図15・16・17(図表提供=フランクリン・コヴィー・ジャパン)

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フランクリン・コヴィー社の「7つの習慣」セミナーは、これまでに20万人以上が受講。そんな同社が提供する最新のリーダーシップ研修とは。

リーダーにとって4つ目の役割は、エンパワーメントを進め、メンバーの才能と情熱を解放することである。それによって組織の力は最大化される。

エンパワーメントそのものは目新しい発想ではなく、日本でも2000年前後に一種のビジネス流行語になった。このとき「権限委譲」という訳語が当てられたことは、多くの誤解を招く原因となった。エンパワーメントと称して、目標や方針だけ示し、あとは部下に丸投げする上司が増えたのである。その結果、仕事が回らなくなり、やはりしっかり管理しなければいけないという反動が起きた。

エンパワーメントという言葉がもつ「その人の力を引き出す」というニュアンスは伝わらなかったのである。

一方で、もともとエンパワーメントの実施が難しいことも確かである。欧米企業でも過去に失敗したケースは多く、図15のようにエンパワーメントを妨げる要因があげられている。

管理指示型のリーダーは「部下は常に動機づけされ、管理されなければ、力を発揮できない」と考えがちである。

そのため、重要な意思決定や問題解決のすべてに参加したがり、細かい点まで管理しなければ気がすまない。極端な例では、自分が職場の中心人物だと思われることが何より大切で、すべて自分の思うように進めようと、いつも他人の心を監視するようなマネジャーもいる。

たしかに物事を進めるうえで、他人をコントロールするのは手っ取り早く、効率的ではあるが、しかしそれは効果的ではない。メンバーから成長や貢献の機会を奪い、長期的には組織の力を損なってしまうのである。従来のマネジメントがコントロールを中心とするのに対して、リーダーシップはリリース(解放)を中心とする。

エンパワーメント型のリーダーは、メンバーの才能と情熱が解き放たれることで、チーム力が最大化されることを知っている。産業時代から見れば、まさにパラダイムの転換である。メンバーがもっている才能と情熱を、組織の正しい方向に解き放つことが成果を生むという考え方である。

図16は、リーダーシップの4つのスタイルと6つのレベルを示したものである。リーダーシップのスタイルはコントロール派から放任派まで4種類あり、上のほうがコントロールの度合いがより強くなっている。

一番下の放任派は「実行するだけで報告の必要はない」というもので、ビジネスの世界では考えられない状態である。次の解放派がビジネスの世界では最も解き放たれた状態で、レベル4と5にあるように、上司の指示を受けることなく、自らの判断で実行し、その結果を報告するという働き方である。

私たちのリーダーシップがめざすエンパワーメントは、この「解放」あたりを指している。「メンバーの才能と情熱を解放する」と表現するのもそのためである。

もし高い能力があるにもかかわらず、上司がいちいち指示を出し、細かく報告を求めるとしたら、そのメンバーのモチベーションは下がるだろう。逆に、上司から能力が認められ、自由に判断する裁量が増えれば、能力がある人ほどモチベーションが高まり、活き活きと働くようになる。

情報・知識労働者とは、そのように解放されることでモチベーションが高まる人たちである。このことを理解しないリーダーは、相変わらず産業時代の管理モデルを引きずり、組織の力を低下させている。

ただし、すべての仕事、すべてのメンバーについてコントロールを緩めるというわけではない。仕事のリスクレベル、相手への信頼度レベルによっては、強いコントロールが必要な場合がある。失敗が許されない仕事、経験不足の新人などには、コントロールが強まって当然である。あくまでも通常のレベルで、解放をめざすのがリーダーシップである。

本当のエンパワーメントを進めるためには、ボイスの発見や全人格型パラダイムが前提となる。そしてリーダーが信頼を築き、意義を見出し、組織を整えるという手順を踏んでいないかぎり、いきなりエンパワーメントを実行するのは不可能といってよい。かつてエンパワーメントに失敗した組織が多くあるのもそのためである。  エンパワーメントが進んだ組織では、リーダーは仕事の指示や命令を下すことがなく、自分から報告や連絡を求めることもない。その代わり、ビジョンや各人のボイスを確認したり、成果の検証をしたりするための会話が活発に行われ、メンバーへの声かけも頻繁にある(図17)。

成功したチームは、メンバーが相互に補い合う関係が成り立っている。個々のメンバーにとっては、自分の長所を伸ばし、短所を補ってもらえるという環境である。このようなチームをつくりあげるリーダーは、たいてい成熟した人格をもち、自信と勇気にあふれているものである。リーダーの多くが、自分に賛同する人ばかりで周囲を固めてしまうのとは対照的に、多様な人材を集め、その人たちの才能と情熱を引き出そうとする。

いまやテクノロジーとマーケットは世界中に開かれている。グローバルに競争するうえで、産業時代のように効率を求めすぎると効果を失ってしまう。場合によっては、優秀な人材までも失うことになる。グローバルマーケットで戦うには、人々がもっている力をすべて融合させ、相互に補わなければ勝利することはできない。

(フランクリン・コヴィー・ジャパン副社長 竹村富士徳 構成=伊田欣司)