水星から分かる宇宙 〜水星に水が見つかった〜




水星は、その名前に「水」と入っているものの、太陽からもっとも近い惑星であり、昔はその灼熱(しゃくねつ)の気温のために、水は存在しないと考えられていました。



しかし、最近の調査によって、水星という名のとおり、水が存在することが分かってきました。



今回は、そんな水星に関する最新の調査結果についてご紹介したいと思います。





■水星ってどんな星?



太陽にもっとも近いところを周回する太陽系第一惑星「水星」。



大きさは、太陽系惑星の中でもっとも小さく、その直径は約4,880kmで地球の40%以下。



これは、木星の周りを回っている衛星「ガニメデ」や、同じく土星の衛星「タイタン」よりも小さいことになります。



さらに、質量も太陽系惑星の中でもっとも軽く、地球の5%ちょっとしかありません。



けれども、その約7割が鉄やニッケルなどからできている、いわば「金属の塊のような惑星」です。



また、太陽の周りを約3カ月(88日)で一周することから、地球上から見ると速く移動しているように感じます。



そのため、ローマ神話に登場する神々の中でも、翼の付いた靴を履き、俊足として名高い神「メルクリウス(Mercurius)」(ギリシア神話では「ヘルメス」)から、英語では「マーキュリー(Mercury)」と呼ばれるようになりました。





■クレーターに付けられた名前



水星の表面はまるで月のように、たくさんのクレーターに覆われています。



先ほどご紹介したローマ神話の神「メルクリウス」は、芸術の神としても知られていたことから、そのクレーターには多くの偉大な芸術家・音楽家・作家などの名前が付けられています。



これは、クレーターに名前を残すことで、彼らをたたえる意図があると言われています。



世界的な芸術家としては、「ミケランジェロ」や「ルノワール」「ゲーテ」といった名前が付いているほか、日本人に限ると、平安時代を代表する女流作家「紫式部(Murasaki)」や「清少納言(Sei)」、俳句で有名な「松尾芭蕉(Basho)」、小説家「夏目漱石(Soseki)」など20名ほどの名前が使われています。



■1日が1年よりも長い



水星の1日は地球の176日に相当します。



先ほど、太陽の周りを88日で1周すると書きましたが、これが水星の1年にあたると考えると、水星では1日たつのに2年かかることが分かりますね。



つまり、灼熱(しゃくねつ)の昼間ばかりが続く1年間と、漆黒の闇夜ばかりが続く1年間とが、交互にやってくるわけです。



このように、1日が1年よりも長い惑星は太陽系の中でも水星だけです。





■水星にも水が存在する?



水星は太陽に近いため、太陽から届くエネルギーは、地球に届く太陽エネルギーの6〜7倍にも達します。



そのため、水星の昼間の表面温度はもっとも高いところで摂氏400度以上となり、スズや鉛といった金属でさえ溶けてしまうほどの高温です。



しかし、その一方、夜になるとマイナス160度まで下がってしまいます。

これは、88日間も夜が続くのに加えて、水星の大気は非常に薄く、太陽が沈んでしまうと昼間の暖かさを保つことができないためです。



さらに、水星の自転軸は公転面に対してほぼ垂直であるため、極地方のクレーターの深いところには、永遠に太陽の光が届かないところが存在します。そのような場所の気温は常にマイナス200度以下にもなっています。



そのため、研究者たちは以前からこのような場所であれば、氷が存在するのではないかと仮説を立てていました。



そして、2012年になって、NASAの水星探査機「メッセンジャー」に搭載された中性子スペクトロメータと呼ばれる装置により、ついに水星の北極部分にあるクレーターの地下などに大量の水素が存在することが分かりました。



この水素の量が、氷に含まれる水素の量とほぼ同じであったことから、水星のクレーターには1千億トン(=琵琶湖(びわこ)の貯水量の約4倍)を超えるほど大量の水が氷の形で存在していると結論付けられ、同年11月にNASAから発表されています。





■まとめ



最新の調査によって、水星にもどうやら水が存在するということが分かってきました。



水星に氷が存在するという事実は、小惑星や彗星の衝突によって氷が運ばれたという証拠になり、これと同じことが地球やほかの太陽系惑星にも起きたと考えられます。



そのため、この結果が今後、地球の成り立ちや生命の起源のナゾを解くヒントになるのでは…と期待されています。





(文/TERA)



●著者プロフィール

TERA。小さいころから自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。