インドで大人気のクリケットってどんなスポーツ?
世界での競技人口がサッカーに次いで2番目に多いといわれているスポーツ『クリケット』。世界100カ国以上で愛されている球技です。
さて、世界中に愛好者が多いクリケットですが、日本での知名度はイマイチ。ルールはおろか、どんな内容の競技なのかさえ知らない人も多いでしょう。そこで今回は、クリケットとはどんなスポーツなのか、日本クリケット協会さんに聞いてみました。
■クリケットは野球の親せきのようなスポーツ
――クリケットというのはどんなスポーツなのでしょうか?
クリケットはイギリスが発祥とされているスポーツで、17世紀にイギリスの植民地であるインドや南アフリカをはじめ、世界各国に広まりました。現在も世界の100以上の国や地域に愛好者がいるインターナショナルなスポーツなのです。
――クリケットはもともとはイギリスのスポーツだったのですね。
そうなんです。イギリスの植民地であったアメリカやカナダでも植民地時代からクリケットがプレーされていました。クリケットは野球の原型になったスポーツともいわれていますが、個人的には野球の原型は、ラウンダーズという野球に非常に似たスポーツだと思っています。
――なるほど。野球とクリケットでよく似ている部分はどんな点ですか?
クリケットも野球も「投手が投げたボールを打者が打ち、得点が多い方が勝ち」という、基本ルールは同じです。野球で使うボールやキャッチャーのレッグガードなどは、クリケットのものに非常に近いものを使っています。そう考えると、クリケットは野球の「親せき」のようなスポーツでしょうね。
■野球の親せきだけどいろいろと違うクリケット
――基本的な部分は私たちのよく知っている野球と同じとのことですが、具体的にはどんなルールで行われるのでしょうか?
クリケットは11人で行うスポーツです。まずコイントスで先攻と後攻を決めます。その後、守備側が守備位置につき、野球のバッターに当たる「バッツマン」の2人がフィールドに立ったら試合開始です。
――バッターは1人じゃないんですか!?
クリケットでフィールドに立つバッターは2人なんですよ。バッツマンの2人はフィールド中央にある長方形のエリアの両端に立ちます。なのでバッツマンの一人は野球のピッチャーに当たる「ボウラー」のそばに立つことになりますね。
――う〜ん、なんだか複雑な感じがしますね(笑)。
いや、そんなに難しいものではないですよ。バッツマンが定位置に立ち、試合が始まったら、ボウラーがバッツマンに向けてボールを投げます。ボウラーの投球数も一人6球までと決まっていて、6球投げたら次の人と交代します。一度投げ終わった人でも誰かと交代した後なら再び投げることができます。
――投球数が決まっているのは野球と違う点ですね。
そうですね。ほかにも投球時にはひじを曲げてはいけなかったり、助走をつけて投げるのがOKだったり、いろいろと野球と違う部分がありますよ。
――なるほど。では、試合が始まるとバッツマン側はどう動くのですか?
バッツマンが立っている長方形のエリア両端にはウィケットと呼ばれる3本の棒が立っているんです。バッツマンが一番優先することは実はボールを打つことではなくて、バッツマン側に立っているウィケットをボウラーに倒されないように防ぐことなんです。
――ということは、ボウラーはこのウィケットを倒すためにボールを投げている、と。
そうなんです。このウィケットにボールが当たったり、倒されるとバッツマンはアウトになります。なのでウィケットが倒されない限りは空振りを何回してもOKなんです。
――では、見事にボールを打ち返した場合はどうすればいいのですか?
ボールを打った場合は、バッツマンはボウラー側のウィケットめがけて、ボウラー側に立っているバッツマンはもう一人のバッツマン側のウィケットに向けて走ります。それぞれが反対側のウィケットに到達すればこれで1点。そのまま往復すれば2点入ります。
――そのまま何往復もすれば大量得点が入るのですか?
そうですね。アウトにならない程度には何往復してもOKです。ボールが返球されて、ウィケットが倒されるとアウトになりますが、この場合アウトになるのは、倒されたウィケットに向けて走っていたバッツマンになります。アウトになったバッツマンは次のバッツマンと交代となります。1チーム11人なので、10アウトでバッツマンにパートナーがいなくなり、攻守交代となります。
――具体的なルールは野球と別物なんですね。
■恐ろしく時間がかかるテストマッチ
――何回も空振りがOKでさらに10アウトも必要ということは、1イニングがなかなか終わらないんじゃないですか?
国際試合には3つの形式があります。2イニングマッチで行われるテストマッチは、終了までにだいたい4〜5日かかります。1イニングだけで、なおかつ全体の投球数を決めて行うワンデイマッチでも丸1日かかりますね。また、全体の投球数を120球に決めて行う、トゥエンティトゥエンティマッチは、3時間で終了します。最近では1〜2時間ほどで終わる6人制や8人制のクリケットもあります。
――日本のプロ野球では「3時間ルール」とかいろいろ試合時間について議論していますが、テストマッチはそんなの目じゃないですね。
プレー時間が非常に長いのがテストマッチの特徴なんですよ。なので試合途中で休憩のための「ティータイム」が行われます。
――なんだか優雅ですね(笑)。
クリケットは紳士淑女のゲームですからね。紳士であれ、というクリケットの精神を非常に大切にしますので、クリケットの熟練者は心も真の紳士であることが要求されますよ。
――日本ではあまり知名度はありませんが、競技人口はどれくらいなんですか?
日本では3,000人ほどですが、イギリス大使館などと交流試合を行ったり、国際交流が盛んです。国内ではまだ知名度はあまり高くありませんが、クリケット教室なども開催されているので、興味のある方は気軽に参加していただきたいです。
筆者の友人に聞いたのですが、みんなでワーワー言いながらウィケットをグルグル往復したり、途中でお茶飲み休憩をしたりと、クリケットはとても楽しいそうです。皆さんもぜひ世界で有数の人気を誇るスポーツ、クリケットをやってみませんか?
(貫井康徳@dcp)
【日本クリケット協会のHP】
http://www.cricket.or.jp/