2013年の金市場、年始早々、大きな注目イベントが控えている
「財政の崖」への対応が混迷する中、米国の政策当局が年明け早々に新たな対応に迫られるのが「連邦債務上限」引き上げ問題だ。米国債の格付け変更につながるゆえに金価格を左右することになる。果たして2013年の金はどうなる?


4年に1度の民主主義のお祭り、米国大統領・議会選挙も、終わってみればシナリオ通りオバマ再選。そして議会は上院・民主党、下院・共和党の「ねじれ議会」で選挙前と同じ結果となった。そこで、次の問題となるのが2012年12月末のブッシュ減税の終了と併せて、2013年から最大で6000億ドル規模の増税と歳出削減が行なわれる「財政の崖」だ。この問題は、続いて対応を迫られる「連邦債務引き上げ問題」と相互に関連する。

2011年8月に2兆1000億ドル引き上げられ、16兆3940億ドルとなった連邦債務の上限(国債の総発行枠上限)は、2013年1月には限度枠いっぱいに達する見込みだ。追加枠の設定については、2013年1月に召集される新議会の審議に託される。まず、引き上げからわずか1年6カ月で上限に達するほどの財政赤字拡大のペースが注目されるだろう。それと同時に下院での優勢を保った共和党は民主党に対し、上限枠引き上げの条件に、民意を盾に「小さな政府」を掲げて社会保障費の減額を迫りそうだ。前回(2011年)の総枠引き上げの条件が、2013年からの歳出の強制カットだった。これが今回の「財政の崖」問題の要因となっている。そのメドが立たないところに、さらなる借金枠の引き上げが到来することになる。この問題で米国財政の急激な悪化に市場の関心が向かうことは、金価格の刺激要因となる。米国財務省の資金のやりくりで米国財政は前回同様、3カ月は保つと思われるが、市場は時間の猶予を与えないだろう。株式市場は不透明要因の持続を悪材料と判断し、弱含みでの推移が考えられる。この状況には格付け会社も感心を示しており、議会の対応能力に疑問があれば、格付会社のS&Pによる2回目の格下げも視野に入る。また、S&P以外の格付け会社による格下げの可能性はより高そうだ。

実際、ムーディーズ・インベスターズは2012年11月12日のレポートで、連邦債務の中期的な安定・削減策で政策当局者が合意できなければ、「トリプルA(Aaa )」から「ダブルA(Aa)」に引き下げると発表。この場合、借入枠の引き上げ理由に納得のいく条件を付けないと格下げということになる。

いずれにしても2013年の金市場は、年始早々に高値更新に関わる大きな注目イベントを控えている。



亀井幸一郎(KOICHIRO KAMEI)
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。




この記事は「WEBネットマネー2013年2月号」に掲載されたものです。