ブラジルはビジネスの場面でも「アミーゴ社会」

海外駐在員ライフ Vol.181

From Brazil

「アミーゴ(親友)同士」になると、ビジネスもスムーズに進む?


■アミーゴ(親友)は仕事や生活の“潤滑油”

はじめまして。サンパウリーノです。ブラジルにある日系企業の現地法人で、営業セクションの管理職を務めています。

当社は、ごく一部の日本人駐在員を除くと、全員がブラジル人。日常業務のほとんどは、ブラジル人スタッフと連携しながら進めています。また、ブラジルだけでなく、「メルコスール地域(南米経済共同体)」も担当しているため、アルゼンチンの人やチリの人と連携することもあります。

顧客の中には日系企業もありますが、多くの日系企業がローカル化を進めており、ブラジル人が責任者となっているケースも少なくありません。現地企業が顧客であれば、当然、先方担当者はブラジル人。したがって、通常のビジネス交渉は、ブラジル人と直接行うことがほとんどです。

そのため、仕事ではブラジルの公用語であるポルトガル語を使っています。ブラジルでの社内公用語を英語にしている日系企業もあるので、その場合は英語を使い、日本語は日本人駐在員とのやりとりにわずかに使う程度です。

ここブラジルのビジネスのやり方として特徴的なのは、議論を通じて結論を導き出すという日本式のやり方と違い、関係各所のそれぞれの役職のパワーバランスで物事の方向性が決定してしまうこと。ブラジルの人々は自分の考えをしっかり持っていて、会議の場でもその考えを一生懸命、相手に説明します。次に、今度は別のブラジル人が手を挙げて、自分の意見を述べるのですが、それが、前に発言した相手の意見に賛同するでもなければ、反対するでもない、まったくの独立した意見なのです。それぞれが自分の意見を言っているだけで、到底、合意形成には至ることはできません。事前に互いの意見のすり合わせなどをしておかない限り、結局は、トップダウンで決まってしまいます。

とはいえ、役職が低いと自分の意見が通せないかというと、そうとも限りません。それは、ブラジルが「アミーゴ社会」だからです。一度、「アミーゴ(親友)」同士になってしまえば、アミーゴからは絶大な協力が得られ、物事がスムーズに進みます。会議の場でも、アミーゴの発言には、「君の意見は大変素晴らしい!こんな素晴らしい意見を思いつくなんて、おめでとう!」なんて歯の浮くようなお世辞を平然と言いのけるのがブラジル人。自分の意見を通したいときは、誰がキーパーソンなのか、そしてそのキーパーソンのアミーゴが誰かをしっかりと見極める必要があります。

というのも、ブラジルの組織は個人に権限が集中されているケースが多く、日本のように組織では動かないから。仕事上の案件の方向性も、その案件のキーパーソン(決定権者)の判断に委(ゆだ)ねられるため、仕事上のことを相談するときの相手は、組織でなく個人となってしまいがち。となれば、その人をつかまえて相談しなければならないのですが、そういう人に限って、外出中だったりして、なかなかつかまえられません。しかも、どんなに伝言メモを残しても、返信すらもらえません。特に、新人や新任駐在員が最初に直面するのが、こうした事態です。

返信すらしてもらえないのには理由があります。それは、アミーゴでないために、相手に優先してもらえないから。そんなときは、その人のアミーゴに依頼して電話してもらうと、すぐに対応してくれて、無事に解決したりします。そこで、アミーゴの重要性がわかった今は、新任の日本人部下に必ず「まずは、誰がキーパーソンかを見極めること。そしてその人の信頼を得て、アミーゴになりなさい」と言うようにしています。そうすると、自然と仕事が回ってくるようになるのです。

もちろん、自分自身もアミーゴを増やすための努力は怠りません。例えば、同僚や部下と雑談をしたり、一緒にランチをとったり、あるいは「ハッピーアワー」と称して、月1回、目標を達成したスタッフを誘って仕事帰りにレストランやバーに集まったりしています。彼らは、ハッピーアワーのようなイベントが大好きで、毎日数字のチェックをしながら、一生懸命ハッピーアワーに招待されるように頑張ってくれています。


■「会議5分前の着席」が社内全体に浸透

ブラジル人は遊びと仕事の切り替えが上手です。仕事すべきときは仕事をし、休むべきときは休みます。日本人にありがちな「昼の休憩時間もダラダラ仕事を続ける」といったようなことはありません。仕事中に雑談したり、夕方になるとラジオで音楽をかけて踊り始める若手の女性スタッフがいるほどリラックスした仕事ぶりですが、やるべき仕事が目の前にあれば、残業もするし、どうしても明日までにやらなければいけない仕事があるときには、徹夜してでもやってくるような人たちです。そういうところは日本人と似ているかもしれません。家族旅行のために休暇の申請をしていたにもかかわらず、重要な仕事が入ったからと休暇をキャンセルする真面目なスタッフもいるくらいです。

ただ、時間には少々ルーズな傾向があります。私が赴任した当初は、会議にも平気で遅れてくるスタッフがほとんどでした。しかし、「会議5分前には着席し、時間通りに会議を始めて、重要な案件について議論を進める」ということを駐在員中心に実践しているうちに、ブラジル人スタッフも自然と時間前に集まってくるようになってきました。遅れてきたスタッフたちも、すでに議論が始まっているのを見て、「あれっ」と思ったのでしょうね。「この会社では、会議は時間通りに始まるのだ」ということが認識され始め、徐々にですが時間通りに参加する人が増えてきて、およそ3カ月後には定着しました。

次回は、ブラジルとサッカーとの結びつきの強さについてお話しします。