取材・文・写真: 編集部

(第1回/全3回) ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『WGSN』のインサイト・プレゼンター、浅沼小優氏インタビュー

(第3回/全3回) ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『WGSN』のインサイト・プレゼンター、浅沼小優氏インタビュー

アパレルからリテール、家電、自動車、インテリアまで、ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『Worth Global Style Network (WGSN)』。ロンドンに本社をかまえ、パリ、ニューヨーク、香港、上海、メルボルン、サンパウロ、そして東京に支局を設け、クリエイティブ産業にたずさわるあらゆる職種に有益な情報を提供している。WGSN東京支局にてアカウント・マネジャー兼WGSNインサイト・プレゼンターを務める浅沼小優氏に、トレンドが決まるプロセスから、SNSがファッションの消費行動に与える影響、今後のリテールビジネス・ブランドビジネスの行方、 いま世界的注目の新興アパレル市場、2013年に消費者が求めるもの、Eコーマスなど、いろいろと話を聞いた。

 

- 世界的にいま新興アパレル市場としても注目されている BRICS (ブリックス: ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ) ですが、特に注目しているアパレル市場はどこですか?

インドに注目しています。中国も大きいですけれど。インドは人口が2030年くらいまでに、25%くらいは伸びると言われていて、それに従ってやはりモノを買う中間層なり、その下の層もそうですけれども、グッと増えるというのが大きなポイントになります。ただ、インドに関して WGSN が注目しているポイントは、インドの市場そのものというよりは、インドが世界に与える影響なんです。いままでこの近代化のなかで、私たちが選んできた資本主義や民主主義などいろいろありますけれども、そういうものが上手くいっていないですよね。経済も崩壊するし、生態系もおかしくなっているし。さまざまな人がどうしたら良いのかと知恵を絞っていくなかで、インドというのはなかなかフレッシュで、それこそ西欧的な考え方の中で生きてきたわたしたちにとって、揺さぶられるようなパワフルなインスピレーションソースになるだろうと考えています。

アパレル市場としてはトルコにも注目していますね。いまの人口は7,500万人くらいですが、2050年には1億人近くなります。2030年までの伸び率としては17,8%、2050年までには25%近く伸びると言われていますね。もう既にGDPも2002年からだと3倍くらいになっています。毎年、9年間連続でGDPが5.2%平均で上がってきているという統計も出ています。かなり力強く動いてると思います。あとは西洋文化と東洋文化の接点でもあるので、2013年のトレンドのひとつでもありますが、いろいろなカルチャーのリミックス的要素もあり、トルコはかなり注目しています。

 

- 日本のブランドやメーカーはインドやトルコに進出していますか?

インドは、確実に視野に入れていると思いますが、トルコは地理的な問題もありますし、まだファッション系はそれほど進出していないのかと思います。しかし、トルコは親日的な国なので、入りやすいとは思います。大々的にいまトルコをターゲットにしようとしているアパレルさんがいるかというとすこし疑問ですね。おそらくヨーロッパ社会から見たときに注目している市場だと思います。

 

- インドやトルコは、物価が日本と比べるとかなり安いと思うのですけが、日本のブランドが向こう側にいったときに、富裕層のような、所得がある人でないと買えないものになるのでしょうか?

そうなのですが、結構その富裕層が増えてきているんです。確実にラグジュアリーブランドが展開をはじめています。それはもう WGSN でもレポートにしてまとめています。富裕層に関してトルコに注目していますし、ロシアと中東においても、富裕層は確実に増えていくと予測しています。

2/3ページ: 2013年に消費者が求めるものとは?


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- 2013年に消費者が求めるものとは?

ここまでIT化が進むと、「じゃあテクニックでなにをするの?」というようになった際、「つながったけどなにをするんだ?」ということは当然起きてきますし、24時間体制で常にそれに受け答えをしなければいけない状況が続いてきていて、疲れを感じてきていると思うんです。そういう意味で意図的にローテク化していくというのが、ひとつのトレンドとして言われています。例えばタイの通信会社DTACが、「IT機器に向かうのをやめて家族と向き合いましょう」という主旨のCMを打ち出しています。ITを否定するのではないですが、それに拘束されるのも疑問ですよね。自分たちの生活の中でほどよいバランスで使おうという気持ちが更に強なるのではないかと思います。

あとは、実感があることがより大事になっていくのではないでしょうか。クラフティングがいまトレンドになっていますよね。一生懸命に手を使ってモノを作るということに対するよろこびみたいなものが、もう一度注目されると思っています。手紙などでもステキな便箋を買ってきて書くとか、そういう実際に手を使って、動かしてなにかをすることに対する欲求が出てくるのではないでしょうか。実際にはすでにもう出てきてはいるんですけれど、2013年は特にそういうところに注目をしていきたいです。

