使えない部下(評価レベル・下位)は、総じて労働意欲が低い

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会社組織というものは、年齢的にも経験的にも異質な人が集まるヘテロジーニアスな社会です。一方、多くの人は学生時代を経てから就職するまで同級生に囲まれて年齢差が少ないホモジーニアス(同質)な社会で過ごします。そこからヘテロジーニアスな世界に入ってきたら、まず「礼」を身につけなくてはいけません。礼には社会秩序を安定させる役割があり、それを守れない人は、組織では使えないと判断される。たとえば廊下ですれ違ったときに頭1つ下げないような部下はしんどいですよ。

逆に礼を身につけた部下は、評価が高くなります。先日、当社のある社員の電話対応がパーフェクトだと社内で話題になりました。礼儀作法をわきまえているうえに、そつがなく伝言を頼んだらきちんと伝えてくれる安心感もある。こういう社員は自然に評価されます。

■自分自身をよく知れば大言壮語もなくなる

素直さや謙虚さも大切です。何でも知ったかぶりをして謙虚に教えを請わない人がいますが、こうした人に周りの人は何か教えてあげる気になりません。その結果、本人はいつまで経っても成長しないままです。これは、お客様のところにいっても同じです。生意気なことばかり言うので、まともに相手にされず、成果も出せない。社内でも社外でも、素直であることは非常に大事な要素です。

人の話を聞かずに、自分のことばかり話したがるのも駄目です。自信満々に大演説するので、「それならやってみてよ」と任せると、出てくるものは何もない。これは一番印象が悪い。できもしないことを言うくらいなら、黙って引き受けて期待以上の結果を出したほうがいいです。

大きなことを言ってしまうのは、自分に何ができるのか、よくわかっていないからでしょう。大切なのは、自分自身をよく知ること。自分に天から与えられた能力は、どの程度なのか。努力して、どれだけそれを伸ばすことができたか。それらを把握していれば、大言壮語もなくなるはずです。

最初は素直で人の話をよく聞いていたのに、成果を出した途端に自信をつけて勘違いしてしまう人もいます。成果を出して傲慢になるのは、その時点での自分の成長に満足してしまったからです。「勤めても なほ勤めても 勤めても勤め足らぬは 勤めなりけり」と言いますが、成果を出しても新たな目標を設定して、さらに努力を続けていく姿勢が大切です。

ただ、努力と同時にある程度の“余裕”も必要です。気持ちに豊かさがなく、こせこせしている人は、上司からするとキャパシティが小さく見えて安心できません。だから、一度は落ち着いて自省する機会が必要です。このとき余裕がない原因を外に求めてはいけません。論語には「己の能なきをうれえよ」とあります。反省しないで酒場で上司の悪口ばかり言っている人は伸びない。人のせいにせず、すべての責任は自分にあるという姿勢で深く省みるべきです。

使えない部下の特徴をいくつか挙げてきましたが、基本的に僕は駄目な人はいないと考えています。人間はそれぞれに天命を持って生まれてくるものです。同じ会社、同じ職場で働くことになったのは“ご縁”ですから、「こいつは使えない」と切り捨ててはいけない。人間的、道徳的にどうしようもないという人は仕方がないとしても、単に仕事ができないからとご縁を切ることがあってはならない。

論語にも「君子は人の美を成す」とあります。上司は部下の悪いところを見るのではなく、美点を凝視して、長所が活きる形で使う必要がある。野村証券で事業法人をしていた頃、法人営業では難しい人も、支店のリテール営業ならいけるのではと人事異動をかけたこともありました。適材適所です。

使えない部下を引っ張っていくために一番いい方法は、上司と部下の「同志的結合」を図ることです。部下は上司を信頼して、同じベクトルで動く。上司も部下に同じ気持ちで接する。そうして同志的結合ができあがると、つまらないことで悩まなくなります。大切なのは、上司がビジョンを示して、一体感を醸成すること。そこに上司と部下が同志として向かっていけば、「どの部下が使えない」とか、「上司とウマが合わない」といった次元の低い問題は消えてなくなるのです。

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SBI HD CEO 北尾吉孝
1951年、兵庫県生まれ。県立神戸高校卒。慶應義塾大学経済学部卒業後、野村証券に入社。95年ソフトバンクに転じて常務。99年にソフトバンク・インベストメント(現SBI HD)を設立して、現職。

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(SBI HD CEO 北尾吉孝 構成=村上 敬)