【うちの本棚】149回 DAVID ディビッド/板橋しゅうほう

「うちの本棚」、今回ご紹介するのは板橋しゅうほうの『DAVID ディビッド』です。
「ニューオカルトSF」とも単行本カバーには記されていますが、「クトゥルー神話」を彷彿とさせる「本」が登場する辺り、ワクワクいたします。

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初出は東京三世社の「WHAT」。第1巻が第1部、第2巻が第2部という構成になっているが、残念なことに予定していた構想を全て描ききる前に連載が打ち切りとなったのか、最後はかなりはしょった形で完結している。いや、未完の印象が強い。

第1巻の帯には「未来版切り裂きジャック」とか、第2巻の帯には「神の子創造計画」といった興味を引く言葉が記されているが、これは編集側のあおりにすぎず、正確に本作の内容を示しているとは言い難い。

では本作はどういう内容だったのか……。

時代は多数のスペースコロニーが存在する未来。そのひとつである「マルコポーロ」というコロニーが最初の舞台となる。そこに住む資産家の変わり者が、一冊の古書を入手する。それは4千年の知識を蓄えた、生きている本だった。その本の力を使って資産家は「神の子」を創造しようとする。「外見は美しく、心は醜悪」そんな女性を探して資産家は夜の街に出掛けていくので、「未来版切り裂きジャック」はここから発想されたあおりなのだろう。とはいえ連続して女性が襲われるといったことはなく、最初のひとりで条件以上の女性を資産家はゲットしてしまう。そして人工授精によって「神の子」を宿した女性は、自分の意思ではなく、胎児の本能でかつての仲間を殺し始める(このあたりを「切り裂きジャック」と判断してもよいが、無差別な連続殺人ではないし、「切り裂きジャック」とイメージを重ねるのはなかなか強引だ)。

一方「マルコポーロ」に新任した刑事、ロメロも偶然から生きている本=アルハザード奇脳本と関わることになり、資産家を調べることになる。

資産家も当初の目的と違った成長を見せる「神の子」を抹殺しようと動き出すが、胎児は母の身体を離れ、ロメロの恋人の胎内に入って地上に下りていく。第1部はここで終わっている。

第2部は、それから6年が経過しており、地球は巨大な監獄となっていて、人類の大半はコロニーに移住している。誕生したディビッドは地上で「神の子」として教祖となっている。ロメロの弟アンソニーが新たな主人公として第2部に登場し、ディビッド抹殺のため地上に降りることになる。また政府はバニッシュボムで地上を浄化する計画を持っており、その起爆装置の起動もアンソニーが請け負うことになった。死んだと言われていたロメロもサイボーグ化していまだにディビッドを追っており、ついに兄弟の対面ともなるのだが……。

というのが主なストーリー展開。

単行本帯には「新境地」とも記されているが、サイボーグや超能力などそれまで板橋が好んで扱っていたテーマも多く、本作がとりわけ板橋作品で斬新だったという印象はない。むしろ板橋作品の集大成とも言えるような構成が用意されていたのではないかという気さえするのだが、そこに至る前に物語は終了してしまったようである。

願わくば作者本人の手でリメイクし、完全な形を見せてほしいという気がしないでもない。

書 名/DAVID ディビッド(全2巻)
著者名/板橋しゅうほう
出版元/東京三世社
判 型/A5判・ソフトカバー
定 価/690円(1、2巻共)
シリーズ名/マイコミックス
初版発行日/第1巻・1986年2月10日、第2巻・1987年8月5日
収録作品/第1巻・DAVID PART 1 ACT ONE〜ACT SIX、第2巻・DAVID PART 2 STAGE 0〜STAGE 2

DAVID 1DAVID 2

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/