 

- 意図的にローテク化というのはおもしろいですね。

人と人がつながってなにをするの?という問題ですが、つながることそのものは良いのですが、つながってもあまりその後の展開がなかったりしますよね。昔の友達を見つけた、良かった。それくらいで終わってしまって、それではつまらないですよね。だから遠くにいるひととSNSなどでつながることばかりではなく、携帯の電源も意図的に切って、身近に顔を合わせておしゃべるできるような人とちゃんとつながろうという流れも出てきていると聞いています。その辺を含めて、ローテク化というのがひとつのポイントですね。

その一方で便利なものであることは確かなので、より消費者が使いやすいように、商品を消費者の近くまで「運ぶ」という計画をしているブランドも結構あります。例えば韓国のホームプラスという食料品店。韓国というのは世界的にも労働時間が長い国のひとつらしいのですが、買い物をする時間がないという人たちの要望に答えるために、地下鉄の駅構内にバーチャル商品棚というのを作ったそうなんです。そこのQRコードをスキャンすると、後日自宅に郵送されるというシステムを作って、結構これが人気らしいです。そんな風にテクニックがあるだけではダメですが、それを使って時間の使い方を変えられたら良いですよね。ITというのは生活を便利にするために使って、残った時間は自分たちの生活を豊かにするために使うというような考え方に今後なるのではと思っています。

3/3ページ: ラグジュアリーブランドのパーソナライズ化戦略


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- ラグジュアリーブランドのパーソナライズ化戦略が気になっています。

基本的には「こういうモノはどうですか?」というようにしてお勧めをすることですね。情報を集積して、その人を言うなれば調べ上げるわけなのですが、その上で、「こういうモノにご興味ありませんか?」というようにやっていきます。あとは、ブランドのカスタマイズですね。私もブランドにいたときにやっていたのですが、最近というわけではなく90年代にはすでにそういうことをやっていました。もっとさかのぼれば、上流階級の人たちは自分たちの名前を入れたり、彼らのために作るオートクチュールなどはその最たるものです。それがより一般化したという意味で、90年代にはもうすでにパーソナライズに注目をしてきました。その情報の取り方がITを使って、になったので、より細かくなってきているということですよね。いままでは、たとえば顧客の情報というのは会話の中で聞き取ったり、店員さんが「ご旅行にいかれるのでしたら、こういうのはいかがですか?」みたいな形でマニュアルで情報を取り出していたのが、いまはいろいろなソースを駆使して、情報を取られていると私たちに気づかせないかたちで情報を掴んで、この人は、例えばこういうニュースを読んで、こういうサイトを見ているのであれば、こういう傾向の思考というか、考え方の人に違いないというように、分析している会社も結構あります。どんな政党を支持するかでどういう洋服を着るかまでわかるみたいな。どの車に乗っているかでどういう食べ物の趣向かがわかるとか。実際にはそこまで上手くはいかないとは思いますが。

 

- トレンドリサーチ業界で、SNSの今後はどのようになると考えられていますか?

私はあまりSNSに詳しくないので限られたことしか言えないのですが、PCを使用する人よりモバイル端末を使う人が増えていますから、そっちのサイトを強化するというのは全体的にブランドの戦略としてはあると思います。モバイル端末向けの媒体を充実させていくことは必須です。あとは、ひとりの人から派生した友達を上手く全体的に消費に取り込むというのは、ブランドの戦略としては確実にありますね。

[次回に続く]

(第1回/全3回) ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『WGSN』のインサイト・プレゼンター、浅沼小優氏インタビュー

(第3回/全3回) ファッション・ライフスタイルの最新情報と2年先のトレンド分析を提供する世界最大級のオンラインリサーチサービス『WGSN』のインサイト・プレゼンター、浅沼小優氏インタビュー

©THE FASHION POST浅沼小優 (あさぬまこゆう)
WGSN (ワース・グローバル・スタイル・ネットワーク・リミテッド)
アカウント・マネジャー & WGSNインサイト・プレゼンター

積水ハウス勤務後、渡米。インテリア業界にてVMDとバイイングに従事。帰国後LVMHグループ、ロエベ、伊シューズブランドなどにてMD、マーケティングを担当。2010年より現職、各企業にてクリエイティブ・マクロ・トレンドの解説を行う。立教大学大学院修了、主に消費論、アイデンティティ論、欲望論などを研究。社会デザイン学MBA。

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