福嶋宏盛氏

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■1週間で、渋る商談相手の背中を押す

【TECHNIQUE】「またか」と思われるほどしつこく攻めよ

このようなケースでは優れた提案を一度持っていき、後で結論を教えてくださいというアプローチでは間に合いません。1週間のうちに何回相手とコンタクトできるかが勝負です。

夜討ち朝駆けという言葉がありますが、そのような頻度で会いに行くことです。同時に、電話やメールでの連絡もこまめに入れましょう。こちらの状況が少しでも変化したら逐一報告を入れるのです。

「ここまで社内を説得できました。いかがでしょうか?」

日興証券(現日興コーディアル証券)で営業マンをしていた私の経験からすれば、「またコイツか」と思われたらしめたもの。しつこくすると嫌がられるのではないかと心配する人もいるでしょう。しかし、そう思っているのは実は営業マンだけ。「コイツは熱心だな」と思わせれば、相手は話を聞いてくれるものです。

以上を大前提としたうえで、まずは相手が渋る原因を探らなければなりません。まず筆頭にあがるのが価格。続いて納期やロットなどの諸条件があります。担当者との相性の問題ということもあるでしょう。

価格が渋る原因になっている場合、それを把握するのは簡単です。

「うちはこの金額しか出せませんが、他社の動向はいかがですか?」

率直にそう聞けば、たいてい相手は教えてくれます。他社に価格で負けているのなら、さらに値段を下げるか、あるいは他の条件で攻めていくことになります。後者の場合は「価格は下げられませんが、その代わり……」という形で配送や支払い条件などで、他社より有利な条件を提示することを考えます。

ただ、価格以外が渋る原因になっている場合、直接聞いてもなかなか教えてくれません。このようなときは単刀直入に質問するのではなく、相手に話をさせながら原因を探っていくことになります。

人は積極的に話をするタイプと、話をしたがらないタイプの2種類います。前者であれば必ず愚痴や文句が出てきますから、それを聞いてあげればいい。その中には必ずヒントとなるキーワードが出てくるので、それを拾いましょう。

話をしたがらない人の場合には、担当者自身が嫌われているケースや、そもそも交渉の内容自体をよく把握していないケースなどがあります。このようなときは直球勝負でズバリ「どこを変えればうちと付き合ってくれますか?」と聞くしかありません。

■怒りが収まらない取引先をなだめる

【TECHNIQUE】「オウム返し」を駆使し、ひたすら聞く

怒りが収まらないということは、相手は怒りをぶつけたい状態にあります。次々にいろいろなことを言われるでしょう。

しかし、こちらの対応としては謝りながらそれを聞くだけです。その意味では、対応はとても簡単といえます。

このとき、相手の言っている内容をそのまま繰り返すと、不思議なことに相手は堰を切ったように話し出します。これをオウム返しのテクニックといいます。

「あ、彼がそんなことを言ったんですか……。申し訳ございませんでした」

「1日納期がずれていましたか! 申し訳ございませんでした」

このように相手の言った言葉を入れて、謝罪を繰り返していくのです。

さらに、メモを取りながら話を聞くとよいと思います。これは大切な内容を書き留めるだけではなく、あなたの話を親身に聞いているというメッセージを送る意味があります。

注意すべきポイントは怒っているとわかったら即座に対応すること、絶対に反論をしないことです。明らかに誤解があり、こちらは何も間違っていないのに相手が怒っている、という場合でも反論をしてはいけません。

たとえば明記してある条件に先方が気づかず怒っていたら、まずはひたすら相手の言い分を聞いてあげます。そして一段落したところで「ところで、ちょっと確認したいことがあるのですが……」と自ら間違いに気づくような方向に持っていけばよいのです。

最初から「条件はこうなっていますよ」と言ってしまうと、「バカ野郎、そんなこと聞いてないぞ!」と火に油を注ぐだけの結果になってしまうでしょう。

逆に非が完全にこちら側にあり担当者レベルでは怒りが収まりそうにない場合、先方と何とか関係を修復したいのであれば、上司やさらに上の立場の人間に同行してもらい、日を改めて謝罪するのが常道です。

何より重要なのは謝罪を終え、怒りが収まった後の対応です。激しく怒られた相手とはもう顔も見たくない気持ちになりますが、実は関係を強固にするチャンスでもあります。

怒られた後だからこそ、あえて接触頻度を増やし関係強化に取り組むべきでしょう。

■1割引きの条件を認めさせる

【TECHNIQUE】“その代わり”になるメリットを提示せよ

自社が商品を購入する側でも販売する側でも、交渉において考えることは同じ。

「その代わり……」を示すことです。

「A社に100円で卸している商品をうちには90円で卸してください。その代わり……」

相手に提示するメリットとして、まず「量」があげられます。競合A社が1個100円で1万ロットを購入しているのであれば、「うちは2万ロット購入するから90円にしてくれ」という具合です。

もう1つは別の商品も購入する形です。商品Xを値引きさせるために商品Yも購入する、いわゆる抱き合わせです。

諸条件を交渉材料に使うことも考えられます。支払いを現金払いにする、支払いの期限を通常より短くする、商品は自分たちで取りにいく、といった条件を示すことで値引きを要求する形です。

取引の継続性も交渉の材料になります。1回切りの取引ではなく年間契約、あるいは3年契約にするという条件を交渉材料にしていくわけです。

何のメリットも相手に提示せず、強気で押していく交渉の仕方もあります。

「A社との取引では100円なのはわかりました。じゃあ、ウチとはいくらで取引してくれますか?」

相手に取引したい意志があれば「では95円で……」と新たな条件を出してくるでしょう。ただし強気の交渉が有効なのは、購入側の選択肢がたくさんある場合です。たとえば家電メーカーのように、多くのサプライヤーが競い合っている市場であれば、「こちらの要求が通らないなら他社と取引する」という腹づもりで交渉に臨めるわけです。

逆に1社の独占市場では、取引できなくなると困るのはこちら側ですから、強気に出るのは難しくなります。

いずれのパターンにせよ重要なことは、「御社の商品が素晴らしいから取引をしたい」という気持ちを前面に押し出すことです。自社の商品が高く評価されれば誰でも嬉しく感じ、積極的に検討しようという気持ちになるものです。

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福嶋宏盛
上智大学卒業後、トヨタ自動車、日興証券(現SMBC日興証券)、リーマン・ブラザーズ証券を経て、経営コンサルタントとして独立。『とたんにものごとが動き出す! 頭のいいコンセンサスの取り方』など著書多数。

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(福嶋宏盛 構成=宮内 健 撮影=上飯坂 真)