) 』。ロンドンに本社をかまえ、パリ、ニューヨーク、香港、上海、メルボルン、サンパウロ、そして東京に支局を設け、クリエイティブ産業にたずさわるあらゆる職種に有益な情報を提供している。WGSN東京支局にてアカウント・マネジャー兼WGSNインサイト・プレゼンターを務める浅沼小優氏に、トレンドが決まるプロセスから、SNSがファッションの消費行動に与える影響、今後のリテールビジネス・ブランドビジネスの行方、 いま世界的注目の新興アパレル市場、2013年に消費者が求めるもの、Eコーマスなど、いろいろと話を聞いた。

 

- いま日本語に対応する海外のオンラインショッピングのサイトが増えてきて、日本で海外ブランドを買うより確実に安いという理由で、日本のショップは打撃を受けているようなのですが、その対策としてなにかありますでしょうか?

いまは円高なのでかなりお買い得ですよね。ショップで試着しておいて、家に帰って海外のサイトで購入というように、ショップはただのディスプレイになっていますし。日本のディストリビューターの未来はあまり明るくなさそうな感じがします。でも、ポイントはアフターサービスだと思います。もちろんものを購入するまでは、絶対安いところで買いたいと思うのはみんなが思うことですが、買ったあとが問題です。例えば返品したくなったときにどうするか。それから少し修理や相談したいときにどうするか。まったく日本にベースがないと、やはり言語的な問題もあってなかなか日本の人が最終的に海外のサイトから買うかどうかわからないですよね。若い人は英語環境でショッピングをするとか、あるいは日本語になっているからそこからショッピングするということに対して違和感を感じないかもしれないですけど、買ったあともその商品を買ってよかったと思い続けてもらえるような環境を提供することが次の購買につながると思います。

あとは実際にモノを手に取れるというのはやはり大事なんですよね。その触感、特にアパレルはそうですよね。触ったときの感じや着心地も大事ですし。ですので、オンラインで買ってはみたものの、実物は気に入らなかったということはありますし、見たいとか触りたいというのは自然な欲求としてある。そういう意味でモノが商品棚から消えることはないでしょうし、商品についてある程度直接モノを見ながら説明するのは大事な仕事だと思います。でも、おっしゃるように、規模としては小さくなるというのはありますね。それはもう避けがたいことだと思います。

海外のECサイトで安く購入するというのは一番賢いやり方なのかもしれませんが、ベストな方法を人が常に選ぶとは限らないですよね。心理的な壁がある人というのは、さっきも申し上げた通り、どうしても海外のECサイトで買うのが嫌だという場合もあるので。特に日本は、IT機器を駆使して気軽にお買い物をする人もいれば、日本橋三越に行って、外商のひとといっしょにお買い物するのがやっぱりいいという人もいるわけですよね。それはそれで良いんですよね。その人がたのしいと思うことがベストなわけですから。だからそういうサービスもある程度は必要です。デパートに行って買ったほうが、購入感はありますよね。そういうのを得たいときもあるだろうし。いろいろなタイプのうれしさやよろこびがあると思うので、その辺はさまざまなオプションを用意しておくと良いと思います。
ラグジュアリーブランドにとっては特にアフターマーケティングというか、買って正解だったという風に思ってもらうことは特に大事な側面ですよね。そういう意味では、ネットでお届けしましたで終わりでは、なんだか寂しい。10万円も費やして、ただ商品が届きましたというのでは寂しい。そういう意味ではあとからDMが届くのがうっとうしいかなと思ったりするものの、でもそのようにケアしてもらっているみたいな感覚というのが大事なときもあると思うんです。

2/3ページ: WGSN が企業向けに提供できるソリューション


©THE FASHION POST


- WGSN が企業向けに提供できるソリューションにはどのようなものがありますか?

日本の市場規模が小さくなっていく状況はどうしても避けられません。そこで海外に活路を見出そうとしていらっしゃる企業に対して、先ほどのリアリティチェックではないですけれども、いまどこでなにが起こっているのか、そして未来にどのようなことが起こると予測されるのかというある程度の指標を提供できます。もちろん、WGSNだけが正解ではありませんが、ひとつの判断材料にはなり得ます。また、個別のコンサルティングも行っていまして、こういう国でこういうことをしたいとか、この国にいるこういう人たちとつながりたいというときにもお手伝いできると思います。海外のバイヤーさんを日本に連れてくるという企画もありますし、逆もあります。ヨーロッパ各国とアメリカでは私どもはある程度認知されていて、ファッション業界の方々とも近しくお付き合いしています。業界団体との交流をセッティングすることもできます。あとは、サンプルバイイングというサービスもありまして、海外で売っているモノをサンプルとして買ってお送りしたりしています。

