平野敦士カール氏

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■競合他社と蜜月関係の相手から信頼を得る

【TECHNIQUE】カギは「プラットフォーム戦略思考」にあり

競合他社をA社、その蜜月関係にある相手をB社とすると、A社とB社には必ず何らかの問題があります。関係が近ければ近いほど、トラブルは発生するもの。自社としては、両社の間で発生している悩みやトラブルを解決するものを提供する発想を持つことが重要です。

このケースであれば、B社が何に悩んでいるかを調べたうえで、自社として何が提供できるのかを探っていくことです。

相手の欲しているものをうまく見つけて、自分たちの戦略にフィードバックしていく――。こうした考え方をプラットフォーム戦略思考と呼びます。これはwin-winの形でプラットフォームに複数のグループをのせ、一企業の枠を超えて周囲の人や企業も幸福にしていく事業のエコシステムを構築する思考です。

私は以前、NTTドコモiモード企画部アライアンス担当部長としておサイフケータイの普及を担当しました。最も苦労したのが、コンビニなどの小売店に対して、おサイフケータイに対応したシステムを導入してもらうことです。当初、「電子マネーを導入するとお客さんの決済が早くなります」と小売店側に持ちかけていたのですが、なかなか受け入れてもらえませんでした。

小売店の担当者にヒアリングしたところ、決済の早さより、むしろ売上単価や顧客数、顧客の来店頻度を上げたいと考えていることがわかりました。そこで、ケータイをマーケティングツールとして導入することによってどのような効果があがるかをシミュレーションし、小売店側を説得する戦略に転換しました。結果、次々に普及していったのです。

このケースではまったく新しいサービスだったので競合はいませんでしたが、競合がいる場合も同じです。自社のサービスが優れていることを強調しても、相手は聞いてくれません。相手の悩みを見つけ出し、それを解決するための提案を行う。これが王道です。

だからこそ人脈ネットワークが重要です。プロジェクトが成功するかどうかは、こちらの情熱や想いを相手の担当者とシェアできるか否かでしょう。その意味では「どの会社とやるか」より「誰とやるか」が重要です。同じ会社でも「あそこの部署に行ったらダメだ」ということがあります。相手企業の中で、誰がプロジェクトを動かす力を持っているのか。そこを見極める必要があります。

■有力企業との取引き、提携を成功させる

【TECHNIQUE】外部ネットワークをうまく活用せよ

ベンチャー企業が大企業とアライアンス(提携)を組むことは通常困難です。大企業から見るとベンチャー企業の信頼性がわからないからです。

そういう場合は、大企業の経営層と人脈を持っている人をうまく活用するのがいいでしょう。すでにリタイアした方たちを含め、若い人や会社の役に立ちたい意欲を持つ人はたくさんいます。

「信頼のおける○○さんの紹介」で来た人と、飛び込みで来る人では信頼性が異なります。もちろん飛び込みでも100回訪問すれば会ってもらえるようになり、信頼を勝ち取れる可能性はあります。私も「社内で何とか頑張って説得してきます」と言ってくれる。やがて彼ら彼女らが出世すれば、強力な人脈となります。業界の有名人やキーマンと付き合うべきという意見もありますが、自分を押し殺して付き合っても長続きしません。

では、どうやって社外の人たちと結びついていくか。私がお勧めしているのは、自分のプラットフォームをつくることです。具体的には異業種交流会や勉強会など、業界を超えてさまざまな人が集まれも昔、そうして成果をあげたことがありますが、効率的ではありません。

では、どうやって紹介者のネットワークに自分たちがつながっていくか。紹介してもらうためには、紹介者のスクリーニングをクリアできなければなりません。

そこで問われるのは、ビジョンです。規模にかかわらず、ビジョンのない会社や組織は少なくありません。ビジョンに合ったビジネスに特化しアライアンスを訴えていくのです。それが成長性のあるビジネスで、かつ大企業が自社では手がけない領域であれば、大企業にとって魅力的な相手となります。

大企業だからこそできないこと、困っていることはたくさんあります。例えば小売業者が自社店舗と競合するeコマースを手がけるのは難しいし、大手企業がSNSをいきなり手がけたら「出会い系」として社会的批判を浴びる可能性があります。そうした大企業の悩みに焦点を当て、大企業の戦略に則った形でアライアンスを提案することは大いに可能性があると思います。

交渉の際に必要となるのは、先に述べたプラットフォーム戦略思考です。参加者全員が成功できるプラットフォームをつくり、エバンジェリスト(伝道者)となってビジョンを伝えていくことが重要なのです。

最後に勝負を決めるのは、ビジネスにかける当事者の「情熱」です。私は「同志化」と呼んでいますが、参加者全員が情熱や想いを共有し、会社という枠を超えてプロジェクトを推進することが信頼関係構築の鉄則です。

■困ったときに頼りになる社外人脈をつくる

【TECHNIQUE】「ビジネス仲人」で信頼を構築すべし

人脈をつくろうと思うなら、偉い人に取り入ったりメリットのある人脈をつくったりしようとしないことが大切です。

年齢を重ねていけば、自動的に周囲の人たちの地位も上がっていきます。「こいつは将来、偉くなるかな……」なんて値踏みしながら人と付き合う必要はまったくありません。

人脈は10年、20年という長期にわたってつくっていくものです。これを「人材のベンチャー投資」と私は言っていますが、その際のメルクマールは「自分と波長の合う人」かどうかです。波長の合った人であれば、何らかの問題が起きても「社内で何とか頑張って説得してきます」と言ってくれる。やがて彼ら彼女らが出世すれば、強力な人脈となります。業界の有名人やキーマンと付き合うべきという意見もありますが、自分を押し殺して付き合っても長続きしません。

では、どうやって社外の人たちと結びついていくか。私がお勧めしているのは、自分のプラットフォームをつくることです。具体的には異業種交流会や勉強会など、業界を超えてさまざまな人が集まれる「場」を自分で主宰するのです。

そうすれば今まで出会えなかったような人とのネットワークを築くことができ、情報収集や他業種の見方など、さまざまなメリットを得ることができるでしょう。

いきなり大きな会を主宰するのは難しいので、友人が友人を連れてくる数人程度の会を催すだけでも確実に人脈は広がります。

もっと簡単にできるのが半径3メートルから始める「ビジネス仲人」です。これは、引き合わせたら双方にメリットがありそうなビジネスパーソン同士を紹介することです。  具体的には、自分が仲人となって3人でランチをする。そのメリットは、2人の会話から化学反応が起きて自らの勉強になるうえ、紹介した人との信頼関係が深まることです。インターネット全盛時代だからこそ、リアルの出会いが重要性を増していると思います。

すでに構築した人脈のメンテナンスも大切です。同窓生や同期の人、転職した人なら前の同僚とも親しく付き合っておくべきでしょう。

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平野敦士カール
東京大学卒業後、日本興業銀行を経て、NTTドコモで「おサイフケータイ」普及の責任者を務めた。現在、ネットストラテジー代表取締役。『プラットフォーム戦略』など著書多数。

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(平野敦士カール 構成=宮内 健 撮影=上飯坂 真)