■全国に広がるサッカー専用スタジアム建設の動き

現在、全国各地にサッカー専用スタジアム建設の動きがあり、実際に大阪、京都、北九州、長崎といった地域ではサッカー専用スタジアムの建設が決定している。今後も各地でサッカー専用スタジアム建設の機運が高まることは間違いないが、そのとき、財政状況の逼迫した行政側が「財源不足」を理由に民意を退けようとする向きはどこにでも起き得ることだ。しかし、これは行政側の“断るための理由”に他ならないのでサポーターは素直に受け取らずに注意が必要だ。

先月、スタジアム関連の取材で広島を訪ねた。詳細はサッカー批評60をぜひご覧頂きたいが、広島では今、昨季のJ1優勝が追い風となり、サッカー専用スタジアム建設の機運がかつてなく高まっている。スタジアムの建設候補地の選定もいよいよ大詰め。本年度中に何かしらの大きな決定があるはずだ。

広島のスタジアム問題に精通する広島市議会議員の石橋竜史氏は、サッカー専用スタジアム建設のための財源について「お金がなくても、実際は理解度の問題」だという。

「今でも広島市と同じような財政規模の川崎市や北九州市ではスタジアムの建設が前進しています。広島市も中四国でもダントツで大きな財政規模を誇っている。1兆1600億円。その中でやっぱり無駄が多い。無駄が多いだけに、たとえば、この先1年2年で土地が売れたりするんです。そのお金を早急にスタジアムに回せと言っているんでじゃないんですけれど、人件費など大切な部分以外でもまだまだ無駄が多いんです。行政的に省けるところはたくさんあります。スタジアムを作ろうとしたときに広島市だけで十分に作れるんですよ。十二分に。ただ、作れるお金があっても、それをスタジアムに単純に回せばいいという発想ではなくて、あくまで理想としては、可能な限りスポーツ振興の助成であったり、民間の協力を得たりする形で」

■100億円超の本体工費が工面できる自治体はあるのか

実際、商業施設など民間資本の参入も得て複合型のサッカー専用スタジアムを建設するとなったとき、スタジアムの規模など諸条件にもよるが、現状では100億円超の本体工費がかかるというのが一つの目安。それほどの財源であれば全国どの自治体でも単独で捻出することは十二分に可能だという。あくまで、そのための理解を議会や行政で得られるか否か。

「行政の組長が『絶対にできますからみなさんついて来てください!』と発言したならばどの自治体でも必ずできると思いますよ。『安心してください! 市民の皆さんには負担はかけません! これだけの経済効果があるんですから私に任せてください! その代わり失敗をしたら全責任は私が追います! 信じてください!』。それこそ橋下さんじゃないですけれど、あれぐらいの発信力と情熱があれば、どの都市でも絶対にできます。これはもう100%」

そうやって実現したのが北九州の事例。ギラヴァンツ北九州は小倉駅から数百メートルという抜群の立地に新サッカー専用スタジアムを手に入れる。今後避けられないクラブライセンス制度のスタジアム基準が後押しした形ではあるが、財政状況が苦しい中で行政の首長に理解があった好例だ。

■広島は、石橋氏が他の議員を煽動した

一方、行政側に“その気”がないのであれば政治が必要だが、広島の場合は、石橋氏が議会で他議員を煽動した。石橋氏はサンフレッチェ広島の元スタジアムDJという肩書きを持つ熱心なサンフレッチェサポーター。11年4月に現職自民党議員を打ち倒し、初当選した。この当選も、サッカー専用スタジアム建設を望む、広島という地域の機運と後押しがあってのもの。石橋氏は、昨季のサンフレッチェ広島の開幕戦となった浦和レッズ戦で会派21人中17人をビッグアーチに招待した。