やはりアパレル産業というのは日本ではなかなかむずかしい局面にあって、それをなんとかお手伝いしたいという思いがあります。どうしても日本のブランドは内向きになってしまう傾向にありまして、自分たちがオリジナルのモノを創り出していくという姿勢自体はすばらしいのですが、オリジナルを生み出すためには実際の状況を知らなければいけない。その中で自分たちがどういう立ち位置なのか、常に確認しなくてはいけない。そのために上手く活用していただければなと思っています。私どもは、トレンドに沿ったさまざまな絵型やグラフィックを出しているので、あたかもそれを作ってくださいと言っているように聞こえるかもしれませんが、そういう観点ではなくて、グローバルでこういうものが出るでしょうとか、出ますというときに、「じゃあそこと違うことやろうよ」というのでも当然良いわけですよね。もちろんそれを使ってくださっても構わないのですが、まずはメインストリームを知らないと自分たちがやっていることの意味がなかなかわからない。そういう点では私どもを見ていただくことで自分たちの立ち位置をうまく把握して、そこから発信されると良いのではと思います。

 

- 海外に進出したいときのコンサルティングをお願いできる相手というのはなかなかいないですよね。現地の詳しい情報はなかなか入手するのがむずかしいので。

私どもは世界中で情報収集をしているので、ある程度ご相談いただきながら進めていけます。日本の人は情報に対価を払うことに対して少し抵抗があるかもしれません。もちろん、情報にためらいなくお金を払われるところも確かにあるのですが、大きい会社でもネットで調べれば出てくるだろうと考えられている方がいらっしゃるみたいで。もちろん、情報はあふれるほど出ています。一方で、本当に精査された情報、あるいはキューレーションされたものというのはそんなに転がっていないんです。莫大な金額ではないとは思いますが、ある程度コストをかけないとそれに見合った情報は出てこないのではないかと思います。つまり、断片的な切れ切れな情報というのはたくさんありますけど、分析されたものであったり提案を含めたものであったりというのは、なかなかフリーでは手に入りません。

3/3ページ: 浅沼さんの東京のおすすめスポット

- WGSNのサイトではすべてが日本語になっているわけではないですが、例えば、クライアントさんが「この記事ちょっとおもしろそうだから読みたい」と言ってきた場合は、日本側のチームで翻訳をしたりしているのでしょうか?

それはアディショナルサービスとして承っています。もちろん技術的には可能は可能ですけれども、相当な量がありますので。あとは、ある企業では自分たちの業界に関係したり、関心のあるニュースの解説をして欲しいということで、例えば10本から15本くらい弊サイト上にあるリポートをピックアップして、それらの互いの連関を含めて解説をする、といったカスタマイズのセミナーをしたこともあります。

 
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- 最後に、浅沼さんの東京のおすすめスポットを3つ教えてください。

・浜離宮恩賜庭園
住所: 東京都中央区浜離宮庭園1-1
Tel: 03-3541-0200
URL: http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index028.html
年に数回、季節ごとに行きます。菜の花の季節だと蜂蜜のようなにおいがしたり、梅の季節も本当に楽園のような香りだし、夏は夏で潮のにおいがして、のんびり散歩をしながら季節の香りを楽しんでいます。

・わした
住所: 東京都中央区銀座1-3-9 マルイト銀座ビル1F, B1F
Tel: 03-3535-6991
URL: http://www.washita.co.jp/info/shop/ginza/index.html
銀座にある沖縄の物産店。東京の普通のスーパーでは売ってないような沖縄の新鮮な食材が買えます。

・光の館
住所: 新潟県十日町市上野甲2891
Tel: 025-761-1090
URL: http://www11.ocn.ne.jp/~jthikari
東京ではないですが、アーティスト James Turrell (ジェームズ・タレル) の作品がそのまま体感できる旅館です。神社仏閣の造りで、谷崎潤一郎の『陰影礼賛』に影響を受けて建てられたそうです。明け方になると屋根が開いて、寝そべりながらみんなで明けていく空を眺めることができます。

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©THE FASHION POST浅沼小優 (あさぬまこゆう)
WGSN (ワース・グローバル・スタイル・ネットワーク・リミテッド)
アカウント・マネジャー & WGSNインサイト・プレゼンター

積水ハウス勤務後、渡米。インテリア業界にてVMDとバイイングに従事。帰国後LVMHグループ、ロエベ、伊シューズブランドなどにてMD、マーケティングを担当。2010年より現職、各企業にてクリエイティブ・マクロ・トレンドの解説を行う。立教大学大学院修了、主に消費論、アイデンティティ論、欲望論などを研究。社会デザイン学MBA。

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