7割の人が「職場で厳しく叱ることが必要」と感じている

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■仕事は理屈じゃない! 感情を出していい

怒るにはエネルギーが要るんだよ。ほかのことでエネルギーが取られるからか、最近は部下を怒らない上司が増えたそうだけど、僕にはできない相談だ。部下が怠けたり、規範から外れたことをしようものなら、その場で雷を落とすよ。人前だろうが、頭ごなしだろうが関係ない。仕方がないよ、僕は短気で、感情が自然に爆発してしまうのだから。怒りを抑えようとしたら、それこそ自分が病気になってしまう。

どうしたら上手に怒れるかなどと考えたこともない。感情を爆発させて怒るのは駄目で、理性的に“叱る”べきだという人もいるが、僕には無理だ。そんなことを考える前に口が開いているんだから。でも、長い間、ネチネチ怒ったりは絶対しない。相手が非を認めたらそれで終わり。僕に怒られたほうもそのときは怖いかもしれないけれど、あとはさっぱりしているはずだよ。飯田はそういう奴だ、ということを、みんなわかっているから。

昔は僕に呼びつけられた社員はよく、その辺の灰皿を隠して、自分の足を縮こめていた。(灰皿を)投げつけられる、(足を)蹴りつけられると思ったんだね(笑)。実際にやったことは一度もないけど、それくらいの剣幕で怒ってきた。

人は褒めたほうが育つというのは真理かもしれないけれど、褒める場面はそうそうない。逆に怒るべき場面はたくさんある。だったら、怒ったほうが人は育つんだ。

といっても、僕なりのルールがある。ひとつは、部下を憎まず、罪を憎むということ。この人は自分のことが嫌いなんだ、という気持ちを部下に抱かせたら、失格。もうひとつは、後でフォローしないこと。「さっきは悪かった」とか、肩を抱いて「飯でも食べにいこうか」なんて、絶対にやらない。気持ち悪いよ。そんなことをやるくらいなら、初めから怒らなければいい。

でも、勘違いしないでいただきたい。僕はセコムの社員が大好きなんだ。国内だけで約4万人いて、そのうち顔を知っているのはせいぜい500人だけど、みんな好き。これは社内で公言している。そう、好きだからこそ怒る、期待しているからこそ雷を落とす。

あるとき、とても優秀な社員が会社を去ったことがあった。辞めた直後にたまたま会って、「なぜ辞めたんだ」と聞いたら、その答えが振るっていた。

「(飯田)代表に怒られたことがなかったから」と。それを聞いてわかったよ。怒るというのは部下に対する上司の重要なコミュニケーションなんだ。僕が怒らないから、自分は相手にされていないと思ったんだね。そんなことなら、特段の雷を落としておけばよかったと思ったけど、あとの祭りだった(笑)。

僕が社内でさんざん怒ってきたのは、セキュリティ企業という、まだ日本には存在していなかった分野のベンチャーを立ち上げたこととも大いに関係がある。そのためには、世の中の常識と戦わなければならなかったし、辛いこともたくさんあった。そういう僕にとって、自分の会社の社員がルールから外れたことをした場合、怒るしかなかったんだ。企業を1からつくり上げる場合、どこかに「狂」の要素を持った人間でなければ途中で挫折してしまう。僕に限らず、創業社長には今も昔も鬼上司タイプが多いんじゃないかな。

仕事というのは理屈じゃないんだよ。自分がなぜ今の会社にいるのか、なぜその仕事をしているのか、理屈ではとても説明できない。これは男女の関係も一緒だ。論理とか分析が持てはやされる時代だからこそ、怒る、笑う、泣くといった感情をもっと大切にしたほうがいい。人間がやせ細ってしまったら、いい仕事もできない。

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セコム最高顧問 創業者 
飯田 亮 
1933年、東京生まれ。学習院大学卒業後、家業であった酒問屋に入社。62年に日本警備保障を創業し、社長に就任。97年より現職。

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(セコム最高顧問 創業者 飯田 亮 構成=荻野進介 撮影=若杉憲司)