猪瀬直樹新都知事が、ロンドンを訪問。1月10日に五輪関係者らと面会を行い、いよいよ2020年の東京五輪開催に向けた招致運動が本格化し始めた。ところが、その招致姿勢が思わぬ悪評を買っているのだ。

 社会部記者がこう話す。
 「猪瀬氏らは、『世界一安全な都市での洗練された、低コスト五輪』とPR。経済効果も、『地方を含め3兆円のプラス』と豪語しており、五輪費用も約4000億円と試算し、すでにこの金額を都が積み立てていることを明かしているのです。だが、これは東日本大震災前のソロバン勘定。今では使い物にならないデタラメ試算ともっぱらなのです」

 要は、その口上や予算が耳触りのいいものだけを並べたシロモノと評判なのである。ただし、こうした批判は当然と言わざるを得ない。震災以降、状況は明らかに一変しているからだ。
 大手シンクタンクの経済アナリストがこう語る。
 「昨年の笹子トンネルの崩壊事故ではないが、前回の東京五輪時に作られた首都高はもはやボロボロ。老朽化が著しい羽田線の15キロ区間を撤去、地下化するだけで4兆4000億円もかかるのです。またその他の区間の修復にも1兆円程度かかるという。つまりこれらを行わない限り、9月の開催地決定前には世界中のメディアに叩かれることになるはずなのです」

 また、この他にも問題は山積状態だという。
 「選手村を東京・晴海に建設するというが、震災時に起きた津波が国際的に問題視されれば、スーパー堤防を建設せざるを得なくなる。さらに夏場五輪ともなれば、電力需要がパンクすることは必至。1基建設、整備するのに1兆円かかるといわれる火力発電所などを新設することにもなりかねない。そのため識者筋では、マイナス50兆円の経済効果を指摘する者までいるほどです」(前出・社会部記者)

 結局、儲かるのは建設業者と口利き政治家という事態を招きかねないのだ。