変わる働き方とマネジメント - クラウドとグローバル化が40代を襲う (4) クラウド時代のマネジメント術

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いつでも会社や業務に関する知識を探し出すことができるクラウド時代、情報の流れが早いだけにビジネスモデルも猛スピードで変わっていきます。

若い世代より長い経験があるからとか、業界特有とか専門分野の業務の知識があるからという理由では、今後部下を引っ張っていくことはできないでしょう。

かといって高い給料で繋ぎ止めるとかもできない状況です。

これからの40代は自分が習ってきた指導とは違う方法で若い世代のマネジメントをしていかなければいけないというものの、では何をもって若い社員を引き止め、モチベーションを上げていくのでしょうか。

ここまではクラウドが知識の流通を簡単にしたために、過去の経験が活かせない状況になっていることを説明してきました。

そしてその結果、経験という価値が暴落し、年功序列の崩壊や上司への価値観も変わってきているのですが、実は、高度成長期のワークスタイルや労働観はIT以外の要因でもすでに変わらざるを得ないところに来ています。

一つは失われた20年による育った環境の違いによる世代断絶で、もう一つは低成長と少子高齢化による生活環境の変化です。

第1回でも書いたように、働くほどに豊かになる高度成長期に育った40代は「会社の成長=個人の成長」であり、上司に従ってがむしゃらに働けばいつか報われると心の底で信じている部分があります。

そして、それを無意識のうちに部下や後輩にも求めますが、その価値観は、失われた20年を働いた親の背中を見て育った若い世代に拒絶されてしまいます。

会社や上司の方針にとりあえず従うことがもっともベターで普通の選択という判断基準と、会社の成長や没落には関係なく、自分の幸せは自分で見つけなければいけないという判断基準の違いです。

残念ながら多くの会社が明確な成長の方程式を持てない現状においては、「とにかく俺を信じろ!」と自信を持って言えるマネージャーは多くはないでしょう。

また、現状うまくいっているからといって、その状況が永遠に続くわけではなく、むしろ状況がすぐに変わるだろうことは、若い世代のほうがむしろよく理解していたりします。

マネージャーは、若い世代に給与の伸び以外の報酬を与えることを考えざるを得ない状況になってきています。

頑張れば家が買える、買った家はきっと値上がりする、そして会社も大きくなり部下も給料も増えるなんて、今は40代でも信じてはいないでしょう。

そこにさらに頑張れない物理的な制約、すなわち生活環境の変化が加わってきています。

具体的に言うと平均給与の下落での共働き、そしてそれによる地域コミュニティの崩壊、さらには高齢化です。

高度成長期に描かれたビジネス小説などによく出てくるシーンで、熾烈なビジネス戦争を戦っているライバル同士が、物語の佳境で片方の実家で親が倒れて出世街道を諦めて別の道を見出し物語が終わるというパターンがあります。

家庭におけるトラブルの勃発は人生において一大事であり(それは今も一大事ではありますが)、想定外の出来事だったのに対し、50代でも60代でも最前線にいる環境が普通になった現在では、勤続しつづけられない状況が来ることは人生の計算に必ず入れるべきファクターであり、それは親の介護という問題のみならず、自分自身の健康とも相談する事態になってきています。

かつての小説では、親が倒れた時点で田舎に引っ込んでも退職金と不動産、年金でその後の人生は食べて行ける保証はありました。

もしくは専業主婦である妻が親の介護を引き受けて、夫はそのまま働き続けるという選択肢も考えられたわけです。

しかし、共働きになればそうはいきません。