『異邦人』、『ペスト』などの作品で知られるノーベル文学賞作家、アルベール・カミュが今年生誕100周年! これを記念して、映画『家の鍵』などで有名なイタリアの名匠ジャンニ・アメリオ監督がカミュの未完の遺作である『最初の人間』を映画化し、現在絶賛公開中です。

 大学卒業後ジャーナリストとして活躍し、戦時中に刊行された『異邦人』で小説家デビュー。数々の小説を世に送り出し、戦後最年少43歳の若さでノーベル文学賞を受賞するも、1960年に自動車事故で46歳という若さで死去という数奇な人生。タイヤがパンクし立ち木に衝突、という不可解な事故現場に残されたカミュ愛用のカバンから発見されたのが、未完状態であった『最初の人間』だったといいます。同書は1994年に未完のまま出版され、フランスで60万部を売り上げるベストセラーとなりました。

 舞台は1957年、40代の小説家コルムリはアルジェリアにいる母を訪ねていきます。それは貧しい家庭に育った彼の複雑な生い立ちをたどる旅であり、かつて紛争状態にあったフランスとアルジェリアの和解を模索していた過去の自分と向き合うことだったのです。このような設定から本書はカミュの自伝的小説といわれています。また、訳者である大久保敏彦氏はあとがきで次のように語っています。

 「評者がこぞって認めているのは、『最初の人間』の形式が不備であるだけに、かえって生のカミュの生の声が聞かれ、初めてありのままの姿のカミュに接することができるという点である。ジャン・ダニエルは初めてカミュの作品に近づく者から相談を受けたら、躊躇なく『最初の人間』を初めに読むように勧めるだろうと述べている」

 さらに大久保氏は"もしカミュが本書を完成させていたら自伝的要素を自ら消したであろうとする評者は多い"ともいいます。未完であったからこそ、彼のルーツを垣間見ることができるのでしょう。世界の文学史に名を残す天才作家の遺作、映画と併せて読んでみてはいかがでしょうか。



『最初の人間 (新潮文庫)』
 著者:カミュ
 出版社:新潮社
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