モヒンガーって謎飯知ってる?




――世界で最もグルメな都市は、どこなのだろうか?ミシュランの三つ星獲得店の数を世界の各都市で競った場合、東京が世界で一番になると言われているが、なにより、東京で口にできる料理は極めてバラエティー豊かで、ありとあらゆる国の料理を満喫する事が可能である。



そんな世界一のグルメ都市東京における多国籍料理の中から、予備知識無しに名前の響きだけで食べ物を選びレポートするのが、「東京謎飯」だ。謎飯レポーターを務めるライトノベル作家、川岸殴魚が訪れるのは高田馬場のシャン(ミャンマー東北部の一地域)料理店ノング・インレイ。



注文する料理は「モヒンガー」だ。以下、川岸による「モヒンガー」レポートである。





モヒンガー……。正直なところ、とても料理の名前だとは思えない。むしろ強そうな響きだ。モヒンガー……。攻撃範囲が広めの武器なんじゃないだろうか。戦士と僧侶は装備できるけど、魔法使いは装備できない。そんな感じの名前だ。



大丈夫なのかモヒンガー。うまいのかモヒンガー。そもそもお店に入って「モヒンガー、ひとつ」と注文したら、店員さんにモヒンガーで頭をかち割られるんじゃないのか……。



そんな不安で頭がいっぱいになりつつ、モヒンガーを出すシャン料理店「ノング・インレイ」を訪れることに。……シャン料理? ノング・インレイ? そして、そこからのモヒンガー!理解できる単語がひとつもない。不安は増大するばかりだ。



しかしお店に行ってみればこの不安も解消されるかもしれない。聞き慣れない言葉ばかりだが、実際は入りやすいお店かもしれない。なんだったらちょっとデート向きのオシャレな店の可能性もある。



むろん、そんなことはなかった……。高田馬場の駅前から、入って大丈夫なのか? と不安になるような裏道の、マジで大丈夫なのか? とさらに不安になる古びたビルの一角に、シャン料理「ノング・インレイ」はあった。



僕はオシャレに敏感な人間ではないが、さすがにここがオシャレな店じゃないことくらいは理解できる。絶対に大丈夫じゃなさそうなドアをくぐり、席につく。企画の趣旨に従って、おもむろにモヒンガーを注文する。待つこと数分、モヒンガーがついに僕の目の前に現れた。







黄色いスープに入っためん、それがモヒンガーの正体だった。見た目はカレーうどんに近いが、レモングラスとエビの香りがする。武器っぽい名前に反して、見た目も香りもかなり良い。躊躇なく、モヒンガーのモヒンの部分(勝手にめんをそう定義する)を口に運ぶ。



うまい! おそらく米のめんなのだろう、ビーフンのような食感でコシもある、それにエビのダシが効いたカレー風味のガーの部分(スープのことです)が絡まって見事にモヒンガーしている。具のさつま揚げっぽい謎の練り物や、ショウガ風味のキクラゲ状のなにかも相性バツグンだ。



なんなのかさっぱりわからないが、うまい!



モヒンガー。それはカレー風味のスープに入ったエスニックなビーフンだった。モヒンガーのおいしさにすっかり安心したので、せっかくなのでデザートも注文してみることにする。メニューのデザート欄に書かれているペイィチョウを適当に注文してみる。



ペイィチョウ。なんだか落語家の名前っぽい謎飯だ。響きからするとちょっとべちょっしたしっとり系のデザートだろうか……。



……全然違いました。出てきたのはコーンが入った揚げ玉を板状に伸ばしたもの。食べてみるとそもそも甘くない。甘いどころか、まったく味がない。コーン入りの天ぷらの衣って感じだ。どうやらデザートどころか、単品で食べるものでもなかったようだ。



おそらく、ご飯を食べ終わった後でナンだけ注文するような状態。この失敗もまた謎飯。ピュアに油の味しかしないペイィチョウをかみしめながら、謎飯の醍醐味(だいごみ)をかみしめたのであった。





●店舗紹介

ノング・インレイ

日本に数軒しか無いというシャン料理を提供する店。モヒンガー、ペイィチョウのほかにも魅力的なメニューが多数。きしめん風のめんをスパイシーなソースで仕上げたナンピャーは絶品だ。



東京都新宿区高田馬場2-19-7 タックイレブン高田馬場ビル1F

高田馬場駅早稲田口から徒歩1分

営業時間 11:30〜23:30(ラストオーダーは23:00)

年中無休

モヒンガー:800円

ペイィチョウ:500円

ナンピャー:800円

(文/川岸殴魚 構成/オフィス本折)